ペイント・イット・ブルー
水が水色をしている。
ふざけている訳ではない。譬ではない。
シャンプーのプラスティックボトルの頭を押すと、冰色い液体が流れ出てきて、
―無意識に髪に擦ってしまった。
―其れを洗っているけれども、なかなか落ちないのだ。タイルだけが染まっていく。
裸のからだも青く染まり、洗身しきれない。
おっぱいも何だかオブジェみたいに青い。作りものめいて輝く。水しぶきを爆ぜさせながら。
―笑ってしまうが。―
笑っている場合ではない。シングルマザーだと子供にも舐められるんだろうか。
―以前にも息子―優太―は、シャンプーボトルに書道用の墨汁を混ぜ入れた事がある。
―ワンパターンな子だ。将来が心配である。
―と言おうか、
私は女だから男の子の生理ないし精神構造に疎いけれど、男の子持ちのママ友さんの中で、優太みたいなイタズラに音をあげている人はいない。
―なんらかの、
―発達に関する不全―
、有しているのかな。
其う考えたら胸の奥が急に曇った。
宛ら色付いた乳房の冰色に。
―やがてして。
―漸く―
、―身を綺麗にすると、脱衣場兼洗面所へと出て、からだを鏡に映したのである。
だが、その鏡は青い。
いや視界が何だか青い。
青いのは鏡に映った私自身も其うだ。
―不条理小説の様。
―私。
真っ青な鱗を満身に纏い、くびもとには鰓さえ生起させた、
グロテスクな『私』に変貌している。
―鏡の中に冰の魚が立っている。




