花火と泡沫
朝陽のなか、花火の残骸を見て、涙が流れた。
今は冬だと言うのに、片付けられもせず、其れはそこに在るのだ。朝靄を、きらきら死化粧のごとく纏うのだ。
其の不遇に私は同情するのだろうか。
否。
違うのだろう。
そうでは無いのだろう。
そういう審美眼めいたものを含む哀感では、此れはあるまい。
―此処は打ち捨てられた様な通りだ。
舗装の張り替えすらも忘却された様子。
白骨を晒す骸の様だし、或いは腐敗した内部組織を曝露する死物の様にだ―、
―アスファルトはヒビの底に暗黒を露呈さしているのだ。
此んな場所で花火遊びをした子供や、或いは子供気分で遊んだ若者が居たのだろうか。
その過日ぶりが何か哀しいのかもしれない―、
―、いや、
―、はてな。
ああ、忘れかけていた。
花火をしたのは。私だったんだ。
落ちた花火の少し先に、私の腐乱死体が見えた。
孤独に自殺をした私は、此んな廃村になった処へ故郷がえりしたのだ。
かつて童心に遊んだ通りを選ったのだ。
死の際に、花火を買い揃えたのはどんな気持ちだったか。
其れを末期の華やぎに飾ったのは。
そんな儚い、安直な泡沫を。
今や、硝子の壁をへだてたふうに他人事と感ぜらる、慟哭、諦観。
其の私という『他人』の哀切が、私には憐れだったのだろう。
魂魄となった私の目は、
きらきら陽と靄を纏う、
―さながら華を飾り終えた花火の様な―、
私の亡骸を見つめている―。




