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、、、ずるる、、、
夜は千の目を持つ、か、―
なんて言う気分を余所に―
先程から隣室で物音が止まない。始めは嬌声だったんだけれど、
(羨ましい限りである。)―
―段々に破砕音、罵声などが混じり、
―此れ、DVじゃね、
という様相を呈してきた為。
私は警察に電話した方が良いのかな、と一人思案していたが。しかし―
―、不意にである、今、物音がピタリと止んだ。
―、、、
其の儘、シンと水を打った静けさなのである。
私は、廊下に出てみる。
仄暗い。
場末のアパートだもの、―
―共用廊下も片廊の、無界壁、
―謂わゆる開放廊下の構造なのである。
夜気が丸直に萌す。
暗夜にドアが並んでいる。
テラテラと錆びた金属扉らだ。
時代に置き忘れられた様な。
旧い構造を曝している。
くだんの隣室のドアだけが、一枚、―
異質な、気を吐いている。
一種、気配めいたものが放たれている。
―、、、
其の金属扉が、ぶわり、と開くのだ。
中から、腹のたいそう膨れた大蛇が、
、、、ずるる、、、
と這い出てきて、徐。
―廊下を闇の方向へと溶けてゆく。




