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微醺
障りが何だったか、両足底に炎症が起きて、歩けなく成った。酷く困った。
まあ、致し方ない。遣り過ごすより無い時など幾らでも有るのだ。
ベッド上に居る他は、為る事も無い。せめても、読書くらいしているけれど、此んな事は毒にならない代わりに薬になるべくも無い。
家人も諦めたのか、私に書物だけ与えて放置の気味となった。
其の時にひねもす読んでいたのがエジプト神話の読本であったが、彼の神話を少し攫うと、ひとはしらの神が、また別のひとはしらの神へと様態を移ろっている感じがある。
ラア神は、老いて沈む太陽となる時にはアトゥム神であるのだ。
人間では此うはいかない―、
―いや。
両足の裏は今や透き通る硝子質で、内部には青い蝶の様な生命が翅を遊ばしていたり為るのだ。
キラキラと鱗粉が舞い、其れは陰火のありさまで耀うため、私の足底は夜にゃ夜光虫さながらである。
私は何者へかと流動しているのだろう。
若しくは斯く微醺していくのだろうか。
或いは読んだ本が良くなかったろうか。




