砂場の女
謝っても、謝っでも許しでくれないよね、と。くぐもった声が聴こえてくる。
其れは排水溝だから、幻聴だろうど思う。いつものこどなんだよ。
―という独り言を話している女が砂場に真っ白な服を着て座している。服は洗い晒しに見えるが、錆色の穢れが禍々しく付着している。
長い長い髪で翳になり、貌はまったくはっきりとしない。
だけれど―縊礫と言うのか―、所謂くびつりに失敗したような痛ましい崩れが、細っそりした頸部に、妙にあざやかであった。
なんだか怕いのは怕いが、私には無関係であるのと、刺激してしまうと某かの事態の引鉄と成りそうであり、―間を保たせる様に私は腰掛けたベンチから、空を眺める。
空は青い。晴れていた。
昼間の月が出ている。薄い月だ。
ああしたのを何と呼ぶのだろう。うつくし哉、そう覧じていると、眼を戻せば女ば既に消えでいる。
何処に行っだんだろう。
あれ。
あれ。
何処に私は行ったんだろう。
私ば気ぢぐど砂の上にずわっでいで、ぞごがら見上げだ公園の木の枝にば、輪っがになっだロープが見えだ。
吊らなぎゃ、と月に誘われで、私私私ばは思うのだ。