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終わりから始まる恋物語~最強女子の王女様は恋心を隠している~  作者: 梅干 茶子
第一章 終わりと旅立ち
8/18

7


 じい、っと見つめる青い目を見れば、自分の浅ましい考えが全て暴かれ、軽蔑されてしまう。


 そんな恐怖が、ふとサージャを襲った。


 気が付けば、顎にあったギルスの手を払い除けていた。


 顔を背けて、逃げ出していた。


 そんなサージャの右手を、ギルスが掴む。


 そのまま、ぎゅっと、後ろから抱き締められる。


 「俺に隠せると、俺から逃げられるとお思いか?」


 「・・・くっ」


 涙がボロボロと、零れ落ちた。


 見られたくなくて、ギルスの手の中から逃れようと暴れると、くるりと体をひっくり返された。


 胸に顔を押し付けるような形で、再び抱き締められる。


 右腕で両腕を抑えられ、左腕で頭を抱えられる。


 「言え、サージャ。全部聞くから」


 耳元でそっと、そんな風に優しく言われれば、もう堪えられなかった。


 「う、ぐっ・・・」


 ギルスの胸に顔を押し付けて、サージは泣いた。


 声を堪えて、唯々大量の涙を流した。


 ギルスは落ち着くまで、ずっとサージャの髪を撫で続けた。




 ※ ※ ※




 「・・・もういい。大丈夫だ」


 サージャはそっと、ギルスの胸を押し返した。

 ギルスはその拘束をほどく。


 「とりあえず、座りますか」


 二人は隣り合わせで座った。

 荷物の中からタオルを出し、サージャに渡す。


 「・・・すまん」


 サージャは受け取り、顔を拭った。

 ふう。っとため息を一つ。


 「・・・その、悪かった。お前の気持ちに、付け入るような真似をした」

 「わかってますよ。そういう時のサージャ様を知ってますから」


 言って、ギルスはサージャの肩に手を伸ばす。


 「じゃなきゃ、気が付きませんでしたよ?襲っちゃいましたよ?」


 笑いながら肩を抱き寄せた。


 「それで怖気づいた私が、お前を殴るんだな。なんだ、いつもの事か」

 「そうです。いつもの事です」


 笑いながら、サージャはギルスの胸に頭を預ける。


 いつもとは違うこともある。怖気づかない。サージャはギルスを殴らない。


 心が弱っている。今のサージャはギルス以外頼れない。


 それでも、サージャはギルスに聞かなければならないと思った。


 「ギルス」

 「なんでしょう?」


 「これを聞いたら、お前、死ぬまで私から離れられないかもしれないが、良いか?」

 「今更ですね。死ぬまで離れる気はありませんし、出来るなら死んでからも離れたくないですね」


 「・・・私もな、お前に死なれたら、多分もう、生きていけない」


 思わずギルスはサージャを見た。

 見上げるサージャと目が合った。


 照れたように、サージャが目線を外す。


 「・・・狡いな、私は。これを知ったら、お前は私から離れてしまうかもしれないと思った。いや、私が、お前を手放さなければいけないと、そう思った」


 「でも、その、もしかして、離れたくないと、思って頂けたのでしょうか・・・?」


 ギルスの心臓がバクバクした。

 まじまじとサージャを見てしまう。

 そんな風に思ってもらったことが、今まであっただろうか。

 いいや、無い。一方的にギルスが追いかけていただけだ。


 「ああ。うん・・・リズの宿屋でな、私が死にかけて、お前が泣いてるのを見たらな・・・なんというか、離れたくない、というか・・・その、置いて行かれたくない、と。そう思ってしまってな・・・」


 サージャは次第に顔を赤くして、仕舞には俯いてしまった。


 ギルスの右手に力がこもる。

 サージャははっとして、顔を上げた。


 「サージャ様。もしかして。サージャ様を頂戴しても、よろしいのでしょうか」


 目が。ギルスの目が。爛々と輝いていた。

 サージャの顔は、真っ赤に染まる。

 口がパクパクと開閉するが、言葉にならない。


 ギルスの左手が、サージャの頬に触れる。


 「大丈夫です、サージャ様。誠心誠意、このギルスがエスコートさせて頂きます」


 キラリ。と歯が輝く笑みを向け、右手が背に回される。

 徐々に近づくギルスの顔。

 サージャはギュッと目を瞑り―――。


 右手を拳で突き出した。


 「ぐはっ!」


 拳は鳩尾に埋まり、ギルスの体は二つに折れた。

 彼女の拳は暗殺の拳。見事に急所に突き刺さった。

 ギルスは起き上がれない。


 「だから!それをしたらいけないから!話を先にするんじゃないか!!」


 サージャは、顔を真っ赤にして仁王立ち。ギルスに指を突き付けて、涙目でプルプルしていた。


 「そう、でした・・・」


 ぱったりとギルスの手が落ちて、サージャははっとする。


 「わああ!すまん!ギルス!」


 わたわたと近づいて、ギルスを仰向けに転がすと、急いで回復薬(小)を飲ませた。




 怖気づくサージャと、殴られるギルス。


 いつもの事だった。




 ※ ※ ※




 時間はさほど経っていない。

 ギルスが復活したのを見て、サージャは警戒するように距離を取った。

 向かい合って座る。


 「その、すみませんでした」


 ギルスは土下座だ。


 「いい。私も悪かった。顔を上げろ」


 まだ若干赤い顔で、サージャはふいっと横を向く。

 ちょっと拗ねているようだ。


 「では、改めて。今度こそ最後まで聞きます」


 顔を上げて、サージャににじり寄ると、サージャは手のひらをギルスに向けて、ギルスの動きを止めた。 


 「その前に、もう一度確認させてくれ。これは王家の重大な秘密だ。お前、それでも訊くか?」


 「仮に聞かなかったらどうなるんです?」


 「私は、これを抱えて、素知らぬ顔でお前の横に居る事は出来ない。私の心がお前に向いてしまった以上、それは出来ない。ここから、別行動だ」


 言ってサージャは深呼吸する。


 「これは、母と、ディア姉、カーリアス兄上、そして私に関する重大な秘密だ。知ればお前は、私から離れられなくなる。それでもいいか?」


 挑むような眼、ひざ上で組んだ両手は震え、隠そうと体が力む。

 震えるな、と思えば思うほど、震えは収まらない。


 怖い。ギルスからの返事が怖い。

 隠して、今まで通りにすればいい、そう思わないわけではない。

 出来るならそうしたい気持ちもある。

 しかし、こちらの気持ちに気づいたギルスが、今まで通りにしてくれるとは思わない。


 寄り添い、共に歩きたい。

 サージャだってそう思っている。

 だからこそ、自分の根幹に関わる問題を、隠すことはできない。


 大きく息を吸って、長く吐き出す。

 思い切って、最初の一言を言った。


 「私は、産まれてはいけない子供だったそうだ」


 沈黙が、横たわる。


 「それは、どういう・・・」


 意味なのかと、聞きたいのだろう。

 でもこの先は、決意を聞いてからでなければ言えない。


 「ギルス、聞くか?」


 握り合わせている手を、ギルスのそれが包む。

 顔を上げれば、困ったように笑うギルス。


 「今更だ、と言ったでしょう?俺は離れませんよ」


 ふわり、と優しく抱きしめられた。


 「・・・うん」


 サージャは泣きそうな声で、返事をした。


シリアスパートを分断しようと思ったら、ギャグパートになってしまった。。。

おのれギルス。。。

おかげですっごい短いじゃないか。。。



お読みいただき、ありがとうございます。

評価いただけますと、大変うれしく思います。

頑張って次も書きます!

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