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元騎士、弟子と勇者の決闘を傍観しようとした

なんかめちゃくちゃ早く書ける、何故?!

「こ、ここなら誰の邪魔も入らないな」


そう言う少年の案内に従って着いたのは、街の外れにある岩場と森に挟まれたひらけた場所、確かにここなら被害は出なさそうだ。



観客はエクティスと少年の連れだけだ、冒険者ギルドの人たちは化け物同士の戦いに巻き込まれたら敵わないということで着いてこなかった、エクティスも本当は付いてきたくなかったが、仕方ない。



「………早く構えろ……斬る……」



牡丹は腰の鞘から今にも刀を抜刀する勢いで少年に怒気のこもった囁きをぶつけ、魂まで凍るような悪寒を感じさせる。



牡丹の殺気におびえ、背中に冷たい汗をかきながら手を前に突き出し待ったをかけ、自身の考えを提案する少年。


「ちょ、ちょっと待てよ!決闘のルールを決めてなかっただろ!」



今すぐ切り刻みたい気持ちを抑え、鞘に収めたまま、しかし柄に手を添えたまま、警戒しつつ彼の言葉を反芻。


「………るーる?」



視線で続きを促し、一応は聴く気がある牡丹に安心し、語り聞かせる少年。



「ああ、この勝負なにがあろうが負けた方は勝った方の言う事を聞くってルールだ!」



要は自身が勝った場合は自分との肉体関係を強要するためにこんな条件をつけてきているわけだ。



負けた場合は最悪この場でやられる可能性をもある、きっとその時牡丹は自由を奪われ、一方的に欲望のはけ口にされる。



少年の思考回路はどんな種族だろうが雌であれば孕み袋とみなす小鬼と同じなことに反吐がでる牡丹。



心なしか少年の下水が腐ったような目で牡丹の体を品定めされ始め、不愉快半分呆れ半分で溜息をつく。



「はぁ、わかったわかった、そこまでして拙者をはーれむに加えたいのか………いいでござるよ………負けたらお主の好きにするといい………」



半ば無理やり約束を取り付けた事に微塵も情けなさなぞ感じず、勝てば自身のハーレムに彼女が加わる事に喜びさえ滲み出ている。



彼女の肉感的な体を思う存分楽しむことができると考えているのか涎を少し垂らして、舌で舐めとる。



後で言い訳されないように大声で喚き、念押しする少年。



「その言葉忘れんなよ!」



いきなり過剰な声量で自身の鼓膜を刺激されびっくりし、眉を潜める牡丹、絶え間なく凍てつきそうなほど冷めた目で少年を貫きつつ肯定の意を返す。



「………そっくりそのまま返すでござるよ」



自身の懸念が晴れ、敗北することなど頭の片隅にもない彼は醜悪な笑顔を浮かべる。



聖剣を地面に突き刺し、仲間の方に手を振り、美女の応援がこちらに届く。



戦う前の準備は整ったと言わんばかりに満足げに頷きながら決闘の開始を牡丹に宣言する。



「それじゃあ始めるか!」




「ああ、とっとと始めるでござる」



「じゃあ開始だ!!」



言いながら地面から剣を引き抜き構える少年。


お互い獲物を構え相手を牽制し距離を図る。


いくら牡丹が強いといっても勇者である少年も強い、無闇に攻めて勝てる相手ではない。


しかし逆説的にいえばまともに打ち合えばどう転んだとしても牡丹が勝つということだ。



そんな勝負にあんな条件をつけるなど、正気を疑うが、牡丹は知っている、目の前の男は負けるのがわかってる戦だけはしないという事。



負けるとしても最小限の被害にすまそうとする、そういう男だ。



勝つ見込みがなければあんなルールは付け足すわけがない。



現実的といえばいいのか単に臆病者といえばいいのか判断が分かれるところだが、今はどうでもいい。



相手の勝機、腹を暴こうと頭の中で少年の一挙一動作を思い返し、ヒントはないかと思考の海に溺れる。




決闘直前、仲間に手を振っていたことが彼女の直感に引っかかり、さらに目の前の少年の目線がよく観察してみると僅かに自分から焦点がずれている上、何か勝利の確信めいた笑みまで浮かべている。



十割呆れを滲ませ牡丹が呟く




「……お主阿保でござるな……四時の方向から一発……」



いまだにいやらしい笑みを浮かべ、ヘラヘラしている少年。


「あ?」




瞬間、牡丹に向けて死角から炎弾が飛翔する。


(は!!!?!!)



驚きに声も出ない、傍観していたエクティス。


速度、威力、共に無防備に食らったら隙を晒すことは確定的。



ましてや背後からだ、これは避けるのは難しい、声を上げ彼女に危険を知らせようとするが時すでに遅い。




あわや着弾すると思いきや、体を捻りながら後ろの炎弾を難なく切り裂く牡丹。


明らかに着弾した瞬間に叩き込むことが想定された大振りな一撃を振ってくる少年。


仲間の援護は切り裂かれたが相手の態勢を崩した有利は動かない事に勝機を見出し斬り込んでくる、そんな彼の凶刃迫るが、彼女本人はどこ吹く風、後ろが見えてるかのごとく踊っていると錯覚するほど軽やかに回りながら回避。



そのまま炎を纏った刀の刃を返し峰を向け、遠心力と相手の突進力すら利用したクロスカウンター気味の横薙ぎを少年の腹に叩き込む



高価な防具に身を包んでいる少年だが、元々強力な牡丹の斬撃に、何乗もの運動力が加算された一撃だ、効かないわけがない。


事実、打ち込まれた少年は腹の物を戻す勢いで嗚咽を漏らしながら跪き、地面に両手をついて苦悶の声を上げている。



「オボォォォ!?!?………な、なんで死角からの攻撃がわかった?」



まさしく路傍の石ころ、いや、その石に引っ付いている油虫の死体を見ているかのような冷たい目で見下ろす牡丹。



「…………はるか格上の拙者を相手にあのるーる、警戒するなと言う方が無理であろう………だからお主は阿呆だと言うのでござるよ………」




少年が悶えている隙に少し顔晒し仲間の美女をチラ見する、もちろん視界の端に少年の姿を捉えながら。


吹雪の凍える冷たさの無表情なのか溶岩のような熱さの無表情なのか、もしくはその両方なのか、判断が難しいが、この上なく不愉快そうに眉を寄せる牡丹。



相手の表情など見ず、悪態を吐く少年。



「くっ、クソがぁ」



無駄な時間を過ごすのは御免とばかりに自身の愛刀を掲げ、トドメを刺そうとした直後。



今度は草むらの陰から矢が飛んできた。


「なっ!!?!」


伏兵は一人だけと決めつけていた牡丹には予想外、この射撃は避けられない。



空気を貫きながら直進してくる矢には、よく見ると先に毒が塗ってある、掠りでもすれば動けなくなるだろう。


(む、無念!!)



自身の敗北を悟り、その後この男に滅茶苦茶にされる事を覚悟するが、想像するだけで身が固まる。



あわや、彼女が毒牙にかかるところに傍観に徹すると決めていたエクティスが飛び出し、矢を剣で切り落とす。



「し、師匠……!!?」



「………何が起きても決闘には手を出さない、それが俺の騎士道心得の一つだが、これはもう決闘じゃねぇ、勇者じゃなくて愚者の間違いだろクソ野郎……」



憤怒を表情、声、ありとあらゆるもので表現するエクティス。



「じ、邪魔しやがって!!」




喚き散らす少年、呆然と疑問を吐露する牡丹。




「よ、よくわかったでござるな師匠……」



隙なく周りを観察しながら返答し、最後に牡丹を鼓舞するエクティス。



「…………最初のは気づかなかったが、そういう事を考える奴が、この草むらを利用しないわけないからな、注意しといて良かったよ、外野の余計な茶々は俺がつゆ払いしてやる、お前はコケにされた分倍にして返してやれ!」





師匠の頼もしさに喜びを感じる弟子としての感情と自身の貞操を守ってくれた男らしさに女として惚れてしまった感情が混ざり合い、優しげに苦笑する牡丹。



しかし、愚者の少年に振り向いた時にはそんな甘さなど微塵も残さない冷たい表情で睨む。




「……最後の最後まで、師匠の騎士道も、拙者の武士道も侮辱する行為、万死に値する……」


少年は一瞬、彼女の能面のような顔に影がかかって表情すら読み取れない錯覚を幻視した。



「な、な、なめんじゃ!!!」


怯えてる人間というのはその事実を認めたく故、必要以上に大声を出す。


怯える前と後で、声の音量があまり変わらないのでその心理故に大きくなっているかはわからないが、何度も噛みまくってることから怯えてることは確定的だろう。



少年の破れかぶれの一撃を出すことすら許さない牡丹、ほぼ同時に三連撃を放つ自身の信頼を乗せている剣技を放つ


「贋流殺法 偽剣・燕返し!!」


振りかぶっていて攻撃の予備動作の途中に初撃を腕に叩き込み中断させ、続く連撃を脇腹、最後の一撃を顎に当て空中に跳ね上げる牡丹。



「ギャッァァァ?!?」



目にも止まらぬ斬撃で三回斬り付けられ、何をされたのかすら理解できずに悲鳴をあげる少年




「贋流殺法 偽剣・無窮三段突き!!」




剣帯に引っ掛けていた鞘を引き抜き、追い討ちをかける牡丹。



斬撃の勢いで宙に浮き上がった少年の体の中心線にある急所を、かの天才剣士が生み出した剣技の異名通り、上、中、下段に鞘をほぼ同時に突き込み、背後の岩壁に吹っ飛ばす。



轟音と共に少年は岩壁にめり込み、即席の貼り付け台にする牡丹。




「が、ご、おおおおおぉ???!!?」




羽などないのに強制的に空中を舞わされた後、継ぎ目のない最速の刺突を異なる急所に一発ずつぶち込まれ、空を飛翔する感覚に実は自分は鳥だったのでは、そんなイカれた勘違いするほど混乱の中に突き落とされ、奇妙な悲鳴をあげる少年。





牡丹が刀を地面に刺し、ついに終わったかと少年が思い込もうとするが、そうは問屋は卸さない、鞘を振りかぶり呟く。



「贋流殺法 昇華の太刀・十重交差斬り(とえつばめがえし)



牡丹の呟きと共に壁に埋め込まれていた少年がゆっくりと地面にうつ伏せに落ちようとしたその時、少年には横薙ぎを一閃したようにしか見えなかった。




「ガアッ??!?」



横薙ぎを一閃したと思ったら、十の斬撃に弾かれ、空中で強制的に踊らされた後に地に落とされる。



オタクだった彼の記憶に昔有名な作品の作者が書いたというだけの理由で購入し、結局斜め読みしかしなかったラノベ登場人物が言っていた、飛ぶということは同時に堕ちるという事、などという矛盾した考えを少年は無意識に思い返しながら意識を闇に落とす。



「ブッ?!?」



「……これに懲りたらもう拙者に絡むなでござる……」



呟くや否や、少年の股間を蹴り、仲間の方に蹴り飛ばす牡丹。



「さっ、阿保と付き合ってると時間の無駄、早く帰ろうでござる師匠!!」



確かに自分が倍にして返せと言ったが、鬼と見間違うような所業を行なったと者と同一人物には思えない。



牡丹は輝くような笑顔を浮かべながらエクティスにハキハキ喋る。



彼はそんな牡丹に少し引きつった表情を浮かべる。




「え?あ、う、うんそうだね」



さっきの恐ろしい光景を見たエクティスはビビリながら返事する。



「そ、それと、その、さ、さっきは、た、助けてくれてありがとうでござる師匠♡」



「へ?いや、だってあれは流石に卑怯とかそういう次元超えたからなぁ、当たり前といえば当たり前だな」



「……ふふ、もう、拙者をこれ以上惚れさせる気でござるか♡」



「はい?」


「な、なんでもないでござるよ♡」



「ま、まぁいいや、じゃ、じゃ帰りますか」



「はいでござる♡」





◆◆◆◆◆◆◆





そんなこんなで自宅に帰ってきたエクティス、しかしここで一つ疑問が湧いてくる。



「あれ?そういやボタンさん?って今日どこに泊まるの、よかったら送ってくけど?」



「あははは、その心配は無用でござる、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()




「あ〜そっかそっか、俺の家に………ってそれはダメだろ!?」




「うん?何が問題でござる?」




「い、いや、だ、男女が同じ家で寝るって、ま、間違いが起きたらどうするんだよ!!」





「い、いやぁ〜そうなったらなったで望むところでござるよ!む、むしろ師匠となら、せ、拙者は……」





「え?な、何?もっと大きな声で言ってくれないと聞こえないよ?」





「も、もう師匠のエッチ!?!と、とりあえずお邪魔するでござる!!!!」




「あっ!?ちょ、ちょっと待ちなさいボタンさん!!?」



いつのまにか取られていた鍵でドアを開け中に入っていく牡丹、その後を慌てて着いていくエクティス。


いやぁ勇者は強敵でしたね(棒読み)

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