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元騎士、弱肉強食を学ぶ

筆が乗って続きを書きました!

「ギャッギャッギャッ!!」


異形の裏葉色の小鬼が耳障りなノイズに等しい鳴き声をあげ、錆びまみれの剣を振り回してくる。



久しぶりの命のやり取りに肝を冷やしながらも、頭は熱くなっていく、そんな矛盾した錯覚をエクティスは感じていた。




相手がどんな弱者だろうと戦場で油断は禁物、油断していればいつのまにか急所を穿たれ、総ての生き物に等しくあるもの、死が訪れるわけだ。





騎士の仕事をしている時、それをよく痛感した、魔物を囲んだからと少し余裕を出し始めただけで、その同僚の首がいきなり飛んだのだ。





その後、残った騎士でなんとか討伐したものの、同僚の首が飛ぶ瞬間がしばらく俺の頭から離れないのだ、魔物だって俺たちと同じ生き物、次の瞬間には死んでるかもしれない、そんな状況に追いやられたらそれこそ死に物狂いで抗う、それが生き物のごく普通の行動なのだ。





窮鼠猫を噛むというように窮鼠が猫の首を噛みちぎるなど、珍しくともなんともない。





命のやり取り、真剣勝負でよそ見をしたら死ぬ、というあまりにも当たり前なこと、しかしある意味最も大事なことを心に刻み込んだ。





そんな事を思い出しながら、歯を噛みしめ、小鬼の攻撃を避けに徹し、相手の隙を探す。




焦れたのか小鬼が大上段から銅色が混じった刃を振り下ろした。




今までに比べたら数段速い斬撃に驚きながらも最小限の動きでかわし、相手の側面に着地する。




俺はこの戦闘中で一瞬、しかし最大最高の好機を右手の愛剣で貫いた。




腹を貫いた後、剣が抜けづらいことを考慮して、蹴りを入れ、上手く剣を引き抜き、軽くバックステップ、相手の様子を観察する。




小鬼はよろけながら、力無く地面に倒れこんだ。




数分見ていたが、動かないので試しに腕を切ってみたが反応なし、どうやら事切れたようだ。




「はぁ〜怖かった〜」




生き残った安堵の声を隠そうともせずに吐き出しながら地に尻をつける。




討伐証明の耳を切り取り、ギルドから貸出された素材袋に詰め込む。




少し勿体無いが、ゴブリンの解体などはやったことがないので今回は見送った。




魔物の死体というのは騎士にとっても冒険者にとっても宝箱のようなもの、横取りされたらたまらないし、掠め取られた場合、証明するのは難しい、まぁわかりやすくいうと自分でやったほうが安心できるし、自分の取り分を確保しやすいのだ。



(……だから俺は一般的な魔物の解体をやったことがない……)




依頼書を取り出し内容を確認。




「よし、クエストクリアだ」


達成感を惜しみなく感じながらひとりごちるエクティス、記念すべき初依頼は成功に終わった。




単独で行動しているゴブリンを探し、一対一で確実に仕留めること三回。




受付嬢には格好つけて数体相手ぐらい大丈夫と言ったが、勝てることと安全に勝てるかどうかは、全くの別問題。




自身の力量の限界ギリギリのところで戦っていたら、ちょっとしたトラブルで危険に陥る。





(………そんな危険をゴブリン討伐報酬ごときに費やせるか……)




面倒だが、手間をかければそれだけ安全に事を運べる。




見込みの無さそうな手間はかけないが、確実に効果が出る小細工をエクティスは割と気に入っていた。




世界に生き物は腐るほどいるが、自身の命はたった一つ、言ってしまえば、さっきのゴブリンが行なった一か八かの勝負の一撃など放ちたくない、勝てればかっこいいが勝てなければ物言わぬ骸だ、できるだけリスクを回避するのは当然。




だがその日の帰り道にとんでもない理不尽に見舞われ、エクティスは新たな事実を心に刻み込んだ、油断してなくても死ぬときは死ぬという事を。





◆◆◆◆◆◆◆





「最低でもゴブリン倒してれば食うに困ることはないな………」




生きる為の自身のノルマを呟きながら歩いてた帰り道、地鳴りのような足響きが聞こえたので嫌な予感を感じつつ辺りを見回したら、まるで通り雨のようにソレは突然降って湧き、現れた。




小鬼の裏葉色とは一目で格が違うとわかる、銀と見間違うようなシミひとつない白い毛に覆われた体表、全体的には一般的な狼型の魔物の上位者といったところだが、他と違う特徴がひとつあった、暁のように染まる紅眼、恐ろしげに光る犬歯、()()()()()()()()()()()()()魔物は、世界広しといえどエクティスはコイツしか知らない。




自身の勘違いと思いたいが、そんな現実逃避してる間に間違いなく殺されると判断し、無駄だとわかっているが無抵抗で殺されるなど許容できるはずがない、武器を構えるエクティスは目の前の理不尽の名を口にする




九頭龍犬狼(ヒュドロス)………!!!」




龍と狼が許されざる恋に落ち、その末に生まれたとか、狼の群れが龍に挑み、群狼をを食らった龍が変異した姿、など諸説ある化け物。




一時期、今は亡き魔王と魔族のトップを争い、魔物の勢力を二分させた正真正銘の生きる伝説。





(フザケンナ!!なんでこんなところにこんな奴がいるんだ!!)





相対する俺と化け物はさながら龍と蟻、鼠が猫に一矢報いることもあるというのは聞いたことあるが、蟻が龍に噛み付いたという話は未だ聞き覚えがない。





彼史上最大の勝てる見込みのない殺し合い、いや、一方的で圧倒的な虐殺が始まろうとしていた



下級騎士には荷が重すぎる化け物、九頭龍犬狼を相手に決死の覚悟を決めるエクティス、しかし覚悟ひとつ上乗せしたところで遥か格上に勝てるはずもない、自身の生を女神に願うエクティス、俺が今ここで死んだら受付嬢との約束はどうなる?!腕はまだついてる、足はまだ動く、ここを切り抜ければ依頼達成なんだ。


次回、元騎士死す。いざ尋常に決闘!!

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