元騎士の最果て
続きをどう書こうと考えてたらめっちゃ時間たってましたすみません。
朝
安物の薄いカーテンから朝日が漏れ、室内を薄く照らす。
コケコッコ〜と甲高い鶏の鳴き声が響き渡り、彼はいつもその声を目覚ましがわりに起きていたので条件反射で目が開く。
(なんだか昨日のことが思い出せない……)
「頭いてぇ、飲みすぎたな………」
寝ぼけながら時計を見た瞬間にエクティスは飛び起きた。
「やっべ!!遅刻じゃねぇ………ってクビになったんだった俺」
急いで服を着替えようとしたが途中で自身がどれほど空虚なことをしてるか気づいてしまった。
無意識にか意識的にかはわからないが、まだクビになった事実を認められていないのだろう、自分の女々しさに苦笑する
(……夢であって欲しかったがそんなものは都合のいい幻想だ、現実を見ろ)
「さて……それじゃあ職探しでもしますか」
◆◇◆
「駄目だ……全く見つからん」
当たり前といえば当たり前、この時期に職を探してる元騎士など無能だからリストラされたと宣伝しているようなもの、元騎士や貴族崩れが問題を起こすというのは別に珍しい話じゃない、トラブルを起こしそうな扱いづらい男より、平民や村娘の方が万倍マシに見えるだろう。
(……というか、団長が言っていたではないか、武力があるから戦争が起きるとかなんとかいう平和主義的思想?が国民の間で流行っていると、騎士なんて武力を受け入れてくれるはずがないよなぁ〜)
そういう世論が関与しない、実力だけで判断する職種になると大体、○○学校卒業とか、○○免許とかの資格が必要になる。
(……当然そんなもん持ってねぇし)
「……となるとあそこしかないよな………」
ため息をつきつつ諦めながら目的地に重い足をなんとか進める。
そんなこんなでやっとこさ着いたのは立派な建物だ。
(………まぁ中はデカくなった酒場というのが正しいんだけどな……)
いつまでも入り口に突っ立ていると迷惑なので嫌々ながらも中に入り受付まで歩いていく。
そして受付嬢に声をかけた。
「あのすみません…………」
「はい。冒険者ギルドに何の用でしょうか?」
エクティスの最後の砦は冒険者ギルドだ、冒険者になるにはそこまで資格がいらない、というのも誰も好き好んで命かけて働いた結果大した報酬をもらえない仕事はしない、その上新人だろうがベテランだろうがちょっとしたミスで死んでしまう。
(……ギルド側としても常に新人募集しなければ人員がいなくなってしまう、ということなのだろうよ)
条件的には犯罪歴がなく、成人してれば誰でもいい。
ここなら暴力が悲劇呼ぶとかなんとかは関係ないだろう、なんせ普通に剣や槍を持った輩がゾロゾロいるのだから。
(………あまり俺は強い方ではないので頼りになりたくなかったが、この際四の五の言ってられない)
(……改めて見ると受付嬢ってみんな美人だな、今も営業スマイルを浮かべている、さすがプロ…)
「あの………何か要件があるのでは?」
受付嬢さんに見惚れてぼーっとしてしまったエクティス。
(……にしても困り顔も可愛いな……)
「……あ、すみません、えっと、冒険者登録をしたいのですが…………」
さらに呆けてしまうのはなんとか自重するエクティス。
「なるほど、ではこちらの用紙に自身の名前と戦闘職、経歴などを記入して同意書にサインしてもらえれば、ギルドカードと交換できます、ギルドカードは自身の力量が確認できるのと身分証明書になるので無くさないように注意してください、再発行は別途料金が発生しますのでご了承お願いします」
営業スマイルとマニュアル通りの説明とわかっていても美人に見つめられるとちょっと照れている、女慣れしていない少年。
「はい、わかりました」
用紙をもらい、適当に空欄を埋めていく、そして提出。
「これでいいですか?」
「はい、おや?元騎士……失礼しました、なるほど、たしかに承りました。こちらがギルドカードになります、ランクは一番下のF、頑張って昇格を目指してください、あなたの冒険に幸あらんこと」
「ありがとうございます、まぁ程々に頑張りますよ」
一瞬意外そうな顔を出し仕事用の仮面が崩れかけたすぐに締め直す。
無機質な定型文と彫像のように浮かべている笑顔だが、美人相手だとドキドキしてしまう、その動揺が相手に伝わらないように早口に礼を言う。
そうしてエクティスは冒険者になり、どうせなら簡単な依頼を受けてしまおうと考え、掲示板に貼られたFランク向けの依頼を取って受付嬢に持っていった。
「せっかくなんでこの依頼受けたいんですが……」
「ゴブリン討伐……わかりました、四日以内に達成できなければ依頼失敗となります、1ヶ月以内に10回失敗になると降格、最低ランクは除名処分となるので気をつけてください。できるならパーティーを組むのがオススメです、一人ではアクシデント一つで死んでしまうので……」
おススメ、と言ってるのはもともと冒険者はギルドの決まりを破らなければ基本自由、なので受付嬢にそこまで無理強いする権利がないのだ。
(……こうして心配してくれるだけ良い職場だと思う)
「これでも元騎士なのでゴブリン数体なら大丈夫ですよ、それに、最低ランクな上に騎士は冒険者に毛嫌いされてますから、パーティー組んでくれる物好きなんていません」
苦笑しながら皮肉げに笑うエクティス。
(……騎士として歩いていたら、たまに街中で会うだけでも冒険者に大層目障りにされたのは記憶に新しい)
「それは……そうですけど………」
「心配してくれてありがとうございます、死なないように頑張りますから安心してください」
そう笑いながら言い、今日はもう夜遅くなので、家に帰って寝て、明日頑張ることにしたエクティス。
なるべく早く書き上げたい………