発現
エキセルは、あのキセルさえ破壊すれば封印出来る。しかし、キセルは影も形もない。
「キセルは何処にいったんだ?」
キョロキョロと探している俺にエキセルは嘲笑った。
「あのキセルです。、私と一つになりましたよ。もうこの世には存在しません」
奴はこう言っているが、例え物の形状が変わろうとも、燃やされようとも、物を形作った物質は必ずそこに残る。
それは、世界の理である。ならば、奴がキセルの機能を使えている以上、ある程度の原型は保っているはずだ。
ならば、この方法を取ろう。
「ウィンダ、俺の右手にウィンドパージをかけてくれ」
ウィンドパージ。それは、武装解除、除霊、解呪といった事が出来る万能術だ。
「ハック様。この術を発動したら、右手のナイフが」
「大丈夫だ。成功するはずだ!!」
「発動!! ウィンドパージ」
発動と同時に俺は右手のナイフをエキセルの灼熱の体表に突き刺した。
ウィンドパージの術により、握っているナイフが俺の手を離れようと暴れ狂う。
ここで手を離したら駄目だ。
俺はナイフを強く握りしめ、そして捻った。
少しの亀裂が全身に拡がり、そして体表は砕け散った。
「見えた!!」
奴の体内に薄っすらと細長い物が見える。
俺は左手をそれに伸ばした。
「熱い」
溶岩の中に手を入れたのだから熱いに決まっている。
触れて直ぐに腕が炭化するわけではないが、あまり長くは持たない。
覚悟を決めて細長い物を掴み、引き抜いた。
それは、キセルだった。
「馬鹿な、ありえない。完全融合した私からキセルを分離させるとは……」
エキセルの肉体が少しずつ 少しずつ小さくなっていく。
もう形状を維持できないのだろう。
タイミングを見計らっていたアルスが呪文を唱えた。
「邪神の力、身に纏いし穢れた存在よ。永久に眠りたまえ‥‥。凍結術式13起動!!」
エキセルの背後の地面から黒い箱状の物が蜃気楼のように出現した。
まるで棺桶のようだ見た目をしている。
フタはギギギと音を出しながら開いた。
そこから白い手のようなものが無数に現れ、エクセルを掴む。
「何だ? 何なんだこれは!!」
その手を振りほどこうとも、直ぐに掴まれる
腕、足、腰、そして頭が掴まれていく。
「離せ、離せー!!」
もがき足掻く努力も虚しく、エキセルは棺桶に飲み込まれた。
蓋が閉じ、蜃気楼が消えた。
そこには何もなくなった。