汚れなき男、友を探す
偽りの世界“アクセプト・ワールド“。
ここはいわゆるファンタジーの世界である。
そんな世界を破壊しようという存在がいた。
彼の名はハック・イノセント。
俺の事だ。
俺はこの世界の人間ではない。厳密にいうと誰一人としてこの世界の人間は存在しない。
世界の名前は元々“エンシェント・ワールド“だったのだが、教会の民と言われる集団によって改変を受けて“アプセクト・ワールド“となった。
改変の影響を受けた人は、自分は元々この世界に住んでいるという偽りの記憶植え付けられた。
だが、俺はその影響を受けず、元の世界の記憶を保っている。
それは強みでもあり、弱味でもある。
元の世界を知っているからこそ、元に戻しそうという発想がでたのだが、この世界の住民にとっては俺が反政府活動家に見えてしまうのだろう。
俺だけでは世界を戻す事はできない。だから、あいつを探さなくてはならない。
そうして俺はあいつの居るであろう場所の旧ハテノ村に向かった。
ハテノ村は特別な場所で、元の世界では在ることは間違いないのだが、誰もたどり着くことができないと言われる場所だ。過去に俺はたどり着いたときは、村は円形状の外壁におおわれていて、村の中には誰も住んでいない住宅地と、シンボルである巨大な樹木がそこにはあった。
改めて向かったそこには何もなかった。厳密には、瓦礫の山がそこにあるだけで、樹木は跡形もなくなっていた。
だが、妙な点があった。樹木はないと言うのに螺旋階段だけはそこに残されていた。
「妙だな」
元々螺旋階段は樹木にまとわりつくように存在していた。その芯とも言える樹木が存在しないのに形を保っているはずはないのだ。
だが、存在している以上は理由があるのだろう。
螺旋階段の中央の何もない場所に行くと男がいた。
「そういうことか……。人が消滅したのではなく、別の場所にいるのか」
男は何かをぶつぶつと呟きながら、空を見上げていた。
その姿には見覚えがあった。
「やっと見つけたぞ。アルス」
アルス・A・レコードそれが彼の名である。
彼の詳しい事は後程語る。
声に気がついたアルスはこちらを向き、安心したようにこう言った。
「よかった。この世界は俺しかいないと思っていたよ」
「やはり、お前は無事だったんだな。再開そうそう悪いが、互いの情報を共有したい」
「俺から聞かせてくれ。俺はついさっきここで目覚めたのだが、世界が改編されてからどれだけたった?」
「72時間経過したところだ」
「それはまずい。説明は後にする。俺の肩に手をのせてくれ」
俺は手をのせると、アルスはポーチから薄い板状の装置を取り出した。
「転移 座標は夢世界チノ遺跡前ポータル」
呟くと風景がだんだんと白くなっていった。
世界のルール その1
改編前と改編後の世界の総人口に変化はない。