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命の灯はいつか遅かれ早かれ潰える ―The theory of life―  作者: MAD(泥)過ぎてもはや何かわからない。
現代、日本国。201X年
3/4

第零章 KARTE.3 現代、神崎徹は生涯を閉じた。 ―Reunion with my father who fell into hell―

3話目です。時間が取れない…!

 ここは、S医大病院心臓血管外科の第三診察室。私は次の患者を呼ぶ前に、自分のカルテを作成していた。病状を記したもので、死んだ後に私の体の病理解剖をするためにはこれを使ってほしいと他の医局員に頼んだためである。私の寿命は、1ヶ月を切った。死ぬのは怖いが、次はどのようにして生きていくのだろうかと考えたら、死の恐怖は霧散した。いつも通り患者のカルテを見て、病状を確認して次の患者の名前を呼んだ…。


 あれから13日ほど過ぎたある日、布団に潜り、寝ようとした時に父の姿があった。あれほど醜かった父が、やせ細り、首には首輪がかけられており、後方に鎖がつながっていた。父は申し訳なさそうに私を見ると首を垂れた。そして小さな声で、「申し訳ありませんでした。自分の息子が苦しい時に手を出してしまって‥‥‥。」と細々といった。後半意味の分からない事を喚きながら涙を流した。思い出したくなかった過去が重油のようにのっぺりと浮ぶ。私は、グラグラと煮えたぎる殺意を押し殺しながら、「私の前に現れるな。反吐が出る。」と吐き捨てた。もうその顔と姿は見たくない。いっそ苦しみ抜きながら奈落へ落ちろと思った。そのあと神が降りてきた。どうやら私は1週間後に死ぬようだ。最期はゆっくりと逝きたい。最期くらい自分の我が儘を通したっていいじゃないかと思った。次の日、私は病床に伏した。


 運命の日の3日前、お見舞いに妹と妹の旦那さんが来た。花を持ってきたようだ。妹は紗良(さら)という。私の2個下で、面倒見がよく、元気のよい女性だ。父との相性は悪く、父は私の事を言うと母より早く怒鳴り散らす。学生時代は勉強している時にいつも私にSOSを出す感じで成績は壊滅的。だが、運動神経がとてもよく、中学、高校とバレーボール部の主将を務めた。高校卒業後は地元の大学に進学。家政学部に入って家庭生活を中心とした人間生活における環境と人間の相互作用について人的・物的両面から、自然・社会・人文の諸科学を基盤として研究し、生活の向上とともに人類の福祉に貢献する実践的総合科学を学んだ。大学卒業後は地元に本社を持つ大手医薬品メーカーに就職した。そんな妹が入社して中堅社員になった頃、1個下の男性社員と結婚した。職場恋愛だった。きっかけはどうやら私らしい。妹からすれば棚から牡丹餅のようだったと笑いながら話していた。妹は私に似ず、面倒見の良い姐さん女房のようで、旦那を尻に敷いていた。

「どう、兄ちゃん調子は?」と妹は訊いた。

「あまり良くない。食も細ってきたな、心配かけてすまない。」と少し頭を下げた。

「もうー、兄ちゃんったらそんな事言う。私までげんなりするから縁起の悪いこと言わないでよ。」

「お義兄(にい)さん、絶対に病に負けないでくださいよ。お義兄さんのような優秀な医師は誰一人いませんから、絶対、生きてください。」妹夫婦は励ましてくれた。それなのに、私は死ぬと決まっている。だが、踏みとどまることはできない。私は死ぬのだから――。


 遂に運命の日を迎えた。気持ちの良い朝を迎え、点滴を交換した。2日ほど、固形物を食べていない。便は出ず、ただただ体に溜まっていくばかりだ。昼過ぎ、容態が急変、徐々に死へと向かっていた。バイタルモニターは下がっている。その時、私の危篤の知らせを聞いた親族と友人が駆けつけてきた。私のベットの周りには人だかりができていた。妹は咽び泣き、親友は声をあげていた。だがその声は私に届くことなく、心電図と脳波は二本の棒となった。午後8時27分、神崎徹は生涯を閉じた。享年37歳、未婚。医療に生涯を捧げた人生だった。最期に、

「向こうの対岸にはヴァルハラが見えるのか」と呟いた――。

神崎医師の医学ノート―点滴―

 点滴は、生命維持に不可欠な「からだの恒常性の維持」のため、体液の代謝異常(水分・電解質・酸塩基平衡の異常、栄養障害等)の正常化、あるいは体液の代謝異常を未然に防ぐこと、また抗生物質などの医薬品の溶解・希釈を目的とした医薬品で、最も基礎的かつ重要な薬剤であるといえます。

 また医療現場においては、輸液製剤は他の薬剤を輸液製剤に混合調製することによって、目的とする薬剤を緩徐に点滴投与したり、緊急時などの場合に薬剤を速やかに血管から投与することができるように、予め血管を確保するために使用されるなど、製剤的な特性から、医療において大切な役割を担っています。

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