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命の灯はいつか遅かれ早かれ潰える ―The theory of life―  作者: MAD(泥)過ぎてもはや何かわからない。
現代、日本国。201X年
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第零章 KARTE.2 現代、神と思しき者 ―Declaration of death―

二話目です。誤字脱字や読めない点あれば何なりとお申し付けくださいませ(´・ω・`)

 ―― 201X年、S医大病院第一手術室 ――

ここで私は、神と思しき存在Xに出会った。

「聞こえるならなぜ言わないのだ?」

「ふごふごふごふごふご。ふごふご。」

「そうかわかった。抜いてやる。」

 男は悲痛な表情で気管チューブとバイトブロックを外した。手術台の周りでは淡々と電子心電図が鼓動を鳴らし、電子時計が0h0mで止まっていた。手術室の周りは暗闇に包まれ、ただ"手術中"と書かれたランプが赤い光で周りを照らし続けていた。

「なぜ、自分が自分自身を手術しようとしているんですか?」と私は訊いた。

「汝の言葉、聞き賜った。それは私とてつらい宣告(もの)がある。死の宣告だ。」と言い放ち、男はサージカルルーペを外し、はらりと手術衣を脱いだ。周りの者たちが消えていく。まるで北海道の名寄や幌加内、十勝地方で見られるダイヤモンドダストのように、黄金色の小さな粒子となって消えていった。そしたら男は私の容姿から法衣をまとった神様に変わり、こう言った。

「汝の姿を借りて申し訳ない。私は、知識、思想、生命を掌る神、アウラトと申す。汝らにとっては存在Xだろう」と首を垂れながら言った。

「そんな神様がどうして私の元に降りてきたのですか?」と訊いた。

「汝は、数々の人間を救いになられた。神の代わりとて感謝する。だが我々が汝の体を見たとき、寿命が後3ヶ月しかないのだ。大きな脈の壁が裂けていき、死ぬだろう。私もこれ以上は手出しできまい。自然の摂理に任せるが、慈悲の魂と膨大な知識は我々の手で残そう。」と神は告げたのだった。

「つまりこの後3ヶ月以内に急性大動脈解離になると。」

「そういうことだ。汝が幼少の時、心を治しただろう。だが、3つあった弁は2つに戻ってしまっている。画像診断などできれば早期で発見できただがもう遅くなっていた。しかも汝の体力では手術というものに耐えられない。緩やかに死を迎えるものだ。」と言われてしまった。

 私が3歳の時に宮城県のK病院で行われた、心臓外科医の影山彌(かげやまわたる)医師執刀のもと行われた大動脈弁形成術の事だろうか。私は医師として目指すべきなのは影山医師だったのかもしれない。もとい心の師ではあるが。私が医師になって初めて見た手術ビデオは自分の手術だったりする。(DVDにはK病院 心血外 大動脈弁形成術 執刀医 影山Dr.と書かれていた。今も大切に所持している)ふと、昔の事を思い出してしまった。そして少し息を呑み、

「まだ私にはやるべきことがあります。どうにかできませんか?」と尋ねてみた。

「残念だが、呪いそのものは治せない。だが苦しみは取り除いて見せよう。」

「消極的な処置ですか…。神様も難しいところがあるんですね。」と内心がっかりしながら、笑って見せた。

「そうがっかりするな。魂と記憶を残し、次に新たな人として生きる時、人の器に魂と記憶は乗せて見せよう。」と言いながら、ガラガラと音を立てながらホワイトボードが手術室に入ってきて、神は世界を映し出した。ボードに映ったのは中世欧州の街並みだった。

「汝はまた医師として人々を救っていただきたい。今みたいに忙しく仕事をするのではなく、ゆっくりしてみるのもどうだろうか…。」と提案をいただいた。そして映すのをやめ、こう告げた。

「汝が死へと変わる三日前の時、汝の父親が枕元に立つだろう。その時は覚悟していてくれ。」

父親か…。親父は3年前、63歳で肺がん(STAGE4)で全身に転移後、亡くなった。親父は私を痛めに痛めつけた人で憎き存在だ。話すときりがないが、要は私に虐待をした。母親は父親を避けるように逃げた。私も母と逃げた。その後勝手に自滅した。まあ自滅するまでもなく、これは因果だろうかと思う。

「分かりました。その提案は飲みましょう。」と言った後、神様は微笑みながら、

「新しい二度目の人生だ。楽しく生きよ。汝が別の世界に転生する時の刻、神の部屋でまた会おう。」と――。







神崎医師の医学ノート ―急性大動脈解離―

 急性大動脈解離とは、心臓から全身に血液を送る最も太い動脈である大動脈の壁(血管壁)に血液が流れこみ、外膜・中膜・内膜の3層になっている大動脈壁の内膜に亀裂が入って中膜が急激に裂けていく(解離する)病気です。ゆっくりと病気が進行していく慢性のものもありますが、急性大動脈解離は急速に進行していきます。

 大動脈からは脳や心臓、そして全身の臓器へ向かう動脈が分岐しています。このため、解離が生じることによって分岐した先の血流が途絶えてしまうと、血液の循環が破綻して脳梗塞や心筋梗塞、消化管虚血といった極めて危険な状態となり、突然死の原因になる可能性があります。

 大動脈解離には、心臓に最も近い上行大動脈が解離しているA型と、上行大動脈が解離していないタイプのB型に分かれます。A型は死亡する危険性が高く、発症した場合は緊急手術が必要です。一方、B型はA型よりも重症度が低く、内科的治療によって治療できる可能性があります。ただしB型の場合でも臓器障害を起こしたり、末梢への血流が途絶えていたりする場合には手術が必要です

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