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娘よりおかん。

 

「あぁ・・・」


 王は悲痛の声を漏らした。


 いつの間にか王の傍には奥様がいた。つまり王妃。

 王より随分若いその風貌と顔立ちは30半ば?いや40付近だろうか?髪も艶やかで赤味の強い茶色い髪をしていた。女性として一番女性らしさ出ている年代と言えばいいのだろうか。いや、年齢不詳。女性の見た目で年齢を想像するなど愚の骨頂というものか。


 華奢だが色っぽくもある肩と鎖骨のラインそこから伸びる細く長い首そして整った顔。瞳の色が光の加減で赤く見え黄色く見える。王族特有の目だ。


 王族の人間は直系の王族でなくても王族と結ばれると目の色が光の加減で赤と黄色に変わる特殊なギフトを授かると言う。


 王族のギフト。それはその目に顕著に表れ王族が王族であることを知らしめる。

 なんでもその王族が代々受け継ぐ守り龍の関係が深いと聞くが。実際僕は王族ではないし詳しいことは知らない。噂では王族に加わり結婚するときの儀式の際その目を授かるらしい。


 フェルナももちろんそんな特殊な目をしていた。

 ちらっとしか見ていなくてもその目は印象強く一目でわかるほどだ。赤と黄色の瞳は少し位置や角度を変えれば赤と黄色の狭間のような色をしたり真っ赤になったり真っ黄色になったりするからだ。


 色は国ごとに変わるらしくここ『ピラノ』では赤と黄色。だから国旗も赤と黄色で作られている。

 あと余談だが、『ピラノ』の名物はパンに肉を詰めトマトを凝縮したソースと黄色花をつける植物を粉末にして作る調味料をソース状にして乗せた食べ物らしい。実に興味深い。死刑確定した時は死ぬ前に一度地ビールとそれを食べたいと頼もうかな。


 話は逸れたけど現王は灰色の髪を持つ50くらいの男だった。

 灰色というのは少し違うか、白い髪と青みがかった灰色の髪が合わさった色だな。

 目は言わずもがな王族の目。顔はなかなか渋く疲労なのか心労なのか顔に深く刻まれたほうれい線のおかげで随分老けているように見えるから実際はもっと若いのかもしれない。

 フェルナは多分お母さん似なのかな?整った相貌を見る限り母親に似ているのかもしれない。髪の色は確実に母親と同じだった。まぁ。どんなに峰麗しかろうがあんなわがまま娘、僕は嫌だね。童貞の僕は童貞だからこそ、いやこじらせたからこそ女性には凄く大きな期待と希望を持って妄想で膨らませた沢山の本当の美女を思い描いてきたんだ。だからあのわがまま娘は僕的にノーだ。童貞のプライドにかけて。


 話はまたまた変わるがもうじき半日が経つ。そろそろ洒落にならなくなってきたんだが王はどうしてなかなか僕たちを頼ろうとはしないらしい。


「あのー・・」


 僕は少し焦ってきて声をかけようとした時だった。


「黙っとれ」


 ムシカに僕は止められた。


「なんでだよ、もうやばくないか?」

「こういうのはな下手に出れば負けなんじゃよ。こっちにはちゃんと娘を助けられるという切り札があるんじゃ。これ以上下手に出ることもなかろう」


 ムシカが言う。そのあとに先ほど起きたプラモも話に入ってきた。


「そうだよ、だいたいボレロの体液浴びたくらいで死刑だなんておかしな話さ」


 いや、待って。汚物やゲロも嫌だけど体液もヤダ・・


「俺なんかサーカスにいた頃は毎日魔獣の飼育の時に色々かけられたもんだよ」


 いや、なぜ頬を染める・・

 て言うかなんで枷が外れてるんだ。

 プラモはいつの間にか枷を全て外していた。


「プラモ・・枷は?」


 僕は聞いた


「え、あぁ。こいつだよ」


 するとプラモの服の裾から小さいモグラのような小さな魔獣が顔を出した。愛嬌のある顔がとても可愛い。


「ほう。キュルムか」

「うん、こいつだけ団長に言ってもらってきたんだ」


 キュルムは『ワールドダンジョン』の20階層くらいから現れると言う希少種の魔獣だ。とても小さく見つけることが困難な上にとてもすばしっこく人の物を盗んだりする魔獣だと言われている。僕も見るのは初めてだ。


「キュルムが枷を外したのか?」

「そうだよ。こいつは器用だからね」


 プラモはキュルムの小さい額を人差し指で撫で付けた。キュルムは気持ちよさそうに顔を緩める。癒し系だな。


「おい罪人」


 僕は兵士に呼ばれ顔を上げた。

 ついに来たか、僕の時代が。


「王がお呼びだ」

「・・・はい」


 兵士は僕の首根っこを掴む。あ・・あれ・・?

 僕は枷をつけられたまま床を滑るようにズルズルと引っ張られていく。いや!外してよ!!

 そんな布切れみたいな扱いをされる僕をムシカとプラモは生暖かい目で見ていた


「さらばじゃ・・童貞」

「ギロチン・・」


 おい。


 僕は玉座の間のフェルナが横たわる所までつれて行かれるとそのまま投げ捨てられるように床を転がった。

 扱いが酷すぎて僕はもう泣きそうだった。


「罪人よ、娘を助けろ」


 王が僕にそう言うけど僕は首に手首に足首に枷をされてるから床に突っ伏したまま顔を上げれないしなんなら娘さんに手をかざすこともできない。更に言えば僕を囲う城内の人間たちの目に晒されて数多の小さい声で罵られる仕打ちだ。

 ちなみに投げられた格好的に床に突っ伏し尻を上げた状態だからなお恥ずかしい。みんな僕の尻の穴を見ているんじゃないかと言う疑心暗鬼にかられるくらいだ。


「貴方、あんまりよ」


 そこにしっとりと耳の奥が濡れるような声がした。


「大丈夫?」


 僕はゾッとした。

 顔が見えないけど状況的に僕に話しかけてきてそばに来たのは王妃ってことだよな・・?

 僕を囲っていた人間たちも騒然としだす。やっぱり・・僕の尻の穴の方向の光景は異常なのは間違いないようだ。

 それは間も無く眼前に現れた。


「ねぇ?大丈夫」


 王妃目前に来たぁああ!!!


「・・・・」


 一国の王の妻、王妃、ファーストなレディが床に布切れのように突っ伏した僕に膝を折り僕の顔を覗き込んでいた。

 僕のヒロインはお姫様じゃない・・お姫様のお母さんだ・・


「具合悪い? あんなところにずっといたものね?大丈夫?」

「い・・いや・・」

「やめんか!ローズ!」

「王妃様!お離れくださいっ」


 王もやんややんや兵士もやんややんや、だけども王妃は気にすら止めない。


「貴方は魔法使いなのでしょう?娘をどうか助けてもらえるかしら?」


 僕の瞳を覗き込むその謙虚な姿勢に僕はもうドキドキした。もう僕の頭の中ではラブソングでも流れ出しそうな勢いだ


「も・・勿論です!」

「ありがとう、感謝するわ。兵士さんこの人の枷を早く外してあげて?」


 この人があのわがまま畜生フェルナのお母さんだなんて・・世の中って不思議なことばかりだ。

 僕は乱暴に枷を外され耳元で兵士に『暴れたら殺してやる』なんて言われながら四肢を自由にしてもらった。

 そして横たわるわがまま娘の側に向かう。いつの間にかそこには高級そうなベットに白いシーツが敷かれておりフェルナはまるで眠り姫のようだった。できればこのまま眠っていて欲しい気もするが、この姫を助けた後の自分の未来を想像しながら僕は身を震わせた。


 この扱いに虫けらを見るような目、僕はフェルナを助ければ英雄になれるかもなんておもっていたけど、なんて浅はかなことを考えていたんだろうか。そう考えていても仕方ないと僕は彼女の体に触れるか触れないかくらいの位置に手をかざした。確か。バルクックの時は願ったんだよな。治れ治れって。僕は安直だがそれしか知らなかったのでそうした。するとどうだろう。みるみるうちに手のひらに緑色の光がともりだす。


 おお・・できてる。


「なんだあれは・・」

「おお・・」


 どよめきの声が聞こえる。僕はこの呪いがどうかムシカのものだってことだけはバレませんようにと願った。

 ムシカの呪いもこの時はなぜか可視化するらしく前回同様フェリスの体から幾重のも重なる鎖のようなものが僕の手のひらにジャラジャラと吸い込まれていく、この前のバルクックよりも鎖の量が多い気がしたが無事鎖を手のひらに飲み込むことができた。するとどうだろう、フェルナはすぐに顔色をよくしていく。唇に色が灯り大きく肺のあたりが膨らむ。深い呼吸音。


 うん。もう大丈夫だろう。


 パチっーー


 あ。目が開い・・


「きゃあああああああああ!!」

「ぎゃあああああああああ!!」


 フェルナがすごい形相で大声をあげたもんだから僕も比例して大声をあげた。


「あぁ・・!フェルナ・・!」

「お母様!! 死刑!! 死刑にしてください!! この男を!!」


 もうそれはギャンギャン喚く


「死刑!! 死刑いいいいいい!!!」


 ・・この女、ほんと無理。


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