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僕が主人公だったら

 

 これはあくまで仮定の話だが。

 もし僕が何かの物語の主人公だとしよう。いや、これはあくまで仮定だ。僕に主人公なんて大役巡ってくるわけはないんだけど、そうなった場合ヒロインってどんな子だと思う?


 僕はさやっぱおとぎ話とかでの鉄板お姫様だって思うわけ。


 ね?


 だってそうじゃん?

 お姫様だよ?絶対可愛いじゃん、なんかキラキラしてそうじゃん顔の周りとか目の中にお星さまとかありそうじゃん?もうお姫様ってだけでヒロインになるわけよ?だけどさ


「私はこの方は死刑だと思うのだけど」


 僕の物語に出てきたお姫様は僕を死刑にしようとしていた。


 ここは王宮、王の玉座の間。

 大掛かりな部屋の装飾品と繊細な壁一面の堀模様、神々しきかな玉座の間。

 背もたれがその大きな玉座の間の天井に向かって伸びていて金銀で彩られた仰々しきその椅子に王は腰を据えていた。その横に僕のゲロを全身で受け止めたお姫様が腕を組み僕を見下ろす。


 僕は鉄の首輪をつけられる身体中の首が付く部分に全て枷をかけられてちょんと両膝をつけ地面にこうべを垂れていた。ちなみに乳首には枷はない。


 ちくしょおおおお!

 あの偽幼女おおお!


 僕は僕を見捨てたあの偽幼女とドM刺青野郎を心底怨んでいた。


「面をあげよ」


 重々しい空気の中王の一声で僕はそっと顔を上げた。


「ふむ、自分がなにをしたかはわかっておるな?若者」


 あなたの娘に嘔吐しました。はい。

 僕は心の中でそう答えたがそれを口にすることはなかった。


「お父様!早く死刑よ!死刑にして!死刑じゃなきゃやだああ!」


 うぜええええええ

 このお姫様、とんだわがまま娘だよ!

 絶対ヒロインじゃないよ!

 降格!即降格!!

 僕は下唇を噛んでまたこうべを垂れる。こんな恨めしい顔を向けてしまってはすぐにでも死刑にされかねない。


「またれよおお!」


 僕がそんなこんなで絶望の中にも生まれてくる憎悪の気持ちを抑えていると後ろで扉がばんっと開かれ大声が轟いた。


「誰だ?! 無礼者!! ここは玉座の間だぞ!!」


 護衛の兵士がわらわらとその大声の方に戦闘態勢をとりながら叫んでいる。


 あの声は・・・


 僕は声のする方を見る


「その判決またれよおおお!」


 そこにはちっちゃなちっちゃな女の子。赤毛の憎らしいあいつ、その横には刺青野郎のドM野郎。


「・・・お前ら・・」


 僕はほんのちょっとだけ嬉しかった。

 ほんのちょっとだけ。なぁ、そこにいるってことは僕を助けに来たって思っていいんだよな?僕、おこがましいかもしれないけど頬が緩みそうだ。

 そして、赤毛の憎らしい幼女ことムシカはズカズカと玉座の間に歩いてくる。ドM野郎ことプラモもそれに続く。


 お前ら・・お前らまじかっこいいよ・・

 僕は目が潤むのを感じる。偉大な王を前にして幾人もの重厚な兵士を前にして身じろぎひとつせず突き進んでくる二人はまるで英雄のようだった。


「誰じゃお主ら」


 王は依然と声色を変えることなくムシカ達に問う。


「妾が誰かなぞ今はどうでも良いこと!その男は冤罪じゃ!」


 おぉ・・!!

 ムシカ・・!!


「ほう、冤罪とは?」


 王が聞く、兵士達がやんややんやと何かを言っていたが王がムシカに問うと玉座の間はしんっと静まり返った。


「其奴は好きでそこの女にげろったのではない!」


 ・・・・・。

 あれ。どうしよう・・なんか僕こいつに任せちゃいけない気がする・・・


「女?! 私は姫よ!ここの王の娘よ?!」

「うるさいのぅ、乳臭いから少し黙っとれ!」


 いや、あんたが黙ってぇ?!

 あんたが口閉じて?!

 お願いだからぁあ!!


「ちっ!? 乳臭い?!」


 フェルナ姫は驚いたような声を上げる

 やめてくれやめてくれやめてくれやめてくれ!

 僕の立ち位置をもっと悪くしていくのやめてくれぇえ!!


「大体その女が悪いのじゃ、急にぶつかってきおってからにゲロ吐かれたって仕方ないじゃろ。常識知らないのか?街で人にぶつかったら大体ゲロ吐かれるか唾はかれるって知らんのか?えぇ?箱入り娘か?ゲロ吐かれたくなかったら箱の中に黙って入っとけばよかったじゃろ!」


 やぁめぇてぇえええ・・・・


「無礼者ぉお!」


 フェルナ姫が玉座から階段をかつかつと降りてくる僕は俯いていた顔をバッと起こしてフェルナ姫をみる。うわ!まじか!すごい形相で歩いてくるフェルナ姫に僕は目を丸くする。


「なんじゃー!妾になんか文句かー!」


 ムシカぁあ!

 フェルナはずんずんとムシカに向かっていく兵士達が止めようとするがフェルナ姫が大声で叫び散らかす『私の行く手を妨げれば死刑よおお!』兵士は死刑の言葉にその場に立ち止まりフェルナ姫を見守り出す。いや、どんなお姫様だよ?!


「この子娘ぇ!」

「妾はボインじゃ!」


 僕は二人の行く末を唖然として見守る。その時僕はムシカの手に視線が移る。まてよ、そんな、まさか。


 なんであいつ手袋してないんだ・・・


「喰らいなさい!鉄拳『姫の裁き』!!」


 パチィィイン!!!

 姫の裁きと言う名のビンタがムシカを襲い音がなる。

 あぇ?! ただのビンタですよねぇええ?!

 僕は心の中で突っ込みながらさらに目を見開く、フェルナ姫の手をムシカが素手で受け止めているではないか!?


「ムシカ!!」


 僕は叫んだ

 なにしてるんだ!!?僕はパクパクと顔を引きつらせ目をひん剥いた。プラモもその二人の光景にあっといきをのんでいる。状況をしらない王と兵士たちはただただわがままなお姫様が幼い女の子に強烈な平手打ちを食らわせたとしか思っていないだろう。

 そして案の定フェルナ姫はムシカの手の平に触れた瞬間こてんっとその場に倒れてしまった。


 ま・・まさか・・


 僕は冷や汗が顎に伝うのを感じながら人生で初めてかってくらい僕の脳をフル回転させる。

 つまりあいつは呪いをわざと姫にかけて僕に救わせようとしているのか?! そうすれば姫の命を救う僕はとんだ英雄じゃないか?! 死刑なんで帳消しになるかもしれない!でも!ムシカは?!そんなことしたらあいつはどうなるんだ・・・!?


「あ、しまった。ゲロついてたから手袋捨てたんじゃった。すまーん、この女死んだぞー」


 あのガキィィいいい!!!!!??




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