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王都で嘔吐。

 


 世界の真ん中にある大大陸『ゴットオブザランド』そこは世界の中枢にして神の土地。『ゴットオブザランド』の真ん中には大きな穴が空いていると言う。そこにはパイ生地のように層が100できておりその一番下にたどり着いたものに神は誰もが羨む褒美を与えると言った。早速、全世界のツワモノたちが『ゴットオブザランド』に集まり『ワールドダンジョン』へと赴く。だが、世界に神のダンジョンが現れてから1000年と少し、誰もまだ100階層には辿り着かずにいた。


 そして僕は今『ゴットオブザランド』の一番の大国王都『ピラノ』に来ていた。

『ピラノ』はこの大大陸の中で一番の発展国。世界の全てがここに集まっていると言っても過言ではないだろう。


「ほう。なんとまぁここまで発展していたとはなピラノ」


 僕の服の裾を握りながらよちよちと歩く偽幼女ムシカ。


「うわあ、人ばかりで吐きそうだ」


 人間より人外、二足歩行より四足歩行の生き物が好きなドMなプラモ


「本当だな、さっさと王都に向かって用事を済まそう」


 そしてそんな幼女にダンジョン攻略を依頼された童貞を拗らせた僕はピラノの大通りを人混みの間をぬって王宮に向かった。人混みが苦手なのはプラモだけでなく僕もだ。もちろん顔はいささか険しくなる。ムシカは全く平気なようで小さい足をペタペタと動かして僕の後を付いてきている。


「のう!のう!」


 ムシカに呼ばれ僕は彼女を見ずに返す


「なんだ?」

「こんな人混みでは小さき妾がとても不便、肩車を所望する」


 そう、最近のムシカは肩車が大好き。もう何かあれば肩車しろ肩車しろとうるさいのだ。


「え、俺がしようか?ムシカちゃん」


 プラモは可愛いものが大好き。ムシカが可愛いかどうかは置いといてプラモはムシカに触りたい。


「嫌じゃ!お前のような変態チキショウに妾は身体を許したりはしない!!」


 ちなみにムシカはプラモが嫌い。と言うか下心が見え見えなプラモがどうも生理的に受け付けないらしい。僕は残念ながらこんな幼女にときめいたりなんかしない。胸なんかないし全身乳臭いしぺったんこちょんちょんに僕のこの童貞マイハートはくすぐられたりはしない。


「黙って地面這いつくばってろ畜生幼女」


 僕はムシカを冷たくあしらう。


「貴様ぁあ!! 妾が下手に出ておればぁぁ!!」


 いつ下手に出たんだこの幼女・・・

 僕足をゲシゲシと蹴り出すが幼女の蹴りなどバルクックに撫でられているようなものだ。僕らが王宮を目指していると王都の兵士がガシャガシャと鎧を鳴らしながら向かってきていた。


「なんだ?兵士があんなに慌てて」


 僕は兵士たちを遠目に眺めなふがら呟く


「どけどけー!! 邪魔だ!邪魔だ!」


 兵士たちは進行方向にいる人々を押しのけて大通りを走っている。どうやら余程のことらしい。


「ありゃ、噂は本当だったのか」


 隣にいた街人が言う。


「何かあったのか?」


 僕は気になってその街人に尋ねる。その男は急に声をかけられてびっくりしたようだったがすぐに話だした。


「なんでも噂じゃピラノ王の娘『フェルナ様』が王宮から逃げ出したそうさ」

「フェルナ?っていうと確か継承権二位の?」

「そうそう、なんでもわがままでじっとできなくて人の話を聞かないって有名なのさ」

「へぇ・・」


 たくさんの兵士が鎧をガチャガチャと音を立てながら大通りから色んな小道に分かれていく、だが誰一人として住人やその場にいた人に話を聞くそぶりはない。


「兵士は人探しなのに誰も何も聞かないんだな?」

「フェルナ様は王族特有の目の色をされてらっしゃるからな、聞かずとも見れば一目でわかるだろう。それにこれはただの噂、兵士が聞いたりなんかして本当に姫様が逃げ出したなんて話が広まってみろ、そんなの悪い奴らに餌を与えるようなもんさ」


 ふーん。あくまで秘密裏ってことか・・


「のう!のう!」

「なんだよ」


 ムシカがなおも僕の足を蹴りながら聞いてくる


「どうした?何があったのだ!」


 ムシカは足元でぴょんぴょん跳ねながら聞く。兵士に道を開けていく人々の群れで兵士の姿がムシカには見えないのだろう。僕はため息交じりにムシカを抱き上げ肩車をしてあげた


「ふぉおおおおっ!!!」


 肩車するとムシカは変な雄叫びをあげる。


「なんじゃあやつらは?」

「王宮の兵士だよ」

「なんとも無礼な輩じゃの!妾の進む道を妨げよって」


 のデカすぎる態度に僕は、『ははは』とから笑いをする。まぁ、本当にお姫様が逃げ出したかも定かだし?僕には関係ないか。とりあえず僕は王宮に向かおうと足を進めた。


「おい、もういいだろう!降りろよ」


 僕がムシカにいう


「嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃーーー!!!」


 そういって僕の両頬をそのちっさい太ももでがっしりとつかんで大声を上げる


「いででデデデ!!」

「ムシカ可愛い・・・」


 痛がる僕と羨ましがるプラモ、僕は乳臭いムシカの太ももでがんじがらめにされたまま街を歩いた。


「か、顔が・・歪む・・」

「安心せい、貴様の顔は少し歪んでも大して変化はない!!」


 このガキぃいい!!!!


「ムシカ、俺の顔ならいくらでも潰していいからこっちおいでよ」

「きっっっしょく悪いのう!!!」


 もういい、とりあえず進もう。

 と、大通りは兵士でごった返していたので人混みがまだ少ない裏道に足を進めた時だった。

 その大通りから人が現れてドンっとぶつかる。


「きゃっ」

「ぬぅ!」

「お・・ぶぅっ!!!」


 ぶつかった衝撃でムシカが大きく身を反らし僕の髪を引っ張るさらに落ちないようにと僕の顔にしがみつこうとしたそのムシカの小さい手が僕の口内に突っ込まれ僕は喉元までムシカの手を突っ込まれることとなった。

 のどびこまで突っ込まれたムシカの指が僕の胃の中のものを押し上げる。


「おおおげぇぇぇぇぇぇーーー」


 そして僕は胃の内容物を大噴射するという荒技を行なった。

 ビチャビチャビチャーーーー

 内容物は宙を舞いキラキラと輝いてぶつかってきた人物に降り注ぐ


「おぎゃあああああああ」

「きやああああああ!!」


 ムシカの叫び声と汚物を降り注がれたぶつかった人間の声を聞きながら僕は尚も胃の内容物をまき散らかした。

 僕は涙目になって全てを出し終えた後、目の前の人物になんて謝ろうと考えて俯いていたムシカはまだ僕の肩にまたがっている、このガキ絶対許さない。


「あの・・その・・」


 僕が相手の顔も(どのくらい胃の内容物がかかっているか見たくなくて)見れないまま謝ろうとした時だった。


「ひ!! 姫様!! 姫様ぁああ!!! そいつを捕まえろぉおお!! 捕まえろ!!!」

「・・・・え」


 兵士たちのガチャガチャとした鎧の音が一斉に僕に向かってきた。

 ひ・・姫・・姫・・姫様あああ!!!!!?

 僕がバッと顔を上げて目の前の人物を見るとそこには僕の身体の栄養になるために溶解されていた液体を全身に浴びて白目をむいて倒れている『フェルナ』姫らしき個体が・・・


「この野郎!! なんてことを!! こんな腐臭初めてだ!! どんな毒を使いやがった!!」

「え、いや・・あの」


 僕は弁明することも叶わず殴られ縄に縛られズルズルと兵士に運ばれていく


「ま・・待って!! 待ってください!!」

「黙れ!! お前は国家の敵だ!!」


 口々に兵士に罵倒されながらまるで見世物のように僕は縄に四肢を縛られ地面をズルズルと引っ張られていく。さらに僕は目を見開いた、そんな僕をまるで可哀想なものを見るような顔で見ているあいつらを。


「さよなら・・童貞・・」

「ボレロ・・・」


 僕はあらん限りに叫んだ。


「助けろぉおおお!!!」










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