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その眼に映るのは

作者: Alrequin

読んでくれてありがとうございます<(_ _)>

 

「行ってきまーす。」

 爽やかな朝日が目に染みる。

 夏休みに引っ越して新学期の今日から新しい学校へ行くボクの心はワクワクといった明るいものではなく『あぁ、今度は気を付けよう』といった感じだろうか。


 ボクが気を付けないといけない事とは

(ぼん)、ちり紙は持ったか?』

 この幽霊の存在だ。


「はぁ…、姫さん

 今はティッシュとかポケットティッシュっていうんですよ。

 というか、(ぼん)じゃなくて士郎(しろう)って名前があるんですからそっちで呼んでって前から言ってるじゃないですか!」

 この幽霊は通称《姫さん》。

 ボクの家系に取り付いていて、ボクから見て果てしなく遠いご先祖様に当たる人だ。なんでも元々は戦国時代の位の高い家の末っ子だったらしいけど大恋愛の末に家出してボクの先祖と一緒になったそうだ。


『むっ!?

 またあの宿敵の猫がおるぞ!!

 今日こそは奴に引導渡してやろう!」


 今はボクに取り付いているのはある事が原因で姫さんは生前呪われボクの家の血筋から離れなくなったから。ただ、相性というかオカルト的なモノが見える体質の人じゃないとダメらしく普段は眠っている状態になっているそうだ。ちなみに前回起きたのは50年前で所々言い方や名前が古臭い。


「ナーーオ!

 ナーーーーーーーーオ!!!! 」

『くぬ!

 くぬくぬ!!

 はぁはぁ…

 お主相変わらずやりおるの…。』

 今、ボクの前で繰り広げられているのは姫さんが猫の頭を撫でようとして猫がそれを嫌がるように右へ左へと避けている攻防戦だ。

 悲しいことにボクや姫さんが近づくと猫や犬は基本警戒してくる。触ろうとすると全力で威嚇もされるからなんか電波や嫌いな匂いが出ているのだろうと思うのだけど、姫さんは諦めずに頭を撫でようとここ最近毎日攻防を繰り広げボロボロになっている。

 幽霊だからそもそも汚れるとか関係ないハズなのにご丁寧に生きている人と同じようにしている。

 本人はそっちの方が面白いと笑っていたけどまったく理解できない…。



 =================


「ふぅ、緊張した。」

 一通り自己紹介が終わりボクは教室の一番後ろの空いている席に座った。


「初めましてだね。

 わたし、桜子!

 よろしくね?」

 座った途端、目の前の人が自己紹介してきた。


「あ、えっとさっき紹介された山宮士郎(やまみやしろう)です。

 桜子さん、よろしくお願いします。」


「やだ!?

 なんか優等生?

 そんな固くなんないで普通に呼び捨てでいいから!」


「え、じ、じゃぁ

 その、さ、桜子…さん。」

 ボクは自慢じゃないが女の子とほとんど話したことが無い。

 日常的に会話するのは家族かコンビニやスーパーの店員さん位なものだ。


「ん~。

 まぁ、いきなり仲良くは無理だよね。

 とりあえずよろしくね。士郎君。」



『お?

 (ぼん)、惚れたか?

 これは社交辞令だから惚れてはならんぞ?』

 ニヤニヤと意地悪そうな顔でこちらをからかってくる姫さんの顔にパイをぶつけたい気持ちになったのはきっとボクだけじゃないハズだ。きっと、先祖の中に今のボクと同じような気持ちになった人が居る!

 それくらい、姫さんはボクの気持ちを逆なでにしていた。


「これでホームルームを終わります。」

 先生の声で気づいたけど何にも聞いていなかった…。

 重要な事が無いか響子さんに聞いておこう。



 それから、特に困ることも無く放課後まで過ごせた。

 姫さんはだいたい一時間に一回はこっちをからかってきたけどそれはもう慣れて日常と変わらないから気にしない。


「ほら、行こうよ!

 案内してあげるから。」

 今は桜子さんが学校を案内してくれると提案してくれたのでお願いした。事前説明の時に一回案内されたけどもううろ覚えだしね。



「ここが理科室と準備室。

 準備室にはいろいろあるんだよ~。

 良く分からない剥製とか人体模型とかホルマリン漬けも!

 よし、次ね!」

 その後もどうでもいい情報と一緒に桜子さんは丁寧に色んな所を案内してくれた。



「最後はあんまり近づきたくないけど…。

 ここは別棟の音楽室だよ。

 ここって変な噂とかあるから来たくないけど、授業はここでやるから。」


 ──カラーン──

 話していると音楽室の中で何か軽いモノが落ちた音がした。


「ひっ!?」

(ぼん)。』

「ん?」

 三者三様の反応を示していると桜子さんがぺたんと座り込んでしまった。


「やだよぉ~。

 もうやだぁ~。ヒック

 なんで私だけこんな目に遭うの~。グズッ」

 いきなり桜子さんは泣きだした。

 まるで今まで気を張っていたけどその糸が切れてしまったみたいに泣きじゃくっている。


(ぼん)

 妙な気配を感じるから気を付け。』

 姫さんも緊張している。

 姫さんが緊張しているということはかなりヤバい存在がいるってことであり今まさに逃げた方が良いということだ。

 一人ならさっさと逃げたけど桜子さんがいる以上逃げられない。


「桜子さん、大丈夫だよ!

 たまたま部屋の中で何かが落ちただけだろうし。」


「ち…。ヒッグ

 ちがうぅ~。

 ここ幽霊が出るのぉ。」

 幽霊ならすでにここに居ますが…。


「大丈夫だって!

 ほら、汚れるから早く行こう?」

 ボクが手を取り立たせようとするがどうやら腰が抜けたみたいで足が動かない。


(ぼん)。すまん。

 もう手遅れじゃった。』

 姫さんが謝ったと同時に空気が変わった。


 生暖かい梅雨の日のような淀んだ空気がボクらを包み始め、臭いがし始めた。

 臭いとしか言えない匂いは桜子さんも分かるようで泣き顔のままキョロキョロと落ち着かないまま視線を巡らす。


「桜子さん。

 大丈夫だよ。

 安心していいからね?」

 こういう時、見えない人には何を言っても駄目だ。

 見えないというのは根本的な恐怖を煽るものだから下手に慰めてもパニックを起こすだけ…。

 あの時もそうだったから今度は間違えない!


「なに…?

 何が起きてるのっ!?」


「落ち着いて。

 ほら、深呼吸して。



 姫さん、少しの間お願い。」


「ふむ、任せよ。

 (ぼん)、お主も気を付けよ。」


「えっ!?

 女の人!?!?

 え? えっ??」

 桜子さんはいきなり見えた姫さんに驚き、恐怖が消えたらしい。姫さん、外見だけなら十人中十人が二度見して全員が見た後でスマホで誰かに見せようとするくらいの魅了というかフェロモンみたいなのを振りまいてると思う。

 きっと、姫さんの前世は蛾だ。フェロモンで雄を呼ぶ蛾だと思う。


「行ってきます。」

 一言呟いてボクは人気のない方へと歩き出す。

 後ろで桜子さんが呼んだ声が聞こえたけど気にせず進み少し広い処に出た。



 ──カラーン──

 今度も同じような音が聞こえた。

 それはボクの後ろから


 ──ガン!──

 振り向くと同時に何かに首を絞められボクの身体は宙づりになった。


「ぐっ!

 ふぁ…なふぇ!!」



 ボクの家系は代々姫さんと共に在った。

 そのせいか姫さんと言葉を交わせる力の強い者達はそれぞれ不思議な力に目覚めていた。

 言葉だけでオカルト的な者達を縛れる人や憑りつかれたのを祓える人など。


 その中でもボクはさらに異色の存在何だと思う。



 ──ギイイィィィィィィィィィィィィィ!!──


「痛い?

 そりゃ痛いよね。

 なんたって意識があるまま()()()()なんてそうそう経験することじゃないからね。


 …それにしてもすごく臭い。

 あと不味い。」



 ボクの能力は彼方の住人を問わず全て食せること。



 ただ、幽霊は味がスカスカで水につけたラップを噛んだような歯ごたえの無さだし低級の妖怪変化はどれもこれも臭い上に吐き気がするほど不味い。

 美味しいと思って噛みついたら実は腐ってた的な絶望を味わう味がほとんどだ。




「ボクは思うんだ。

 お前は中濃ソースを掛ければ少しはマシになりそうだって。


 まぁ、相手を見ないで喧嘩を売ったんだから食われてもしょうがないよね。

 とりあえず食べるから言ってあげるよ。


『イタダキマス。』」



 ──ゴリッ! グチュ!! ミヂミヂッ! ブツン!!──


「はぁ、やっぱり美味しくない…

 でも低級じゃなくて中級ってところかな。

 こんなのと対峙したら姫さんはすぐにやられちゃうね。」


「なんなの…?」

 どうやら、桜子さんがこっちに来てしまったらしい。

 これで姫さんと妖怪変化を食べた所の両方を見られた…。


 また転校かな…。


「ボクは化け物さ。

 キミも見ただろ?


 幽霊に取りつかれてお化けを食べる気持ち悪い存在だよ。」

 どうせ、一人の声だけならその内黙殺されるか変人として無視されるだろうからほっといてもいいや…。


(ぼん)

 すまなんだ。

 童を止めきれんかった…。』

 見た目20代の女性が申し訳なさそうに頭を下げてこられるとなんか罪悪感が半端ない。これは何時だったかの正月にボクの取っておいた最後のお餅を勝手に食べて一ヵ月口をきかなかった時の謝罪と同じ顔だ。つまり、心底謝っている顔ってことだ。


「大丈夫だよ。

 姫さんの力じゃ抑えられないって思ってたから。

 それより、帰ろうよ。

 もう疲れたし。


 …桜子さん、噂は好きに流せばいい。

 ボクは気にしない。」



「……ッ。

 待って!


 さっきの女の人に聞いたんだ。

 その色々と普通の人とは違うから安易に踏み込むなって。


 あのね…

 えっと、その、、

 あ、ありがとうね!

 助けてくれたんだよね?

 士郎君が奥へ行ったら気持ち悪い空気も消えたから、

 それから、えっと…、、、」


「良いよ。桜子さん。

 そんな無理に出さなくてもボクは特に何とも思ってないし。」


「で、でもっ!

 なんか泣きそうなんだもん!

 士郎君、家の弟が我慢してる時と同じ顔してるから…。

 私なら大丈夫だから!


 正直、怖いのすっっっっっごい嫌いだけど!

 士郎君は怖くないからっ!

 さっきの女の人もカッコよかったし!


 上手く言えないけど、明日も待ってるから!

 じゃぁね!!」

 言うだけ言った桜子さんは全力で昇降口へ走っていった。


『むむむっ!

 何ということじゃ!!!』

 となりで幽霊が大げさな反応をしている。

 こういう時、反応しないとずっと同じことを続けることを経験上知っているボクは仕方なく尋ねた。


「何をそんなに慌てているんですか?」


『うむっ!


 え~っと、確かこういう時は、

「臭い!

 これは恋愛臭という奴じゃ!

 甘い臭いで口から砂糖が生まれそうじゃ!」じゃったな。』

 どこぞのテレビのセリフを言えてご満悦なのかむふー!と鼻の穴を広げたドヤ顔を見せつけられてボクの心はずっしりと重りが出来たような疲労感に襲われた。



 次の日。

「おはよう。」


「お、おはよう士郎君!」

 寝て起きれば収まっているかと思ったけど、ものすごく挙動不審だった…。


 まだ、話したことのないクラスメイトの視線がボクの全身へ突き刺さる。


「みんなおはよう。」


「おう!」

「おはよう転校生。」

「なんか桜子変じゃね?」

「昨日、転校生と一緒だったらしいぞ?」

 噂が広がっているじゃん…。



 結局、その日は桜子さんの様子がおかしいままだった。


「あのさ!」


 放課後になり、桜子さんに呼ばれた。


「何?

 どうかしたの?」


「あのね…、

 昨日の事なんだけどさ、、、


 あれって幽霊とか妖怪なの?

 私には何も見えなかったけど叫び声みたいな音が聞こえたの。

 ガラスを擦ったみたいな嫌な音だったけど、今思えば叫び声だったのかなって思って。」


「待って!

 声が聞こえた!?

 そんな事あるわけない!

 今までも聞こえていた?

 何かを見たことは??」

 ありえない…。

 あの時、具現化した姫さんが見えたなら問題ないけどあの妖怪変化の声が聞こえるなんてまるで()()()()()()()()()()()()()()()


 …しまった!

 すでにアイツは根を張り巡らせていたのか!

 だとしたら、中級のわりに妙に不味かったのも納得できる。

 ボクが遭遇したのはすでに抜け殻だったんだ!

 最悪の状況かもしれない…。

 こういう時に限って姫さんは家で調べものしてるし。



「ごめん!

 ちょっと用事思い出したから帰るねっ!

 桜子さんも急いで帰って!

 また明日!!」


 急いで家へ戻ると

(ぼん)

 あれは囮だ!

 本体は別にあるぞ!』

 姫さんが目の前に現れた。



「わかってるよ。

 さっきボクも気づいたから。

 姫さん、アイツはすぐに動くかな?」


『分からんとしか言いようがないの。

 ワシも古くからおるが最近の若いのは知らぬ。

 明日、確認した方が良い。

 今から行っても相手の土俵ゆえ勝てぬだろう。』


 モヤモヤとしながら夕飯を食べていた時

「士郎、警察が来ててクラスの子がいなくなっちゃったって!」

 ばあちゃんが慌ててリビングにやってきた。


 玄関にいた警察に話をすると桜子さんが帰っておらず行方が分からなくなっているとのことだった。



(ぼん)、これは挑発されているぞ。


 やってくれるのぉ…。

 この神喰らいの山姫様を挑発してくるとは猪口才な青二才がぁ!』

 姫さんが怒っている。

 何時も側にいるしずいぶん久しぶりな事で忘れていたけど姫さんはその辺の妖怪変化が太刀打ちできないくらい強力な呪いをその身に宿しているんだった。それこそ祭られている神様じゃなきゃ太刀打ち出来ない程のものを…

 いざとなれば姫さんは自分の一部を食わせて呪い殺そうとするだろう。

 そんなことさせるのは嫌だからさせないけど。


「姫さん、行こうか。

 どうやらアイツは人質を取ってこっちをコケにしているらしいからとことんやらないと。」


 ボクは非力で姫さんも戦う術を持たないけど二人が居れば妖怪変化の一つくらいは倒せる。



 =================


 夜の校舎は怖い…。

 妖怪変化や幽霊が見えるからと言ってそれは変わらないことだ。目の前を血まみれの人が歩いていたり明らかに首が折れて死んでいるような人が見えていたらそんなの関係なく怖いだろう。ボクには死んだ当時の姿で見えるせいで余計に生々しくて怖いんだ。


『あらぁ?

 ずいぶん不思議なお客さんじゃない?』

 女子トイレの前を通り過ぎようとしたらいきなり壁から女の子が生えてきた。


「うひゃあぁ!?」

 いきなり来られたらビックリするんだから止めてほしい。


『ふむ?

 お主、ここを縄張りとするモノか?』

 姫さんは着物のまま胡坐をかきながら女の子の霊と話している。


『これはこれは…

 失礼しましたわ。

 わたくしは《トイレの花子》と呼ばれている者でございます。

 まさか、有名な神喰いにお会いするとは思いませんでした。』

 姫さんが自己紹介をすると女の子の霊はかしこまりながらそう言った。


「は?

 花子さん?

 あの有名な!?」

 ボクが驚くのも無理はないだろう…。


 だって、ボクの目の前に居るのは金髪で縦ロールの明らかに中世の貴族みたいな服の女の子だったのだから…。


『あ、この恰好ですか?

 実はこすぷれというものにハマっちゃって…///

 最近は悪役令嬢のロールがブームでして…アハハ

 よっこいしょっと』

 普通にかつらを脱ぐとそこには綺麗な黒髪の女の子がいた。

 てか、最近の妖怪変化ってずいぶん現代じみているんだ…

 カラコンをはめて金髪のかつらをかぶるとは恐れ入った。


『ふむ…。

 楽しそうだの。

 ワシも出来るだろうか?』

 姫さんは姫さんで完全に目的を忘れてコスプレに目を輝かせている。


『出来ますよ!

 最近、友達になった《八ッちゃん》って子は清楚な白いワンピースだったんですけど地味だから戦隊物の悪の女幹部のこすぷれさせたらおっぱい大きいからものすごく似合ってて。


 ずるいですよね~…。

 私なんてもう絶対おっぱい大きいから肩凝ったとか言えないのに…。

 今度会ったらもぎ取ってみようかな。』

 花子さんは慎ましい身体にコンプレックスがあるようでしきりに友達の胸について熱く語ってそのまま落ち込んでいた。


「あの、聞きたい事があるんですけど…!」


『え?

 あ、ごめんごめん。

 なんだっけ?』


「音楽室の妖怪変化に付いてです。」


『あ~

 あの陰険やろうのこと?

 まさか、また子供を襲ったの?

 懲りないわね~』

 呆れながら花子さんは語った内容はこうだった。


 音楽室の妖怪変化は元々はベートーベンの絵を媒介にした睨みつけるだけのモノだったが何時の頃からか人を襲うという噂が出回りそれに合わせて妖怪変化も変化したという話だった。しかし、急激に変化したせいで人を催眠状態で攫うことは出来ても直接害を及ぼすことは出来ない。

 なにより、学校を縄張りにしている妖怪変化は子供の念や噂を元に存在しているので傷つけることはありえないということ。


 花子さんは静かに話す。

『私達は子供の噂によって形作られていますから驚かしたり追いかけたりはしますが絶対に危害は加えないのです。

 そんなことをしたら他の妖怪変化から非難されてしまいますから。しかし、噂を元にしている者達はたまに自分でもどうしようもない変化をしてしまう時があるので恨まないでくださいね?

 ただ、音楽室の奴は元からクソなのでどうぞ食べちゃってください!

 個人的には毛が生えてない男の子とか大好きですし…///』

 最後の一言で花子さんからただの花子さん(変態)へと認識が変わった…。

 男子トイレであったら噛みつこう…




 音楽室へ着いて扉を開けようとするも


 ──ガチャガチャ!──


 ノブが回らない。

 鍵がかかっているのではなく反対側から強くノブを握りしめられているような感触だった。


「だめだ。

 開かないよ。姫さん」


『これはこまったのぉ…。

 ワシは扉を開けることなど出来ぬぞ…』

 姫さんもボクも扉を壊すようなことは出来ないしどうすればいいんだ。


『ここはワタクシの出番かしら?』

 声が聞こえたので振り向くと二メートル以上ある女の人が立っていた。


『なんか、衣装交換に来たら花ちゃんが男の子が困ってるからって言ってたから来たんだけど、この扉を開ければいいんでしょ?』


 ──ビギンッ!──

 女の人がドアノブを力任せに握りしめ捻るとノブから嫌な音がしてノブが取れた。


『お礼は今度で良いからねぇ~。』

 女の人は壊れたノブを持ったまま手を振り夜の校舎に消えていった。


「…何だったんだろう?」

 ボクも姫さんもあっけに取られたまま女の人を見送ったがハッと気づいて音楽室へ入った。


「いたっ!」

『こっちも見つけたぞ。(ぼん)

 今回は間違いなく本体だろう。

 ワシをバカにしくさった報いは受けてもらうぞ!』

 お互いに妖怪変化と桜子さんを見つけ駆け寄る。


 ボクは気絶した桜子さんを外へ運び、姫さんは妖怪変化をけん制している。


「よしっ!」

 外へ運び出して戻ろうとすると


『ぐあぁ!?

 イタタタ…

 なんと情けない。

 ワシが若造に競り負けるとはっ!』

 姫さんが吹っ飛んできた。


「姫さん!

 大丈夫!?」


『抜かったな。

 いくら今の無力な状態でも若いのには負けんと意地を張ってしもうたわ!』


「協力してよ。

 アイツは今度こそ食い尽くすから。」


『全く、おのこな顔をしおってからに。

 しっかり隙を狙うんだぞ! (ぼん)!』


『こっちじゃ!

 若造がっ!』

 姫さんがアイツの目を塞ぎその隙にボクが視線の外へ逃れる。


 妖怪変化も暴走しているのか知能が動物並みになっていて簡単に挑発に乗って姫さんの方へ向かっていった。


 ──キィキャアアァァァァァァァ!──


 耳障りな叫び声をあげて姫さんへ突進するが姫さんはするりと避け妖怪変化は壁にぶつかる。


『今じゃっ!』

 姫さんの合図と共にボクは後ろから妖怪変化の首ら辺に噛みついた。

 黒い靄のような姿のため首だろうという辺りに噛みついた。


「ほはりふぁ!(おわりだ!)」


 ──ブチン!──

 噛みついた部分を噛み千切りそのまま本能のままに妖怪変化を食べていく。


 ──ブチブチブチ!──

 ──ガリ!ゴリ!──


「ぷはぁ~!

 ご馳走様でした。」

 一片も残さず食らいつくしボクはようやく一息ついた。


『お疲れじゃな、 (ぼん)

 さて、童をどうするかの?』

 姫さんも疲れた様子でこっちに戻ってきた。



「もう素直に警察とか呼びたいけどめんどくさそうだからここは警報鳴らそうよ。」


 学校の玄関には警報装置が付いていたのを見ていたボクはそれが簡単だと思い、桜子さんを近くまで運び


 ──ジリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!──


 けたたましい音が学校中に鳴り響く中、ボクらは警備の人が来るのを確認し急いで家に帰った。

 当然、居ないのはバレておりボクは一時間みっちりとお説教を貰った。姫さんは家に着く直前で何かを察知して逃げたけど…。



 次の日、学校へ向かうと桜子さんの話で持ち切りだった。


 曰く、誘拐されていただの妖怪の仕業だの錯綜し誰も居ないハズの学校で鳴らされた警報なんかもあって最終的に迷宮入りした。

 桜子さん本人も何も覚えておらずこの話は禁止となった。



 ボクはというと…

(ぼん)

 ワシのこの衣装どうじゃ!?』


坊様(ぼんさま)

 なぜトイレに遊びに来てくれないのですか!?』


 姫さんはコスプレにハマりなぜかトイレの花子さんは家に入り浸っている。


 花子さん曰く、『私は()()()()花子ですからトイレならどこでも行けますよ?』と当たり前のように言われしばらくはここで遊びますと宣言された。


 この眼に映るのはいつも普通の存在じゃないけどボクはそんな姫さん達が嫌いじゃない。

 いや、やっぱりうるさいから少し嫌かもしれない…。

 ボクの日常は変わっている。

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