7・魔法少女ケツデカ、りんごちゃん
ゾンビを倒した後、俺達は強奪していた。
言い方は悪いがやっている事は同じ、家に使える物がないか探している。
まぁ、ゾンビは俺達を喰おうと思っていたんだから、物を盗んでも文句はないだろう。
でも、全くない。家具とかはあるんだけど、ボロボロで使えない。
金品もない。
てか、ものすごく今更感はあるんだけど……栄養ドリンクがない。
それとレベルとかもない。
アズのペット? 眷属はいつの間にか消えていた。
家宅捜索しても、何もなかったので、集落から出ようとした時。
「あっ!? これはっ!!」
「アズ!? 大丈夫か!!」
急に荒げた声をあげたので、急いで駆け寄ってみると、何やらステッキのような物を手にしていた。
「なんだ……てっきり襲われたかと心配したよ」
「はぁ!? 何言ってんのよ! あ、あんたが何で心配するのよ、もも、もしかして好きなの? ちょ、ちょっと止めてよね、気持ちが悪い」
頬を染めながら言われてもな。
けなされているはずなのに、ツンデレの照れにしか見えないから全然傷つかない。
「ところで、それ、なんだ?」
手に持つ、謎のステッキを指さしながら言った。
「ふふふ、聞いて驚きなさい!! 魔法少女ケツデカ、りんごちゃんの特製ステッキよ!!」
誇らしげに、胸を張り、ステッキを振り回しながら叫ぶアズ。
魔法少女ケツデカか……やべぇ、ちょう見てぇ。尻フェチの俺から言わせればケツデカなんて、めちゃくちゃ興奮するじゃないか!!
戦闘後で、汗ばんで蒸れた、そのケツにダイブしてやりたいぜ!!
「その、りんごちゃんってのは何だ?」
「あんたバカぁ! りんごちゃんも知らない何て……これだから一般庶民は、あっ、あんたは別世界からきたんだっけ? まぁそれなら知らなくてもしょうがないか」
ステッキを振り回しながら説明を始めるアズ。
しかし、動くので、ドレスの裾がふわりふわりと浮き、見えるか見えないかのせとぎわなので、話は頭に入らなかった。
「?? って言うのが、りんごちゃんなわけよ! わかった?」
「ああ、もう少しでパンツが見えそうなんだ! もっと回って……はっ!?」
しまった。思わず口にしてしまった。
「きゃ!? この変態! 痴漢!」
赤面し、ドレスの裾を慌てて押さえるアズ。
そして、ステッキを振り上げた。
「ごめんっ! ホントに、だから、そのステッキで何をするか知らないが止めてくれ!!」
「うるさい黙れ! あんたなんか……あんたなんか、死んじゃえ!」
ステッキを振り下ろすと、赤い光が飛んできたの避けた。
光は木の壁に直撃! 壁をあっさり貫通し、見えなくなるまで光は飛んでいった。
「いいっ!? 何だよ今の? 殺す気か!?」
髪がうねうねとうねり、ゴゴゴゴゴゴゴって擬音が聞こえてきそうな、雰囲気のアズ。
「高貴なる血族であるヴァンパイアのパンツを見ようとした変態! 粛清してやる!!」
「待て待て!! 死ぬから、ホントに死ぬから」
「うるさい! 死んじゃえー!」
「ごめん! 悪かったからお慈悲をー!」
二時間近く追い回され、何度も土下座した結果。
許された。
◇◇◇
集落を抜けて、3日。
道中、ゾンビやら骸骨に襲われたがケツデカステッキのおかげて難なく突破。
実際ステッキ使わない方が簡単に倒せるらしいのだが、「はぁ!? そんな事もわかんないの!? ホントにバカね! だって、この方がカッコいいじゃない」だそうだ。
町に着いた。町と言っても人がほとんど住んでいない。
生き残りもごく少数らしい。
宿を借りようとしたが、そもそも人が少ないので、部屋はあまっている。
だから勝手に空き部屋を借りる事にした。宿屋の店主がいないからしょうがない。
現在は部屋の中。
8畳ほどの広さで、ベットが一つと机だけだ。
アズはベットに、俺は椅子に腰かけている。
「なぁ、ところでさ、ずっと疑問だったのだか、俺達は王を倒そうとしているんだよな?」
アズはステッキを磨いていたが、それを止め、ベットに置き、俺の方を真剣な表情で見つめる。
「えぇ、そうよ」
どことなく冷たい声色。
「王はどこにいるんだ?」
まぁ、俺は知らないしな。ナイトメアとは違う。こんな町もなかった。
てか装備もできるし、裸の王様関係ないじゃん!
木の棒はどっかに捨てたしよ。
「知らないわ」
「……はっ!? いやいや冗談だろ? 知ってるもんだと思って、進んでたんじゃないのか?」
どういうことだ?
普通さ、魔王とか倒すルートを、味方って知っているよな。
てか、ラスボスがどこにいるかって有名じゃないのか? どっかの城とかさ。
「当たり前じゃない! 王の住処を知る者なんてごくわずかよ!」
まぁそりゃそうか、現実では、自分の住処を公表するわけないよな。
「じゃあ、俺達はどこに向かっているんだ」
「……あたしが嫌いな奴のとこよ……あいつなら、王の住処を知っているかも知れないから」
なるほどな。
てかやっと冒険って感じがしてきて、興奮するな。
ほんとにやっとだよ。
ずっと、セクハラして殺されて、それを満喫しているだけだった。やっぱり異世界ってのはこうでなくちゃな。
「あとどれくらいで着くんだ?」
「……着いたわ」
「はっ!? 着いたってどういう?」
ガチャン!?
窓ガラスが割れた!
何かを投げ込まれたようだ。
しかも、投げ込まれた物から黒い煙が出てきて、部屋中を覆う。
煙だが、苦しくない。
「アズ!? 大丈夫か?」
アズは答えない。
アズに近づこうとベットに向かう。
むにゅっと何かに触れた。
何だこれ、ムニュムニュ。
「きゃ!? 誰だ! 僕のお尻を触っている奴は」
僕って言っているが女の声。
さっきお尻って聞こえた気がするが気のせいだろう。
俺はそのムニュムニュの正体を確かめるべくもみまくる。
「あぁ!? だめっ! ちょっと……やめ、あっ!?」
淫靡な声を上げ叫ぶ。
いいぞもっとだ。もっとその声を??
突然壁に吹き飛ばされた。
そして、黒い煙は消えており、アズが冷血な目を見下ろしてくる。
アズの隣には白いローブを着た、美少女がいた。
「最後に言い残す事はあるかしら」
アズの冷たい声が聞こえる。
「ごめんなさい! ごめんなさい、だって尻なんて思ってなくて、そう、アズが心配で立ち上がったら、何かがあったから調べようと」
言い訳が思いつかず、全身全霊の想いで土下座した。
「そう……死になさい」
ケツデカを俺に向けた。
そうか、ここまでか。くそっもっと尻を堪能しとけばよかったぜ。
「待って! 別に殺す事はないよ、確かにお尻揉まれたのは嫌だったけど、僕が煙幕をたかなければ、こんな事にはならなかったと思うからさ」
謎の白ローブ美少女はアズを手を掴み説得してくれた。
何ていい子や。
揉んだのを謝罪したいな。
「っち! まぁ本人がそういうなら許してあげるわ! でも、次はないから」
こええええ!
まじで殺されそうだな。
まぁ何回も殺されてきたんだけどね。
「ところであなたはベレジェンガのお友達ですか」
美少女は俺に手を差し伸べてきた。
どっかのツンデレとは大違いだな。
手を取り起き上がった。
ベレジェンガって誰だっけ……あぁ、アズの事か!
そういや、そんな名前だったな。
「俺は霧島和也、異世界からやってきた救世主さ」
そう、カッコよく名乗った。
そういうと彼女は目を輝かせながら両手を掴んできた。
「救世主様だったのですね。先ほどのご無礼お許しください。お詫びとして好きなだけお尻を触っていいですよ」
何だって!? 尻を?
しかし、アズの黒いオーラに気づき止めた。
二人っきりになったら触ろう。
「大丈夫だよ、俺の方こそ悪かったね」
「いえいえ、むしろ救世主様に触られるならご褒美ですよ。えっと、僕はフェリス・ドスドベア。気軽にフェリスとお呼び下さい」
彼女は帽子を外し頭を見せた。
そこには、ぴょっこっと耳が生えている。
髪は茶色で、目は青。端正な顔たちだ。
アズのような、大人の女みたいな香りはせず、甘く、フワッとした匂いが髪からした。
「もしかして、獣人なのか?」
「はい、獣人です」