5・高貴なる血族であるヴァンパイアがツンデレで何が悪い!!
ここはどこ? 俺はだれ?
むむむ……あれは空飛ぶパンツ!!
わあーい
ゴツン!
石に頭をぶつけて目が覚めた。
クソ良い所だったのに!!
炎の場所の周囲には、三つの道がある。
一つ目は、アズは水浴びをしていた湖っを抜ける道。
二つ目は、湖とは逆方向の森を抜ける道。
三つ目は、正面の砂利道。
どのルートにも一長一短があるらしいのだが、俺的には……是非湖のルートが良い!
水に濡れて、寒がっているアズを抱きしめ、淫靡な絡み……見せられないよ!
何て、ぐへへ!
とは言え、湖のルートが一番厄介らしい。
どうしようか?
炎の場所に留まってから二時間くらいが経過していた。
体感では何日も経過しているんだがね!
しかし、この世界の吸血鬼は変わっており、肌に潤いがあれば傷が癒えるらしい。
現に、アズは俺に引かれて、傷だらけだった身体は綺麗に治っていた。
だから水浴びをしたそうだ。
でもよぉ、潤いが欲しかったならもう少し早く言ってほしかったぜ。
そしたら俺の舌でぺろりんと潤わせてやったのによ。
そう言えば、炎の場所に来てから雨をみていない。
さっきまで、土砂降りだったのに、アズに聞いたら、さっきの場所は王の仕業でああなったって言っていた。
だから、王が降らせた雨じゃ傷が癒えなかったのだ。
てかさ、天候を操るとかさ……神じゃん!
アズの方を見る。
アズは木陰で何かを創作していた。
気になって近づいて見ると、ゾンビの爪を改造しているようだ。
「なにしているんだ?」
アズには、それはもう、ゾンビとは比べ物にならないくらい、首が一瞬でスパッと斬れるくらい、鋭い爪を持っているから、武器何ていらないんじゃないかと疑問に思う。
「べ、別にあんたのためじゃないんだからね。もし、戦闘になった時、武器無しのあんたじゃ戦力にならないから……ほら、武器を与えればあたしが楽できるじゃない! だから勘違いしないでよね! あんたが心配とかこれっぽちも思ってないし、良心で作ってるわけじゃないんだからね」
かわええ!!
なにこの子!?
やばい、まじでやばい。
これじゃわざとやっているようにしかみえない。
てかさ、天然のツンデレとかやばいわ。
何か、名前がツンデレっぽくないとか言ってすみません。
超ツンデレぽいです。
にやけそうだけど我慢。
「そっか、ありがとな」
どうだ、俺の鈍感っぷりは、ここで気づいてあたふたしても、ハーレムは作れない。
ハーレムを作るためには勘違いさせるような行動をとりながら、でも、鈍感っぽい所を残す。
これが最重要課題。
もし、失敗したら……俺の異世界子作り計画が終わってしまう。
遺伝子が人間と違うから子供は無理とかありえない!
だってここは異世界!
つまりは、オークが姫騎士を孕ませる世界だ!
だから、異種族でも子供はできる……はず。
ハーレムって言ったけど、アズ以外に美少女はいるのか……まずはそこだよね。
◇◇◇
鍵爪が完成し装着してみた。
「おお、これはいいな、めっちゃカッコいい」
手にフィットした鍵爪は長さが20センチくらいだろうか?
でも、戦闘以外は外しとかないと邪魔だな。
頬が痒くてもかけないしね。
「でしょでしょ。もっと褒めていいのよ。あとね、ここからがすごいんだから!」
アズは鍵爪の手首に巻いたバンドにある、緑色の宝石のような部分を触ると爪が引っ込んだ。
「はっ!? なんじゃこれ!? すげぇ、ほんとに凄い! アズは凄いな、尊敬するよ。ありがとな」
あきらかに、爪がひっこみ隠れるスペースはないのだけれど、異世界の謎の石の力であろう。
そう思っておこう。
アズがそっぽを向く。
「べ、べ、別に、あんたに褒めてほしかったから、頑張ったわけじゃないし、勘違いしないでよ! あたしが楽したいだけなんだからね」
「ああ、わかっているよ。でも本当に嬉しいから、ありがとね。この鍵爪アズと思って大切に扱うよ」
「ううう……バカ! 変態! 何があたしと思ってよ! もうバカ!」
アズは砂利道を駆けていく。
「あっおい待てよ!」
アズに追いつくのに半日かかったのであった。