2・神ゲー作った
俺の名前は……霧島和也、ブラックな派遣会社で働く23歳。
21時から9時までの夜勤。12時間労働。
時給1060円なのだが、派遣会社からピンハネされ、800円にまで下がっており、休むと減給1万とふざけている。
しかし……今の日本じゃまともな会社が少ない。
ここより酷い会社は沢山あるだろう。
仕事内容は食品工場だ。
毎日毎日、弁当の麺を調理する。
簡単に見えるかも知れないが、10キロから15キロくらいある、できた食品移動させたり、火傷したりする。
なので腰痛が酷い。この年で整骨院に通うとは思わなかった。
まぁ、接客業に行けばって思うかも知れないけど、コミュ障なので無理。
工場しか働き口がなかったから仕方がない。
「はぁ……今日で18連勤かぁ」
自然とため息を吐いた。
何で連勤かと言うと、正社員の奴がシフトを決めるからだ。
あいつらは、自分たちが休みたいからって派遣ばっかり辛い仕事押し付けやがって!!
なんでこんな想いしなきゃならないんだ!!
派遣ってだけでバカにされ、数合わせで参加した合コンっでは、ネタ枠としてバカにされ、親からは正社員になれって言われ……もう嫌だよ。
派遣だっていいじゃねぇかよ!
ちゃんと税金だって納めてるし、一人で暮らしてるし……
本当はわかっていた。
俺だって専門学校中退するまでは、バカにしてたさ。
◇◇◇
学生時代。
スクエアフェニックスに入社して、FFとかドラクエ(ドラゴンクエスチョン)みたいなゲームをつくりたかった。
そんな幻想を抱き、ゲーム企画を書いた。
講師に見せたらダメ出しをされ、「お前にバカにされたくねぇ」って反論し中退した。
大企業であるスクエアの求人を検索し……俺は絶望した。
募集要項には……大卒、専門卒以上。
そう書いてあった。
クソが……学歴なんて……そうだ、新卒じゃなくて中途採用もあるはずだ。
そう思い、再び検索。
見つかった。
募集要項、ゲーム開発経験5年以上。
はっ!?
ふざけるな!!
なにが5年以上だよ!!
俺が考えた企画は神企画だし、絶対FFとかドラクエの売り上げを超え、世界で100億個以上売れるゲームだぞ!!
クソっ!!
小一時間くらいムカついていたが、熱が冷めてきた。
仕方がない、別のゲーム会社探すか。
検索した。
しかし……未経験者募集の案件がない。
なぜ、世界は俺を拒む!
◇◇◇
学校を辞めて二ヶ月が経過し、ゲーム会社の求人を見始めて一ヶ月が経過していた。
ないないないない、どこにもない。
これだけ検索しても未経験がないなんて……こうなったらネットの住人に聞いてみるか。
まとめサイトでスレを建てた。
【未経験でゲームディレクターを募集してる会社教えてくれ】
コメ1
ディレクター未経験とか無理だろWWW
コメ2
ゲームの事何にもしらねぇなWWW
コメ3
ツク―ルで売れてから言え
コメ×
未経験ならデバックくらいしかないだろ
こいつら……このクソニート共が!?
働いた事ないくせに、いろいろ文句だけいいやがって、こうなりゃ俺の神企画をばらまいて、見返してやる!
主コメ
ゲーム企画公開!!
クソニート共!!
この企画を見て、まだ文句言えるか!!
後日そのスレはめちゃくちゃ盛り上がり、ニュースにまで取り上げられた。
ゲーム企画
霧島和也
タイトル
「パンツあむあむうまいお」
ゲームシステム
主人公ミミッミが街にいる女の子のパンツを喰いあさるノベルゲーム。
コンセプト
俺はシナリオ書いた事ないけど、俺が書いたら神ゲーになると思うので
プラットフォーム
スマートフォン
売れ筋
全世界の老若男女
収益方法
広告収入、乳首解禁課金1万、局部解禁5万、性行為シーン解禁15万。
◇◇◇
この企画を発表したせいで、精神病扱いを受け、できる仕事が派遣しかなくなった。
派遣社員になって、もう4年か……
嫌な記憶が蘇った。
俺の黒歴史といってもいい。
今思えば、なんであんなダメ企画をかいたんだろう。
企画書の書き方を勉強した今だからわかる。
あれは駄作だ。
講師が、映画、文学を見ろって言った理由。
ゲームプランナーはいろんな所に落ちているアイデアを探し形にする仕事。
だから、昔の俺みたいに、自分が好きな作品だけじゃなく、さまざまな分野の作品を見なきゃならない。
そんなことを今さら気づくなんてな。
人生がやり直せるなら、FFみたいな世界に行きたいぜ。
それで、最強役職に着き、異世界ハーレム完成だ。
なんてな。
もう、こんな時間か寝なきゃやばいな。
眠りにつく。
◇◇◇
夢の中でめちゃくちゃに面白そうな話を思いついた。
ゲーム企画は止めだ。
ラノベ作家になろう!!
そう思い……目を覚ますと知らない世界だ。
手には木の棒、服は真っ白ブリーフのみ。
後方には、泉がある。
んっこの風景と、この泉見覚えがあるぞ。
『太陽が黒雲で隠れ、雷雨が鳴り響く世界。
木は腐り、水は枯れ、大地が裂けた。』
何か急にモノローグが現れたぞ。
しかもこの声めちゃくちゃ人気の声優にそっくりだ。
『さぁこの世界の救世主よ!! この絶望にどう抗う!』
ナレーションが終わると地面からゾンビが現れた。
あれ?
あのゾンビってまさか?
泉周辺をよく観察すると、泉の半径3メートルの所に、目を凝らさないと見えないほど薄い膜があった。
恐る恐る手を当てると膜をすり抜けた。
身体ごと、膜の外に引っ張られるような感覚に襲われ、膜外に出る。
さっきまで無反応だった。ゾンビが気づき襲ってきた。
手に持つ武器、ボロボロの木の棒で防ごうとしたがあっさりと折れ、爪が肉を裂く。
猛烈な痛みと吐き気に襲われたが、今はここから脱出しなければ!!
腹の肉が抉れあばらが飛び出していたが、気にせず走る。
ゾンビは追ってきたが、幸いな事に足が遅かった。
朦朧とする意識の中、俺はなぜ目を覚まさないのか疑問に思う。
ゾンビからある程度離れて、先に炎が見えた。
あの炎は……そうか、ここはナイトメアの世界!!
気づいた瞬間、何者かに杭を刺され、意識を失う。
目を覚ますと泉だった。