始まりは、暖かく
「地平線の先にある世界にはきっと私たちが望んだ未来が待っているんだよね!」
「あぁ!俺たちにはまだ時間がたっぷりと残されてるんだ!まだ、まだこれからだっての!なっ!」
そう言いながら二人は両手を広げ空を見上げ、つられて僕も空を見上げてみる。と、そこには夕陽に照らされた真っ赤な空が広がる。ふわふわといつもは陽気に浮かんでいる真っ白な雲でさえもいつもの白色ではなく夕陽によって赤い服を着させてもらい嬉しいのか一段と気持ちよさそうに泳いでいる。きっと雲には嬉しい、悲しいなんて思う心なんてある訳がない。赤い服を来ているとか頭湧いているの?なに意味不明なこと言ってるの?気持ち悪い。なんて誰もが口に出さないけれどきっと思うに違いない。しかし、今楽しそうに両手を広げて気持ちよさそうに風を浴びている彼らは違う。彼らだけは、いつも僕の言葉を肯定してくれ認めてくれる。それに、こんな事を言えるのもこの二人ぐらい。あとの友人たちにはどう言う反応をされてしまうのか分かってしまうので言えない。し、言わない。
「どうした?お前も立って風を浴びろよ!すっげー気持ち良いぞ?ほら、」
「そうだよ!佐宮くんも風を感じないとねっ!ほい、」
そう言うと二人ともが片手ずつ手をさし伸ばしてくる。僕は左右に差し出された手を掴み立ちあがった瞬間に座っていた時よりも少し冷たく鋭い風が頬を撫でてくる。座っている時よりも立ち風を浴びている方が強さを感じてしまう。しかし、断然座って風を浴びるよりも気持ちがいい。二人につられるように両手を広げ赤く染まる空へと突き上げる。
「本当だ。すっごく気持ち良いね!」
だから俺の言った通りだろ?なんて自慢げに両手を組みながら浜山は頷いてくる。蒼智も優しい笑みを浮かべ、風でなびく真っ黒で綺麗な髪を押さえながら、男の友情っていいね。なんて言い二人を愛おしそうに見つめる。二人の反応に僕もどこか自然と笑みをこぼしてしまっていた。その笑みにつられるように二人も笑みを浮かべ夕陽を眺め続ける。しばらくの間、耳には心地の良い風の音だけが聞こえてくる。目を瞑り耳をすませてみると風さえも陽気に歌い笑っているように思えてくる。
「流石にそれは俺ら以外の前で口にするなよ?流石に気持ち悪いぞ?」
「へぁ!?ぼ、僕、口に出してた?!」
まぁな。なんて苦笑いを浮かべながら浜山は頷きつつも目を閉じ、しばらくした後、確かにそう言われればそうかもな!と、からかう様に言葉を向けてくる。
「んなっ!勝手に人の心を読むなよ!」
「読んでねーっての!お前が勝手に気持ちよさそうに・・・風が歌ってる・・・なんて言うからだろ!」
笑いながら浜山はわき腹を攻撃してくるためお返しにと僕もわき腹攻撃をし返していると、蒼智の笑い声が聞こえてくる。二人ともが手を止め視線を向けると優しく昔から知っている笑顔で二人に頬笑みかけ左右の手でピースサインを作り向けてくる。
「私たち・・・ずっと!ずっと!仲良しで居ようね!!」
「あったりまえだろ!俺らはずっと、大人になっても仲がいいっての!なっ!」
そう言うと浜山は僕と蒼智の肩を組んでくる。体がでかいため二人もなすがままと言う感じで掴まれてしまう。が、驚く僕とは違い蒼智は笑いながら身を預けていた。そして、二人は僕の言葉を待つようにこちらへと視線を向けてくる。僕は微笑みながら、
「当然。僕らはずっと友達だよ」
永遠に続くと思っていた青春。けれど、永遠なんて言葉はこの世界にはありはしない。あるのは永遠の時間ではなく一瞬の時間だけ。けれど、今の僕たちにはそんなこと分かるはずもなかった。いつだって大切にしなければいけなかった時間だと言うことに気が付くのはいつも、
大切な人を失った時、
なんだ。