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年上の彼を落とす方法(20のお題)  作者: 真麻一花


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1-6 この手を放したらもうあなたは自由だから


「可能性なんかないって、透君が言い切るのなら、私、透君のこと、諦めるよ。……ねえ、透君。教えて。私が恋愛対象になる可能性があるのか、ないのか」

 諦める、なんて言ったけど、本当は、あきらめたくなんてない。

 そんな私の気持ちを透君は、見抜いていたのかな。

 睨み付けるように見つめた先で、透君が目をそらした。

「……無理だ」

 やっぱり。

 泣きたい気持ちの中で、私の中に唯一浮かんだ言葉。

 透君は、なんだかんだと私に甘いから、もしかしたらって期待はあったけど。でも、夢見ただけに終わった。

「……わかった」

 泣きたかったけど、がんばって笑った。

「透君。今までありがとう。……さようなら」

「……花」

 透君が私を呼ぶ。その声は、少しだけ切なそうに響いた。

 私は応えなかった。

 そのまま背を向けようとした私の手を、透君がつかむ。

 振り払おうとした瞬間、声がした。

「花……ごめん……」

 思い詰めたような低い声は、何を意味するのだろう。

 私を傷付けたこと? それとも、応えられない事への謝罪……?

 透君は私の気持ちに応えるつもりはない。振り払う前に、私の腕をつかむ力が、するりと抜けた。

 繋がっていた温かさが、離れてゆく。

 さようなら。

 この手を放したらもうあなたは自由だから。もう、あなたを煩わせることはないから。

 こぼれそうな涙をこらえながら、私は玄関のドアを開ける。

 後ろでバタンと閉まる音がした。

 終わった。透君との関係が、全部、全部……。

 鼻の奥がつんと痛い。

 でも、分かっていたことだった。覚悟していたことだった。

 今はまだ、受け止めきれないけれど。

 こぼれそうな涙をぬぐった。持っていたバッグをぎゅっと握る。

 うつむきそうな顔をぐっと上げ、目線を上にやる。

 空は突き抜けるような青さで広がっている。

 さあ、図書館へ行こう。

 泣くのは後でいい。今は、やることがあるから。

 私は、ゆっくりと足を踏み出した。


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