第2話 3の月1日(1)
第2話 3の月1日(1)
「ゴー兄 アイさん おはよう」
翌朝起床したライトは店に顔を出す。その表情には少々寝不足ぎみな顔が見てとれる。
ゴートもアイもその表情に気づいたようだが特には声を掛けないようだ。
ライトが店に出てあたりに目をやると、店の一角には昨日までにはなかったライトの商売するスペースがあり、簡単な商売机と椅子、からっぽの木棚がある。
「その机とかは俺からの開店祝いだよ 裏の倉庫は自由に使えばいいから」
開店準備をしながらゴートがそう声をかけると、ライトは何か企んでる様だ。
(さてと、まずは商品の仕入れだな)
といってもこんな田舎町に商品を仕入れるような行商人がいつでも往来しているわけもないので、
「アイさん ちょっと手伝って」
アイがゴートの開店準備の手伝いを切り上げそばに来るとライトはアイに耳打ちする。
「ごにょごにょごにょ」
「・・・」
「アイさんお願い まだ売る商品がないんだ」
「・・・わかりました ごにょごにょごにょ」
「ありがとう」
アイが顔を若干赤くしながらライトに耳打ちすると早速ゴートのところに赴き、小声でゴートに言う。
「ゴー兄 アイさんの好みのタイプ知りたくない?」
がっとライトの肩をつかみアイのほうを気にしながら
「知りたい」
「め、目がこわいよ」
「っすまん」
「じゃあ 銅の短剣にゴー兄の店の昨日の売れ残りの ポーション30個 解毒剤・解麻痺剤・目薬10個 研磨剤3個 寝袋1つで千Gでどう?」
「売れ残りと言ってもお前 それじゃあ大赤字じゃないか 無茶言う「向かいの家の兄貴もアイさんのこと知りたがってたな~」な わかった」
ニヤニヤしながらライトが向かいの家の友人の兄貴を引き合いに出すと、すかさずゴートは承諾する。
ライトは商品を受け取り金貨1枚渡すと銀貨90枚が帰ってくる。
「おい はやく教えろ」
「焦らない、焦らない 落ち着きのない男はもてないよ」
「う・うるさい」
つかんでいる肩を大きく揺さぶるゴートにライトは、
「わかったから アイさんは男らしくて 優しい人がタイプらしいよ」
「さらに割引してくれたから特別にサービス 今度の定休日はアイさん予定ないって デートでも誘ってみたら?」
「!!!」
「まいどあり~」
短剣を腰のベルトに差し腰につけたレザーパックにポーションと各薬一個づついれ、残りはとりあえず値段はゴートの店の5%引を想定し棚に並べる。
さっそくアイさんにアプローチを始めたゴートに今日の予定を聞くと一日店に居るとのことなので、アイに想定の値段を伝え、店番を頼み店を後にする。
田舎町であるロコの町はそんなに大きな町でないので、たいした時間もかからず知人への開店の挨拶回りは済んでしまったが、元冒険者だというバクじいさんだけは
どこで何の材料が取れるとか、
ポーションのレシピはこうだとか、
近くの草原の先には小さな洞窟があるとか、
わしの若い頃はとか・・・。(話が長い)
じいさんの話も終わり昼食に店に戻ろうとしていると、町の宿屋のまえで子供に連れられた、見た目20歳前後ぐらいの黒髪の女性に会う。
その女性と目が合ったとたん、頭に今までに経験したことのない違和感を感じる。
(町人ではないよな 見たことないもんな・・・だがものすごく懐かしい感じがする)
そんなことを思いながらも頭の違和感は大きくなっていく。
「おねーちゃん あの人がライトにいちゃんだよ」
「そうなの?どうもありがとうね」
「じゃーねー」
子供たちは手を振りながら帰っていく。
子供たちを見送り振り返ると、その女性は微笑みながら、
「どう、子供時代は楽しめた?」
・・・・・
美女のその言葉の瞬間、頭の違和感は消え、俺はすべてを思い出した。