第2章 物語の始まり
長かった前置きがようやく終わり、やっと本編に入ります!
4月の体育館はポカポカしている。
ステージの横の壁には、本日のプログラムが張り出されている。
開会の言葉
来賓紹介
祝電披露
校長祝辞
来賓祝辞
新入生代表の言葉
校歌斉唱
国歌斉唱
閉会の言葉
今は、長い長い校長祝辞の真っ最中だ。
私はまだ朝だというのにウトウトしそうだった。
『長い…。もういいよ。分かったから、早く終わらせてくれ…』
私はいつにも増してしかめっ面になっていた。
周りのエリート達も、口々に文句を言っている。
私に話しかけてくる人は誰一人いなかったのだが。
私は頭で素数を数えていた。
『2.3.5.7.11.13.17.19.23.29.31....』
しかし、すぐに終わった
猛烈な睡魔に襲われたからだ。
『ヤバい!まぶたが重い!ここで寝て、みんなに親近感持たれるなんて、絶対嫌だ!!なんの為にあそこまでして……』
しかし天才は、睡魔には勝てなかった。
気が付くと、視界が真っ暗だった。
そう、寝てしまったのだ。
『ヤッバ!寝ちゃった!!!』
慌てて辺りを見回したが幸い、私に気付いている人はいなかった。
しかし、しばらくして気付いた事があった。
『……アレ?静かだな。ずいぶん…』
そう、全く音がしないのだ。
小鳥の囀りも 葉のざわめきも、何一つとして聞こえるものはない。
よく見ると、ステージの上で校長が口を開けたまま、止まっている。
まるで凍りついたように動かない。
周りの生徒もそうだ。
『え?は?はぁ!?な…なんだこれ!!!?』
しかし私は冷静だった。
『分かった。これ、夢だ。もう一回寝よう。』
そうして私は目をとじた
その瞬間、頭に凄い数の音が流れ込んできた。
小鳥のさえずり、風の音、誰かのヒソヒソ声、咳払いの音、車のクラクション…………
その他にも、それが何なのか分からない音が何千と、頭に流れ込んできたのだ。
そして、鋭いキィーンという音のあと、我に返った。
「……えー、我が校の目標は…、」
聞こえてきたのは校長の祝辞。ちゃんと動いている。
周りの生徒も、何事もなかったようにしている。
私は、ワケが分からなかった。いきなり時間が止まって、意味不明な音が聞こえてきて…
その後の式の内容は全く覚えていない。
きれいさっぱり抜け落ちてしまったようだ。
教室で私はただ1人、呆然としていた。