・カミングアウト
なぜ、私の家にだけこんなおかしな掟があるのだろうか。
今まで考えたことが無かったと言えば嘘になる。
『黄の目を持つもの 友をつくるべからず』
こんな胡散臭い掟があるものか。馬鹿げてる。
いくら13歳の私だってそれくらい分かって当然だ。
しかし、分かっていても私はその掟を14年間も守り続けてきた。
それは何故かーー。
私には20歳になる姉がいる。有明姫代 医学の大学に通う、ごく…普通の女だ。
その姉は大学では超モテるらしい。私は可愛いと思った事が一度もないが。
姉は名前に姫が付くからって調子に乗っていつも私を見下して遊んでる。
はっきり言って、かなり性格が悪い…。
そして私がこのくだらない掟を守り続ける理由も案の定コイツ…いや、この姉にある。
あれは私が幼稚園生の頃…。もとから愛嬌がなくて友達作りが下手だった私は、いつも1人で遊んでた。
でもある日思い立ってまだ10歳だった姫代に相談した事があった。
「私、お友達ができないの。なんでかな?」
すると、とんでもない答えが返ってきた。
「あぁ、神代。残念だったね!アンタ黄色い目してるから、友達作っちゃ駄目らし〜よ(笑)」
長い沈黙が続き、姫代は付け足した。
「そういう掟があんの。この家にはね。ドンマイ♪ちなみに掟破ると…」
姫代はスゴいスピードで小さい私の首を握った。 ただただ恐怖だったのを私は覚えている。
姫代はグッと手に力を込めて言った。
「……呪い殺されるらしいよ。次の日、手足がもがれた状態で見つかるとかなんだとか…」
神代はクラスの男子との電話中にこんなカミングアウトをした。
「あ、ゴメンね〜!ちょっと邪魔が入ってさ。で?デートのプランは出来たの?」
私はハッキリ言って超ド級の怖がりだ。そんな事言われて、破れるワケがない。
こうして今に至る…といった感じだ。
色々説明しているうちに時間になったようだ。そろそろ入学式が始まるらしい。
私は出席番号が1番なので列の1番前に並んだ。
もちろん後ろの人は気まずそうに間を開けて並んだ。
『…うん、これでいいんだ。』
私は心の中で呟いた。