・嫌がられる方法
………クラスは1年A組
女学院二階の教室だ。
この中学校にはクラスが6クラスあり、A〜Fまでランダムに振り分けられている。
A組は廊下の一番奥にあるクラス。私はなんとなく憂鬱だった。
決心は固い。
友達は作らない。
決心がユラユラするなんて、チャランポランの証拠だとお母さんの遺書に書いてあった。
あの責任感のない父親のようにはなりたくない。
教室の扉は閉まっている
まるで私が教室に入るのを拒むかのように。
…大丈夫。いつもみたいにやればいいさ。
私は心の中でつぶやいた
そして扉を開けた。
思いのほか、大きな音をたててそれは開いた。
シンと静まり返った教室にガララッという品の無い音が鳴り響いた。
その途端生徒達の視線はいっせいに私に向けられた。
私は人間に嫌がられる方法を知っている。
まず周囲を睨む。
そしてワザと音を立てて歩き、ワザと音を立てて座る。
この時、カタッではなく ガタンッとなるのが正解
私はココでは説明しきれないような数々の人に嫌がられる技を繰り出し、華麗に席についた。(つもり。)
席は窓際の一番後ろ。
私は耳をそばだてて、周囲の反応を待った。
反応はすぐに起こった。
そこかしこで、
「ねぇ、見た?さっきの」
「あの人試験一位の人でしょ?カンジ悪〜。」
といった、エリート達の下等な悪口が聞こえてくる。
私はそれを聞いて心の中でガッツポーズをした。
どこかで心がえぐられる音がしたが、気にしない。
「よし、これでいちいち変にキツい事言わなくても誰も寄ってこないだろう。」
そして私は鞄から数学の参考書を取り出した。
『因数分解かぁ…三年生の単元だよなぁ。あと二年あるけど、やっておくか。』
そう思い私は因数分解のページに赤シートをかぶせた。答えは瞬く間に消えていった。
入学式が始まるまであと1時間はある。
窓の外の桜はハラハラと散っていく。
こうして私の独りぼっちの中学校生活が始まった
でも、この時は まさか自分があんな事に巻き込まれるなんて、考えもしなかった。