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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

進むか 化けるか

掲載日:2026/05/19

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 ううむ、一生涯のうち人間は30年前後、画面を見て過ごす、か。

 ああ、こーらくん。ちょっとネットを見ていてね、たまたま目に入った記事なんだよ。

 ほら、現代の我々の生活って画面とにらめっこの時間が長いだろ? 仕事をしていればパソコン、合間の時間にスマホ。このような生活を70年くらい送るとなると、そのうちの30年くらいが画面を見る時間……という計算らしい。

 人生の半分、いや人によってはそれ以上の時間を液晶とそれに映る情報を相手にしていく。ひと昔に比べたら、怖くなるくらいの世界の変化ってやつだ。

 今の我々は、その新しい時代の新しめの世代。適応しきれていないためか、視力の低下うんぬんに悩まされるのも珍しくない。でも、このような時代が長く続けば、人類もそれに合わせて進化していくかもしれないな。

 いや、その進化が間に合わぬほどの早さで、次のジェネレーションが押し寄せるのか? 世界全体で見たら人類の歩みが速いのか、生き急いでいるのかの判断がつきづらいかもな。そして実は、すでに適応している個体も存在しているのかも……。

 少し前の私の話なのだけど、聞いてみないかい?


 君には言うまでもないことだが、私はそれなりのゲーマーを自負している。

 世にあるすべてのゲームをやるには、あいにく人生の時間は足りそうもない。それでも雑誌とかに取り上げられがちな有名どころや、知る人ぞ知るマイナーなインディーゲームなどはまあまあやりこんでいる。

 加齢とともに人の機能は衰えるというが、武道の世界で若者を圧倒するおじじ、おばばな人がいるのは、いにしえよりの常。ゲームだって何歳になっても操作や反応が鈍らない人がいる。将来的には、その境地に至りたいとは考えているがね。

 実際、自分より若い者とプレイしてみて、自分が劣っていると感じることは少ない。けれどもわずかだが、この子には圧倒されても仕方ない、と一目置かざるを得ないケースもあったな。


 私の甥などは、そのひとりだった。

 あらゆるゲームジャンルにおいて、相手側のミスによるものしか勝機をほぼつかめない、となれば腕の差は歴然としたものだろう。

 が、甥をすさまじいと思うのは、その点だけではない。アクションやシューティングならば反射神経で劣るのかもしれないが、時間のかかるシミュレーションなどでも強い点だ。

 こーらくんも、実際に対してみると分かると思う。戦略勝負なら互角でも、ランダム要素のほとんどが決まって甥へ味方するんだ。いくら戦力が勝っていても、こちらは一向に当たらず、相手は全然外さないとなれば、ひっくり返されるのも道理。


 ――乱数調整でもしているのか? いや、それにしては動作があまりに自然すぎる。


 バグやグリッチのたぐいは、あらかじめおさえている。それらしき所作を見れば、すぐ判断できる自信があった。

 しかし甥にはそれがない。私の理解を超えた何かを活用しているとしか思えなかったよ。

 負けてから、そのあたりを口にしては情けない言いがかり。どうにか勝ちを拾った直後に甥へ尋ねてみたわけさ。コツというかタネというか。


「なんかこう、ピンと分かるんです。コントローラーを握っていると」


 そうきたか、と私は思う。

 ゲーム中、次に起こることを察せられる瞬間は私にもある。たとえ短い間だったとしても、生じたラグや処理落ちによって、判断がついてしまうのだ。

 しかし、今回はそれらしい兆候はなかったはず。私の気づかない領域にまで達したのなら、素直に称賛するべきところだろう。

 それからも時間の許す限り、甥の技術を見極めようとしたものの、どうしてもかなわなくてね。たいした子だとは思ったものの……そのうち、甥の父親にあたる私の兄から、ちらりと話を聞いたよ。

 どうも甥は、ゲーム機によらずに家電の状態なども把握できるようなのだと。

 照明、コンロ、冷蔵庫などなど……電気がかかわるものの調子の悪さが読めるとのこと。

 表立って故障のきざしが見えずとも、いざ専門の人を呼んで調べてもらうと部品の劣化などが、確実に発覚する。

 ものすごい特技に目覚めた、と甥自身も当初は信じられない心地でいたし、兄夫婦も驚いたのだけど、その喜びも長くは続かない。


 ほどなく、身体の調子がおかしいと甥が訴えるようになる。

 もしや、その電気の状態が分かる力による過負荷がかかるのかと、兄たちは使用を控えるように告げるも、そうではなさそうだという。

 自分の身体がまずそう。電気の流れが良くない……そう告げるや甥は昏倒して、病院へ運ばれてしまったんだ。

 意識そのものは、さほど間を置かずに回復した。体の機能も不調などは見受けられなかったのだが、ただひとつ。

 家電の状態などを把握しうる、あの特別な力を失くしてしまったんだ。試しにまたゲームで競ったところ、あの特別感さえ覚える圧倒ぶりはすっかり消えていたよ。


 人体もまた、電気によって動いている。

 電気に鋭く接することができる力があるとして、それを使いこなし続けるほど適応できるのもまだ時間を要するかもしれない。

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