【④】強気美人、それでも選ぶ ~激辛パフェから始まる、ちょっとチョロい出会い~
——数日後。
「……遅い」
私はスマホの画面を閉じて、小さく息を吐いた。
待ち合わせの時間を、少しだけ過ぎている。
春の空気はやわらかいのに、今日は少しだけ落ち着かない。
——来ない、なんて。
ほんの一瞬だけ考えて、首を振る。
「……来るでしょ」
自分に言い聞かせるみたいに呟いて、カップに手を伸ばす。
コトン、と小さな音。
そのとき。
「すみません、遅れました」
顔を上げる。
いつもと同じ顔。
少しだけ息が上がっている。
「……遅い」
「すみません。ちょっと仕事が」
「言い訳ね」
「そうですね」
私は視線を逸らして、カップを持ち直す。
「……別に、帰ろうかと思ってたけど」
「嘘ですよね」
「……」
「待ってた顔してます」
「してない」
「してます」
「してない」
少しだけ間。
それから——
「……まあ、いいわ」
私は椅子にもたれながら言った。
「来たんだから」
「ありがとうございます」
「感謝するところじゃないでしょ」
でも、少しだけ笑った。
「で、今日は?」
「決めてないんですか」
「決めてるわよ」
私は立ち上がる。
少しだけ、間を置いて。
「……甘いもの」
「無難ですね」
「外さないの」
「珍しい」
「うるさい」
店を出る。
並んで歩く。
前と同じなのに、少しだけ違う。
「……ねえ」
「はい?」
「次も、来る?」
「来ますよ」
「……そう」
私は前を向いたまま、小さく息を吐く。
春の空気が、やわらかい。
——たぶん。
最初から決まっていたんだと思う。
こうなること。
じゃなくて。
「……私が決めたのよ」
「はい?」
「なんでもない」
私は少しだけ笑って、歩き出す。
——強がりでもいい。
チョロくてもいい。
それでも。
自分で選んでいるなら、悪くない。
……なんて思ってる時点で。
やっぱり私は、結構チョロい。




