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【④】強気美人、それでも選ぶ ~激辛パフェから始まる、ちょっとチョロい出会い~

作者: 春凪とおる
掲載日:2026/04/09

 ——数日後。


「……遅い」


 私はスマホの画面を閉じて、小さく息を吐いた。


 待ち合わせの時間を、少しだけ過ぎている。

 春の空気はやわらかいのに、今日は少しだけ落ち着かない。


 ——来ない、なんて。

 ほんの一瞬だけ考えて、首を振る。


「……来るでしょ」


 自分に言い聞かせるみたいに呟いて、カップに手を伸ばす。


 コトン、と小さな音。

 そのとき。


「すみません、遅れました」


 顔を上げる。

 いつもと同じ顔。

 少しだけ息が上がっている。


「……遅い」

「すみません。ちょっと仕事が」


「言い訳ね」

「そうですね」


 私は視線を逸らして、カップを持ち直す。


「……別に、帰ろうかと思ってたけど」

「嘘ですよね」


「……」

「待ってた顔してます」


「してない」

「してます」


「してない」


 少しだけ間。


 それから——


「……まあ、いいわ」


 私は椅子にもたれながら言った。


「来たんだから」

「ありがとうございます」

「感謝するところじゃないでしょ」


 でも、少しだけ笑った。


「で、今日は?」

「決めてないんですか」


「決めてるわよ」


 私は立ち上がる。


 少しだけ、間を置いて。


「……甘いもの」

「無難ですね」


「外さないの」

「珍しい」


「うるさい」


 店を出る。

 並んで歩く。


 前と同じなのに、少しだけ違う。


「……ねえ」

「はい?」


「次も、来る?」

「来ますよ」


「……そう」


 私は前を向いたまま、小さく息を吐く。

 春の空気が、やわらかい。


 ——たぶん。


 最初から決まっていたんだと思う。

 こうなること。

 じゃなくて。


「……私が決めたのよ」

「はい?」


「なんでもない」


 私は少しだけ笑って、歩き出す。


 ——強がりでもいい。

 チョロくてもいい。


 それでも。

 自分で選んでいるなら、悪くない。


 ……なんて思ってる時点で。


 やっぱり私は、結構チョロい。



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