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サイバネティックハンターズSLG!!(LET’S ROCK’N'ROLL)

(SLG01)LET'S ROCK 'N' ROLL

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「ええと、二階堂先端技術……」


二階堂先端技術相談所です!と声高らかに押しつけて話を進めた。政府機関及び連合が独占していた技術相談が民間に委託され、大量の技術屋が街にあふれた。公的機関にものすごいチョンボがあったからしばらくこの状態が続くはずで、どこの企業も声をそろえて「今だ市場を独占だ!」。空間湾曲が起きているのかというほどカオスにまみれている。私たちが一番乗りなのに、なぜ一番かというと「要領が悪かったからこっちに来ちゃった」というのが実情で経営ができない。従業員が私も含めて全員要領が悪いという恐ろしい経営体制、早く軌道に乗せないと追い抜かれちゃう!今はまだ指標がないから追い抜かれたことにはなっていない、早くしないと。今日も営業にいそしんでいたけど、「ご本名は?」と聞かれた。二階堂レイ、と言っているのにもう一度聞きたがるお客さんは、漢字で書くはずだと思っているらしい。うるさい。私のお母さんはヨーロッパ圏だったから英語で名前をつけたがった。レイ、というのは光とかそういう意味が欲しかったらしい。お父さんは日本人で、数学が好きだったからこの名前を当てて、カタカナにした。じゃあ零が正しいのかな、と思って子ども時代を過ごしたけど、0だから丸いのがいいんじゃない?と言われてわからなくなり、お父さんに聞いてみたことがある。教えられないけど、いつかわかるといいね、とはぐらかされた。その意味が全然わからず、こないだ相談所の名前をつけるときに私の名前も話題に上がって従業員に言われた。


「1から考えられるように、とか?」


……うるさい!わかってるわよ!と強引にねじ込んだ。「知らないっつってたじゃん」と言われたらどうしようとハラハラした。父さんが何を思っていたかは結局わからないけど、わかってると言っちゃったのでそういうことになっている。自分の会社ではそれでよくても取引先でこういう会話を濁すと全体が上手く行かず、しどろもどろになってどうしようかと思っていたら、携帯用のシーバーが鳴った。こっちに動きがあった、とくだんの従業員の声が聞こえたので急用だと言って立ち去った。ああよかった。大丈夫なの?と聞くと大丈夫だという無責任な言葉とともにシーバーが薄緑に光った。シグナル、ライトグリーン。とりあえず行くかあ。


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サイバネティックハンターズ・SLG!

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社用車に乗ってナビをつけると従業員の顔が浮かび上がった。出社しなくていいんだからいいわよね、とそこそこ無神経なことを口走るが相手が気にしていないからもういいや。肉体を失ってサイバー空間に転送された元人間の従業員は、出勤という概念がない。だってネットワークがあれば即座に出て来れるのだから朝一番に起きて満員電車に揺られるという行動自体がない。いいなあ、と最初に言ったときは怒られた。さすがに悪かったと思ったら「家にいるのに会社から電話がかかってきたことがないのか!」とそっち方面で気を遣ってほしかったらしい。とても悪いことをしたと思った。それでさ、トミ……と言いかけて「違う」と言い返された。気に入っていなかった名前が「ファントム」に変わったからこっちの方がいい、と肉体を失った特権をフル活用するつもりらしく、新しい名前だ!と喜んでいる。それくらいの小さな楽しみがないとやってられないだろうからここらへんはもう容認する。ファントムは肉体がない=人権も生存権もないので自由と危険がごっつんこ、サイバー空間でウィルス処理ソフトに捕まっても文句が言えない。「端末を通さないから通信料なしで動画サイトを見放題だ」と言っているのでそのうちガサ入れがあるだろう。どうやって突き出そうかな。


あんたがどんなエロ動画を見ていようと知らないからヴァンの居場所を教えなさい、と言っているのに「主には昔のアニメとバラエティだからそんなものほとんど見てない」と言っているから多少は見ているらしい。体がないから見ても意味ないのに、男というのはこんなに変わらないのか。中身以外は完全に変わったのに。そういう意味ではギリ体が残っているのに私みたいな美人を見てもなんとも思わないヴァンの方が朴念仁だ。社宅、というか事務所の下のガレージに住んでいるのにのんべんだらりとしているから、女性と一緒で何も思わないの?って興味本位で聞いたら「?」。あ、ああ、そういうの興味ないしな、とその場を凌いでいた。ファントムが通信してヴァンに何か教えていたようで耳元のランプが点滅していたけど、何言ってたのかな。まあ後で締め上げればいいか。すぐに吐くでしょ、要領悪いし。ファントムが言うには、ヴァンはハイウェイに向かったという。すぐに社用車で後を追いかけた。


あの辺だなあというのは見ればすぐにわかった。だってハイウェイの上空でボカンボカン爆発しているので空を見てれば嫌でもわかる。なにせハイウェイなので上になにもなく嫌でも目につく。少し前まで指名手配だったヴォルトクラウンが、国内に残って何かしているらしい。逃げ場がないからヤケになっているらしく、どんどん捕まるけど何人いるかわからないから捕まえきれない。そいつらが何かしでかしたとき即捕まえれば、頼りになる会社だ!と思ってもらえるのである意味同業者たちのカモになっている。わかっているのに頻繁に暴れるから追い詰められているらしい。早く捕まえてあげないと。一石二鳥だ。


ヴォルトクラウンが反重力車両を走らせて何かを運んでいるらしく、空を中心に逃げ回っている。重いものを乗せて浮かぶことができる反重力車は特殊な仕様だから特定の道路の上を走らざるを得ず、結果的にハイウェイに沿って追いかけられる。リパルサートレーラーだ!とファントムがなんとなくわかるらしい。趣味の時間が人生の全部になっているからたくさん知っている。やっぱりうらやましい。その爆煙の上がるあたりのビルの合間を、何かが飛び回っていた。ああ、あれね。吹き飛んだ体を強化骨格に置き換えれば、身体能力が跳ね上がる。もちろん骨格を作ったエンジニアの腕が良くないとここまでできないけど、壁を蹴って跳ね回っているのに他のリパルサーヴィークルやドローンに負けない追尾能力。さすが私の強化骨格!ヴァンもよくやったわ、私がすごいと証明された。


さあ、ぶっ飛ばすわよ!とアクセルべた踏みで爆煙を追いかけた。なんせ急遽の法改正で整備が全然追いついてないから、緊急の現場判断は各企業に任せられている。ああ、気持ちいい!「ぎゃー!やめろー!」と叫ぶファントムがいざとなったらブレーキかけてくれるから安心だ。うなれエンジン!アスファルトの上で!社用車はタイヤで地面を走っている。


もちろん加速力ならゴムタイヤが一番だから!という言い訳を常に用意しているのに、すぐに追い抜かれた。なんで?どうして?あれは何?ってなんだよく知ってるや。ディザスターと呼ばれる大型メカノイドは、昔の同僚が無駄に作り込んだ世界屈指の機械構造、背中のジェットなんて市街地を飛ぶんだからもっと粗末でも何とかなるのに世界を一周できる高出力。すぐにドカドカ上がる爆煙に追いついてリパルサートレーラーを捕まえた。ディザスターは会社持ちのメカノイドだから依頼があったらなんでもしないといけない。総務だろうが経理だろうが「お願い!」と言われたら断る権限がない。本人がアドミニじゃないし。だから割となんでもしないといけないからあっちはあっちで大変だけど、こっちは依頼そのものがないから絶対こっちの方が大変だ。だから今回は譲って!と思っていたらリパルサートレーラーから何かがこぼれ落ちた。荷物だろうか。人じゃない?危ない!リパルサートレーラーを抱えていたディザスターは動けず、ヴァンが思いきり踏み切って飛びつこうとしたら別の企業の車に遮られて頭を打った。入り乱れてるのに直線で動けないでしょ!そうでもないと間に合わなさそうだったから緊急ということで責任は逃れて、向こうの会社には保険屋に文句を言ってもらおう。それより、あれは人だったっぽいから落っこちて大丈夫なの?ってブレーキを踏んだのにファントムが車を走らせた。ぎゃー!見たくない見たくない!でも現場には落ちた跡、割れたアスファルトがあるだけだった。くっきりと残ったギャグ漫画みたいな割れたあとは、間違いなく人間。……ごめん、間違った。人間型の何か。人間であればこの衝突で血の一滴も出ていないなんてことはなく、人間型の機械、要するにメカノイドだろうとあたりがついた。どこに行ったんだろう。車を降りて恐る恐る当たりを見回すと、後ろから音がした。電子音、ガガガ、ピーという古いのもいいところの機械音は何かと思えば、私の背後には無骨な金属の塊があった。人間型で、立っていたと言った方が正しいだろう。目の光がパッとついて、赤くなった。周りにはすぐに同業者がたくさんやってきて、メカノイドを囲んだんだけど、全然捕まらなかった。捕まえに行った人たちは、みんな片手でぶん投げられてなぎ倒された。そういう企業にはメカノイドの従業員もたくさんいるのに、誰も相手にできない。現場がパニックになって逆に逃げ出す人もたくさんいた。ファントムが今さら気を回して私の前につけて、乗れ!と言ったけど自動で開く扉じゃないから一瞬遅れた。どのみち中古なんだからタクシーにすればよかった!飛びかかってきたメカノイドは、弾き飛ばされた。防いだのは、一番遅れてやってきたヴァン。実働員なのに。


メカノイドはヴァンと戦うかと思いきや、弾き飛ばされたあと走り去って逃げていった。ヴァンは追いかけるどころではない。ハイウェイの事故防止装置がバタバタ開きついたてが出たり引っ込んだり、ブレーキが壊れたらクラクションを五秒鳴らせば「止めてくれる」バカ装置がもぐら叩きのように出ては引っ込み、これでは走ってくる一般車両がバンバンぶつかる!折悪く危険物マークの輸送トラックがこっちに向かっている、どうすんの!と思ったらファントムから連絡が入った。


「あの車線は十秒後だ、いっちまえ!」


ヴァンはハイウェイの端っこの車線に跳び、腰を落として構えた。そしてジャキンと飛び出したついたてに手のひらを叩きつけて歯を食いしばる。喉をがっちり絞めて発声、クラァッシュ!手のひらから撃ち込んだ衝撃がトラックを止めれるついたてを一撃で破壊した。とりあえずこの一台は衝突を回避して、あとは集まった同業者全員で交通整理。こういうときに身を粉にすると、イメージがいいぞ!情けは人のためならずという言葉を腹から理解したみんなが収拾してくれた。私たちは、その中の一つに数えられた。主導なのにぃ!


私たちがやったとわかってくれるのは一番デカくて怖そうなディザスターだけ、降りてきて「すまない、助かった」と言ってきた。世界がみんなあんたみたいだったらいいのにね、と言ってたらヴァンが帰りたがる。ディザスターに悪いでしょう、と言って聞かせていると、「あああああ♡!!」と声が聞こえてきた。ヴァンがビクッと怖がって引きつった顔で振り向く。強化骨格の表情のプログラムに引きつったイメージなんて私は持たせてないから心から引きつっている。昔の同僚のミソラが、ディザスターの保守管理で現場に来ていたらしい。でもついたてがバシッと現れて行く手を阻まれた。ヴァン、あんた今地面蹴らなかった?と聞いたけど、蹴っていないらしい。まあウソが苦手なヤツだからだいたいわかるけど。


ヴァンに気を遣って早々に帰ろうとすると、ディザスターが見送ってくれた。あんた気が利くわね、みんな見習いなさい。私以外は気が利かないからそう言って聞かせていると、立ち去る間際に変なことを言っていた。「一雨来そうだ」。いい天気なのに、なんのこと?雨雲レーザーには何も映っていない。何か言いたかったのだろうか。ディザスターは会社持ちのメカノイドだから、社外秘情報を伝える権限がないはず。本当に雨が来そうだと思っていたならともかく、雨は降らない。なんだろう、と帰りの車中はみんなで頭をひねっていた。あのディザスターというメカノイドはこないだ大暴れしたから社会全体の信用がまったくない。私たちは一番信用できると思っているから、本当に要領の悪い会社なのだろう。

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