ゆめみ
暮れかかるこの町の
南の空に、
この夏の忘れ物か、
小さな入道雲。
何気ない週末に
恵みの雨か。
走らせる車の中、
微かな期待。
時間を惜しみながら、
自然に向き合う。
暮らしを守りながら、
急ぐばかり祈るばかり。
落ち着いてこの町の
夜に入れば、
この夏を流すための
虫の音が降る。
愛したい人々は、
どんな思いだろう。
同じ時同じ場所で
降られてみたい。
命を忘れながら、
誰でも生きたい。
季節を迷いながら、
憂うばかり偲ぶばかり。
夜通しのこの世話も
ずいぶん慣れた。
この秋の美味い酒、
飲みたがる父。
思い出す子供の頃、
よく山に登った。
ゆっくりと登れよと
よく言っていた。
言葉を探しながら、
ほとんど話せずに、
雨降り気にしながら、
眠るばかり夢見るばかり。