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マツダ2

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 潜入は二日後になった。絢の回復が意外に遅れたためだ。左腕の傷はもちろんだが、全身の打撲によるダメージが抜けなかったのだ。絢は焦っていたが、優貴にとっては勿怪の幸いだった。絢から核地雷までの潜入ルートの情報を聞き出せたし、ちょっとした準備をすることが出来た。

 核地雷の場所はやはり、地下三階の放射能ハザードシンボルの分厚い金庫の扉の奥だった。ちょっとした準備がなにかは見てのお愉しみだ。


 おそい朝食を摂って、三人がマツダ2に乗り込む。ドライヴァーズシートに優貴、ナヴィには莉愛、後部座席にアームスリングで左手を吊った絢が座る。春には遠い二月だというのに日差しがしっかりしたうららかな日だ。

「この服いいわ。どこで買ったの?」

 シートベルトを締めた絢が嬉しそうに莉愛に尋ねた。黒のレギンスに白いシャツ、カーディガンに茶のロングコートが絢に良く似合っている。

 ヘッドレスト越しに振り向いた莉愛がにっこり笑って、新宿のデパートの名前を答える。

「本当はセーターの方がいいと思ったんだけど、腕を通すの、大変そうだったから」

 確かにカーディガンであれば、アームスリングの上から羽織ることが出来、あたたかい。

「ありがとう」

 絢は莉愛の細やかな配慮に感謝の言葉を口にした。なんだか久しぶりに人間扱いされた気がする。組織に自分の機能を提供し、その対価を得る。それが当たり前の世界では自分の機能低下は致命的だ。すぐに持ち場を追われることになる。機能低下した自分に装備が合わされることはない。全体の効率が落ちるからだ。でも、莉愛は自分に装備を合わせてくれている。

「よかったよぉ、気に入ってくれて」

 莉愛の返事を合図に、優貴がアクセルを踏んだ。マツダ2が動き出し、滑らかな動きで、幹線道路に出る。広い歩道をこじゃれた恰好の男女が歩いているのが見える。

「もう少し、休んでいても、よかったかな」

 絢は前部座席の二人に聞こえないように口の中でつぶやいた。


 片道一車線の裏通りに面したFEBの正門は顔パスだった。絢のおかげだ。三ヶ月ほど前に下手な大阪弁を使って突破した苦労が懐かしい。

 鉄門が右塀に収納され、黒と黄色の警戒色で塗られた車両侵入防止装置が地面に収容されるのを待って、優貴はマツダ2をFEBに乗り入れた。左に折れて塀のそばの駐車スペースに停める。

「装備品室までは一緒に行きましょ。あなたたちは装備を整えて、地下に潜入する。あたしは局に戻って、前田さんの拘束を進言するわ」

「了解」

 優貴はそういうと車を降りた。

「この三日で地下への通路はすべて封鎖されているはずよ。行けるのは話したルートだけ」

 降りてきた絢が続けた。

「ああ。ここまで来られただけで助かる。コンクリートで封印された出入口を突破するのは骨だからな」

 優貴がそう言ったとき、正門から声が聞こえて来た。調子のいい本物の大阪弁だ。

「お~い。はよ、入れてえな。助っ人が来とるんやで」

 長身の天然パーマの男が陽気に手を振っている。大坂誠だ。時間通りにちょっとした準備が届いたわけだ。

「あいつっ」

 絢の右手が腰に伸びるが、ハンドガンはない。空を切った掌で絢が拳を作る。大坂の莉愛強奪の一件を絢は許してない。

「大坂っ、こんなところにのこのこと」

 怒りに顔を歪めて絢が歩き出そうとしたところを優貴が押しとどめる。

「おれが頼んだのさ。あんたの話じゃ、どうしてもサポートがいる。ポイントマンのおれだけじゃ、さすがに荷が重い」

「でも、大坂なのよ。前田さんを強奪して、売り払おうとした」

「そうさ。だから、あてになる。実力は保証済みだ」

「いつ裏切るか判らないわ。危険よ」


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