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三ツ山大学オカルト研究会   作者: 黒川 右京
12/17

ツツノシン その1

 四分谷が入部して一ヶ月が過ぎた。四分谷はすっかり大学生活にも慣れ、週末は浮島先輩とよくショッピングに出かけている。浮島先輩も同性の後輩ができたことが嬉しいのだろう、只野部長を始め、男部員はすっかり蚊帳の外だ。カバオは先週、満を持して四分谷に告白をした。結果は聞くまでもなく、玉砕だ。カバオはこれで大学生になってから、僕が知っているだけで20人くらいの女性にアタックを仕掛け、フラレている。彼のその行動力、そして鋼のような精神力に、僕は尊敬の念を隠せない。ああはなりたくないが。


 僕はと言うと、何も変わっていない。タイムマシンか何かで、一ヶ月前の僕と入れ替わったとしても、誰一人気づくことはないと自信を持って言えるほどに、星川村の『都市伝説計画』はなんの進捗も見せていないのだ。夏季の合宿は8月の中頃、合宿先総選挙は6月の末に行われるため、期間は残り僅かだ。無理をしてまで今年中に行く必要もないのかもしれないが、来年も部が存続している保証も無ければ、四分谷が在籍しているかも分からないのだ。


 しかしながら、いざ、自分の手で都市伝説を創作しようとすると、なかなかどうして、一筋縄では行かないものだ。都市伝説に関しては、僕は部の中でも只野部長の次に詳しい自信がある。WEB上の都市伝説なんかも暇があれば読んだりしているのだが、実際、創作しようと思っても、どこかで見たことのある、二番煎じのB級ホラーな話しか思いつかないのだ。


 意外にも、四分谷は都市伝説の創作には難色を示している。目的のためなら何でも利用しそうなイメージだったが、彼女はとにかくウソを付くのが嫌みたいだ。僕だって実際に存在する村を舞台に怪談じみたものを作ることには少なからず抵抗がある。根も葉もないオカルト話を流布することで、風評被害で訴えられないか心配でもある。


 そんな四分谷は、日々図書館で星川村の周辺で起きた事故や事件を調べている。村に住む祖母とは何度か連絡をとっているらしいが、どこにでもあるような山姥の話や、大蛇の話が伝承されているくらいで、今どきの若者に受けるような話は今のところ無い。


「意外と難しいものなんだな、作り話って」


 部室の窓から見える桜の木は、一足先に夏を迎えたのか、緑の葉が生い茂っていた。


「独り言ですか? 柳田先輩」


 一人がけのアームチェアに持たれながら本を読む四分谷が僕に問いかけた。そう、これは独り言だ。独りよがりの独り言なのだ。自分で自分を慰めたいだけなのだ。僕は非常に困難な、茨の道を進んでいる。そう自分に言い聞かせているだけだ。


「大蛇の伝説じゃ駄目なんですか?」


「今どき、そんな古典的な怪物には誰も食いつかないよ。もっとオカルト的な、正体不明の怪物でないと」


「作り話を流行らせようなんて、やっぱり詐欺みたいで良くないと思います。私、ちゃんと只野部長に河童のことを話して見ようと思います」


「待て待て、それは最終手段だ。いくら只野部長といえども、河童を信じてくれるかは疑問だよ」


 四分谷が河童を信じていることは、あまり皆に知られたくない。かつて僕も、同じように信じていたものがあったけど、誰も信じてはくれなかった。あんな思いを四分谷にさせるわけにはいかない。


「tvitterで他の人のオカルト体験談を見ているんだけど、創作側の立場で読んでみると、人気のある話はやっぱり良くできている。このレベルのクオリティを今の僕に作ることはできない。そこで僕はある案を思いついた」


「なんですか? 先輩のことですからきっと碌でもない案なんでしょうけど」


「オカルト、都市伝説のインフルエンサー、『ツツノシン』に都市伝説の創作を手伝ってもらおうと考えている。ついでに話を広めてくれたら最高だ」


「随分他人任せな作戦ですね。それで、そのツツノシンとかいう人と連絡は取れるんですか?」


「いや、DMを送るしか手段はない。最も、普通に送ったところで見向きもされないだろう。だから、四分谷、力を貸してほしい」


「なんですか、急に。私にできることなら協力しますけど」


「お前の写真、使わせてくれ」


 ツツノシンは年齢、性別ともに不明の人物だ。だから僕は、賭けに出る。四分谷の美貌につられて協力してくれるかどうか。これぞ『ハニートラップ作戦』だ。


 カバオ、お前が考えた作戦、借りるぜ。

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