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2-2

「さてと、サクサク回収していくとするか」


俺は古戦場に着くやいなや怨霊を食べ始める。食べると言っても手で触れてチュルンとするだけなのだが。

親父の肩に乗っていたヤベェ魔術士の怨霊は経口摂取したが、その後の検証で触れさえすれば吸収できることが判明し、以来この摂取の仕方の方が多い。

ただ、経口摂取の場合は何故かのどごしが良く、たまにやる。


「地道な作業だなぁ……」


チュルンチュルンと吸いながら独りごちる。一人でやる地味な作業は独り言が多くていけない。

でも、怨霊食いの強化効率は低いので、とにかく数をこなさなければならない。

何せ、王族を全滅直前まで追いやれるほど強力な魔術士の怨霊を吸収しても、少ししか強化されなかったのだ。古戦場に転がっているカス怨霊の強化率など推して知るべし。


まぁ、強化効率が低いのは仕方ないと思っている。

何回も吸収して、段々と解ってきたのだが、どうやら俺のこの異能は怨霊を「ありのまま」取り込むのではなく怨霊を「純粋な霊的エネルギー」に変換してから吸収しているらしいのだ。

食材だって、その全てが消化吸収できるわけではないように、怨霊もまたそうなのである。無害化し吸収可能なエネルギーにするためにはある程度のロスは仕方がないのだ。


「いやぁー、この古戦場は当たりだな。いっぱいいる」


古戦場にはまだまだ沢山の怨霊がいるようだ。効率が悪くても数で補えば問題はない。

本当に怨霊が多くて助かる。


この世界の怨霊は基本的に祓われない。

というのも祓うことの出来る人間がいないからだ。

とは言え別に聖職者などの神職が居ないわけではない。だが彼らの担当はレイスやバンシーやレヴェナントやゴースト等の、要するに霊障系モンスターなのだ。


対して怨霊は、精霊の一種であるらしい。

悪さをする奴も居るが大抵の場合は彷徨っているだけだ。

そして精霊術師は基本的に数が少ない。一般的な八第元素魔法に比べ、圧倒的に適正者が少ない。当然、怨霊を払える奴も少ない。ましてや俺のように怨霊を吸収して糧とできる奴などまずいない。

結果、人が住んでいない古戦場まで来て、わざわざ金にならない怨霊退治に来る奴などいないのだ。


「おかげで俺は助かってるけどな」


この手の古戦場はこの国にいっぱいあるのだ。

それはこの大陸に、元々は十の国があったことに由来する。


十の国はそれぞれが度々争っていた。

どの国も大陸の制覇を夢に見ていた。

そして今から約300年ほど前、当時のエルドランド王国が大陸統一を果たしたのだ。

以降この大陸は、その国名を神聖エルドランド帝国として今にいたる。

元エルドランド王国以外の、残り九国の王族はその後の、この国の公爵家として存続している。

当時のことを知るものは今はいないが、王家を皆殺しにしないあたり、ある程度理性に則った戦争だったのだろう。


とにかく、そういった長い長い闘争の歴史がこの国にはあって、そのおかげで古戦場跡には困らないのだ。



ちなみに。



九人いる現王の子は全てその公爵家の子孫でもある。そして俺の母親以外は全て違う継母だ。


お判り頂けたことだろう。


この皇位継承戦がかくも苛烈なものになるであろうことが。


まぁ、親父も1日限定の子種だから、とにかく身分の高い人から抱かないといけなかったんだろうなぁ。


補足として一つ。

九つあった公爵家の内一つは断絶している。

なんでもその家の当主は王族の全滅を図った特級の魔術士ので、どうやら呪いのスペシャリストであったらしい(笑)


「お、一際でかい怨霊を発見。さぞや名のある武将だったのだろうなぁ」


そうして俺はチュルンチュルンをひたすらに繰り返す。


熾烈極めるであろう継承戦を勝ち抜くため。

まず、強くなるために。



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