7-1 あと2日しかないですー
俺はついこの前、こんなことを考えていた。
“ 皇帝のみに許された隷属化の魔法ですら、主と従の魔力慣らしから始めて足掛け一年かかるのだ。
いくら俺でも人間を相手にして、一瞬で眷属化は無理である。
五時間。
とはいえ、全力でやればおそらくそのくらいで行けると思う。
俺との相性もあるので、それなりに前後するだろうが平均すればそのくらいで行けそうな感じだ。
いま、ざっと魔力を巡らせ見立てた。”
ふふふ。
「ふふふふ」
合計、七日間、かかりました。
「はっはっは」
あっはっはっは。
もう、ね?
なんかもう泣きそうだよ。
いやね、実はもうウルガーが終わった時点で、2日半経過してたんだよね。
もう、その時点で相当焦ったよね。
背中に冷たい汗、ダラダラかいてるような心地だったよね。
骨だから汗かかないけど。
このまま行ったら、普通に学園始まっちゃうじゃんって、思ったね。
流石の俺も、不味い、と思ったさ。
でもさ、もう一人やっちゃったしさ。
監視員と合流したら、眷属化は使えないしさ。
眷属化の優先順位が高いことには変わりないからさ。
やったよね。やけくそで。
死ぬ気でやって、もう全力全開でやったよ。
おかげで二人目以降は結構短縮できたけど、それでも七日かかりましたよ、ええ。
誰だよホント、一日ちょっとあれば終わるとかイキって奴。ぶっとばすぞ。
もう、超難しいし、めんどくさかったんだけど眷属化。
はぁ、もう。
あと2日しかなくなっちゃったじゃん。
あと2日で何が出来るのさ。
あーあ、なんかもうやんなっちゃうなー。
あーあー。
「我が君、プリンを作りましたよ」
「ありがとう」
骸骨形態の時、食べなくても大丈夫だけど、食べることはできる。
なんか謎空間にするんって入る。味もちゃんと感じる。前の異形の時は食事できなかったけど、イザナミとの融合以降は食事可だ。
ああ、プリンおいしい。
癒されるなぁ。プリン作った人は偉大だ。
「おいしいプリンはおいしいなぁ」
俺は無心でプリンを食べた。
「私の愛、全員を連れてまいりましたよ」
「あ、はい」
さて。
気を取り直すか。
凹んでてもなんも変わらないし。
向き合うとしましょう。
題して、「あと2日で何ができるの大問題」に。
ーーーー
「では貴様ら、ここまでの報告をせよ」
「「「「「はっ」」」」」
そこから、この七日間で彼らが何をしてくれたかの報告会が始まった。
まずウルガー。
彼に頼んだのは、俺らが今いるここ、旧ブラキリア領城の整備である。
居住スペースを整えてくれればいいな、くらいに思っていた。一応おじいちゃんだし、あんま働かせるのも気がひける、と思ってのことだ。
だが、それは余りにも要らぬ気遣いであった。
「では、こちらの資料をご覧ください」
「へ?」
数枚の紙にまとめられた情報を読み解く。
なんとそれは組織編成についての資料だった。
財源を管理する財務部。
民の戸籍作成を行う民事部。
農業畜産等の問題を解決管理する産業部。
その他の問題を取りまとめる総務部。
この四つの部署を設立する旨が書いてある。
財務部は、現在のブラキリア領の、食料の貯蔵や運営資金を一括管理する部署で、今後、領内での公的な金の動きは全て書面に残すらしい。行く行くは公的な銀行的業務も担うらしい。
民事部は、現状のブラキリア領民の戸籍作成に勤しむらしく、スラムの子等も含めて取りこぼしなく把握して救い上げるらしい。行く行くは税の管理も担うらしい。
産業部は、公営の第一次産業を立ち上げ、食料自給率の向上と領民の生活基盤固めをするらしい。農業畜産の指導も行い、行く行くは領民に農地を払い下げて民営化し、最終的にには農協的な部署を目指すらしい。
総務部は、現状インフラ整備を主な業務とし、行く行くは領全体の監督業務を担う部署になるらしい。
なんか、すごく頭のいいことを考えてらっしゃる。え?凄くない?
驚くべき事にそれ等はもう、領城内にオフィスを用意し、適正ある人間を配置し、すでに運営を始めているらしい。ちなみに全て事後承諾である。いや、いいけどさ。
え?まじ凄くない?
え?つまりもうこの城がブラキリア領の政治拠点として機能してるってこと?
しかも整理整頓掃除、全て済んでるの?この七日間で?
「まだ実務力が低い者が多く、実務と教育を同時に行なっている現状ですが、まぁ二月ほど頂ければ形にはなるでしょう」
「ウルガー……」
「はい、我が君」
「凄い、偉い、任した、頑張れ」
「ありがたき」
もう脱帽だよ。居住スペースを始めとした城全体と政務が整ってたよ。
たった7日で。スゴ。
「さぁママ、今度は僕の報告を聞いてよ」
「……ああ、うん。お願い」
俺は一息ついて、とりあえず気持ちを落ち着ける。
そして次の話を聞くのだった。