1/125
0日目
小雨の降りしきる夜だった。私は車を飛ばし、一路福岡へと向かっていた。
間に合うかどうかは分からない。私にできることは祈ることだけだった。
視界が滲んでいるのは、多分雨のためだけじゃない。
私は、この街に来ると決まってからの100日間を思い返した。私の人生は、この100日で大きく変わった。しかも、いい方に。
そして、そうなったのは間違いなく、彼のおかげだった。彼がいたからこそ、私はここまでやってこれた。
その彼の命は、まさに尽きようとしている。
「死ぬなっ」
私はふと呟いた。そうしたところで、何の意味もないと知っているのに。呟かずにいられなかった。
そして、この100日のことを思い返す。視界の滲みが、また強くなった気がした。
これは、ある少年が死ぬまでの物語。
懸命に生きた、ある少年の記録だ。