百合×薔薇『とあるアベック達の出産事情』
最終話です。
「あぁん! ちくしょう!」
「またダメだったね……」
私と純くんの視線の先には、培養に失敗した細胞の入ったシャーレ。私達二人は、この細胞に人生を懸けている。
だって、欲しいじゃん。子ども。
「くっそー、今度こそいけると思ったんだけどなぁ~……。あー俺、教授に報告してくるわ」
「うん、いってらっしゃ~い」
やっぱり同じ細胞をかけあわせると、どうしても足りないモノが出てくるっぽい。だから神様は遺伝子情報を「卵子」と「精子」に分けたんだ。
でも私……ううん、私達は諦めないよ。
ぜ~ったいに、私の卵子と興子ちゃんの卵子で、人間を造り出してみせる。……あ。純くんの精子と将矢くんの精子をかけあわせるのも、諦めないよ。
「おーい」
「興子ちゃん! それに将矢くんも!」
「ちょうど外回りの帰り道だったから寄りに来たぞ」
「僕は、家から差し入れを持ってきました」
「おお! サンドイッチ! 将矢くんナイス!」
「んで? どうだったよ?」
「ごめーん、またダメだったよ。だ・か・ら、もっかいだけ卵子採らせて?」
「ったく、しょーがねーなー」
「……とか言って、なんだか嬉しそうですね、興子さん」
「バっ、そんなワケ!」
「柚南、栄養ドリンク買ってきた…………将矢!」
「家でサンドイッチ作ってきたよ」
「マジか! さすが俺の運命の男!」
「あはは。純くんにそう言ってもらえると嬉しいなぁ。……さ、みんなで食べようか」
「あ、悪いもう食ってたわ」
「もー、興子ちゃん『いただきます』は!」
「言ってない」
「ダメだよ、ちゃんと作った人達と素材に感謝しないと」
「サンキュー将矢。あとレタスと愉快な仲間達」
「どういたしまして」
「んー……まあ、それでいいや。純くん、私達も食べよーよ」
「おう!」
「……どうかな? 初めてマスタードを作ってみたんだけど」
「すげぇ! めちゃくちゃうめぇよ! 美味すぎて死ぬ!」
「あ、純くん口にマスタード付いてるよ? ……はい、取れた」
「おー、わりーな柚南」
「………………柚南……?」
「うん?」
「お前、アタシがいない所でも……っつーか研究室の他の奴らにもそーゆー優しさ振り撒いてんじゃねーだろーなー!」
「し、してないよー! 私の大切な人は、興子ちゃんただ一人だけ! ね?」
「お、俺はただ拭いてもらっただけだぞ! なんもしてねーぞ! だから将矢! そう怖い顔すんなよ! ひいぃっ!」
「……ほんとに?」
「ほんとホント! マジだって!」
「……じゃあ、許す」
「ふぅーっ……」
「……アタシも今の将矢みたいにキレた方がよかったか」
「興子ちゃん勘弁してつかぁさい……」
…………こんな風に、これからも四人で楽しく過ごせたらいいな……なんて。
思ってない。
必ず、六人で笑い合える日々を迎えてみせるよ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




