旧友
「待たせたな。」
「あっ、タカヤさん!」
特訓を終え、俺らはギルドに来た。
既にリースとジェラルドはギルドの席に座って待っていた。
「ん? 後ろの方は?」
リースは俺らの後ろにいる人に気が付いた。
そう、先程出会ったバルザックだ。
「彼はバルザック。」
「よろしくな!」
バルザックとはここに来る途中に仲良くなり、タメ口で話す中になった。
というか、彼にタメ口で話してくれと説得された。
そういうことを指摘する人が多い世界だなぁ・・・。
「私はリースです。」
リースはバルザックと握手をした。
身長差で最初はぎこちなかったが・・・。
「ん?」
ふとバルザックがジェラルドを見た。
そして体もジェラルドの方を向けた。
「なあ、もしかしてジェラルドか・・・?」
俺とリースは思わず「え?」と言ってしまった。
ジェラルドと知り合いという事か?
そういえば、バルザックは他のところから『シーアン』に来たと言っていたから、もしかして・・・。
「もしかして、バルザックって『サンテン』にいた?」
「おお、よくわかったな。」
ジェラルドが『メガスリトス』に来る前にいた町の名が『サンテン』だった。
そして、どうやらバルザックも『サンテン』にいたようだ。
「それにしても久しぶりだなジェラルド!」
「あ、ああ・・・。」
ジェラルドは、なぜか汗をかいていた。
・・・なにか隠しているな。
「あれ? でも前、『サンテン』には友人がいなかったとジェラルド言ってなかったっけ?」
「なんだと? どういうことだジェラルド!?」
バルザックが前に出てきて、机を挟んでジェラルドを問い詰めた。
・・・嘘をついたのか?
「いや、俺が『メガスリトス』に移った頃には、もうバルザックは『サンテン』を出て行ってたんだって。」
ああ、なるほど。
確かにそれなら「友人がいない」というのは間違いではないかもな。
・・・だが、バルザックはまだ納得してない様子だった。
「それもありがたいが、俺が言ってるのは"モモ"のことだ!」
モモ・・・?
アクセントからして人の名前か。
「アイツは友達ではないだろ・・・。」
「でも仲良かったじゃないか。」
「あれは振り回されてただけだ・・・。」
なんか昔の話を聞いてみたいな。
面白そうだ。
「そうなのか? お前らが付き合ってるって噂も出てたぞ?」
「おいおい、やめてくれよ・・・。」
そこまで拒否するのか・・・。
一体モモって人は、どんな人なんだ・・・?
「『サンテン』を出るときに何か言われなかったか?」
「いや、朝一番に出発したから誰にも会ってねえよ。」
「え!? アイツの性格からしてめちゃくちゃ怒ってるんじゃ・・・?」
「たぶん再会したら殺されるかもな・・・。」
なんか話が殺伐としてきたぞ。
一体なにをしてたんだ?
「一度帰って、謝った方が良いんじゃねえか?」
「う~む・・・。」
ジェラルドが考え出した。
超本気で。
「と、とりあえず、しばらく『シーアン』で生活をしてから考えることにする。」
「お、おう・・・。」
ジェラルドは凄い汗を流している。
それほどモモという人が怖いのか・・・。
しばらくしてバルザックは向かいの席に座って、ジェラルドと昔の話していた。
俺たちも一応空いてるところに座っていた。
「"フォッグ"と"チェイン"とかはどうだった?」
「アイツらは相変わらずさ。」
「やっぱりか。」
また新しい名前が出てきたな。
まあ、ジェラルドの過去を知らない俺たちは当然蚊帳の外になってしまう。
「あー、フォッグが前に話したリザードマンだ。 ちなみにチェインはダークエルフだ。」
俺らを除け者にしないためなのか、説明をしてくれた。
前に話したモンスターではないリザードマンのことだな。
「アイツらって、やっぱり付き合ってたのか?」
「らしいぞ。 堂々と公開しやがったぜ。」
「マジか!?」
「お前が出て行ってから5日後の出来事だったな。」
「うわ、超見たかったなー!」
本当に友達同士の会話だった。
なんか高校生っぽいが・・・。
「というか、態度が露骨過ぎただろ。 正直公開しても、周りの反応は「やっぱり」や「知ってた」って感じだったぞ。」
「まあそうだな。 逆にあれで付き合ってなかったらおかしいよな。」
二人はゲラゲラと笑っている。
・・・やっぱり俺らは蚊帳の外だった。
約一名を除いて。
「『サンテン』ってどういうところだったのですか?」
リースだ。
彼女は興味津々の様子だった。
「山の上にある町さ。」
「別名「修行者の町」とも言われていたさ。」
「修行者の町」・・・。
なんかいい響きだな。
山の上にあるからか?
「そういや、マグナラバマウンテンの調子はどうだった? 前々から違和感を感じるとかお偉いさんが言ってたが・・・?」
「特に問題はなかったようだが・・・?」
「そうか。 それならいいが・・・。」
・・・なんか気になることを言ってるな。
もしも『サンテン』に行った際には気を付けよう。
「んじゃ、俺は行くぜ。」
「またな。」
バルザックは依頼へ向かった。
彼はどうやら単独のようだ。
「ジェラルド。 『サンテン』では何をやっていたんだ?」
「まあ、「厄介な女に付き纏われていた」ってところだ。」
「な、なるほど・・・。」
深くは聞かない方が良いのかな?
と、とりあえず、これ以上聞くのはやめよう。
「ところで、今日はどうする?」
ジェラルドが話題を変えてきた。
・・・何も言うまい。
「あの・・・、また街での依頼を受けていいですか?」
リースが遠慮気味に聞いてきた。
そういえば、ここのところ街での依頼ばっかりだな。
「また街か?」
「はい。 まだ『シーアン』のことを知りませんし。」
・・・これはしばらく街中の依頼をしそうだな。
外へ行くのは何日後になるか・・・。
ともかく、俺らは依頼書が張り出されているボードの前で、依頼を選んでいた。
「≪配管の修理≫、≪ペット探し≫、≪落とし物捜索≫・・・。 これ本当に冒険者の仕事なのか?」
「まあ、これじゃ「なんでも屋」だな・・・。」
ジェラルドは苦笑いしていた。
・・・なんか冒険者というものが分からなくなってきた。
本当に「冒険者」なんだよな・・・?
「まあ、世の中には弱いモンスターも倒せない冒険者もいるから、その救済処置だろうな。」
「それ、冒険者を名乗っていいのか?」
「さあ?」
・・・この話はしない方が良いのかな?
まあ、なにも得はしないだろうな。
「コレは?」
ヴァニラが一枚の依頼書に人差し指を向けた。
・・・≪材木の生産≫。
「ヴァニラ、なぜこの依頼を選んだ・・・?」
「いや、マスターが好きそうかなと・・・。」
まあ、筋トレにはなるかもな・・・。
だがそれは朝のトレーニングだけで十分だ。
「・・・あの、コレはどうでしょうか?」
リースが控えめに、一枚の依頼書を指した。
・・・≪護衛任務≫。
「ほう、護衛か・・・。」
「・・・だが、なんの護衛だ?」
俺らはしばらく悩んだ。
すると、リースが受付に向かって歩いていた。
「あの、すみません。」
「は、はい・・・?」
なにかを書いていた受付嬢さんは書いてる手を止め、リースの対応をし始めた。
リースは依頼のボードを指しながら、受付嬢さんに聞いた。
「依頼にあります≪護衛任務≫の「護衛」とは、一体なんの護衛なのですか?」
なるほど、受付嬢さんに聞いたわけか。
でも、教えてくれるのか?
「なんでも、依頼者がスラムに用事があるらしく、その護衛をしてほしいとのこと。」
教えてくれた。
「この街にスラムなんてあるのか?」
ジェラルドも受付に近づいて、質問をした。
「はい。 ただ危険なところのため、一般人は立ち入り禁止となっているのです。」
スラムか・・・。
つまり、最悪の場合は人間を相手にするわけか・・・。
リースが嫌いそうな依頼だな。
「ありがとうございます。」
リースはお礼を言って、再び依頼ボードのところまで戻ってきた。
ジェラルドも同様。
「決めました。 この依頼にします!」
・・・意外だった。
リースは本当に意味を分かっているのか?
「スラムは貧困者故に危険な人もいるんだぞ? 最悪人間と戦うことになるがいいのか?」
俺はちゃんと説明をした。
リースはしばらく間をおいて、喋り出した。
「わかっています。 ですが、それを含めて知らなければならない気がします。」
それがリースが出した答えか。
相変わらず真面目な人だ。
「・・・わかりました。 この依頼を受けましょう。」
正直あまり乗り気ではなかったが、リースが選んだのなら仕方ない。
俺も一肌脱ぐか。
「ありがとうございます!!」
リースは元気よくお礼を言った。
兜を被っているから表情はわからないが、おそらく笑顔なのだろうな。
「ジェラルドとヴァニラもいいか?」
「ああ、大丈夫だ。」
「マスターとなら、どこでも。」
二人も大丈夫のようだな。
まあ、命令を絶対に聞くヴァニラは聞くまでもなかったか。
さてと、今回の依頼は少々危険かもな・・・。




