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イセカイテンセイ・・・? なんじゃそりゃ!!? ~予測不能な異世界生活~  作者: サムライドラゴン
海上の大都市「シーアン」
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武闘家バルザック


 今回は悪夢を見なかったので、目覚めは良かった。

 ・・・少々寝るのが遅れたが、問題ない。


 ヴァニラとリースはまだ寝ている。

 ジェラルドも同様だ。


 俺が一番早く起きるのはいつものことだ。


 ・・・久々に特訓をするか。



 俺はドアを出ようとした。

 その瞬間、背後から「ドシン!」という音が聞こえた。

 その音につられ、俺は振り返った。


 パッと見では何も変わってないように思えたが、明らかに違うところがあった。

 さっきまで寝ていたベッドだ。

 ベッドの上にはリースしかいなかった。

 つまり、ヴァニラがいなかったのである。


 当然ヴァニラはベッドから落ちていた。

 さすがにその強い衝撃によって起きてしまった。


「いたたたた・・・。」


 頭を押さえながら、ゆっくりと立ち上がるヴァニラ。

 半目で俺を見つめてきた。


「マ・・・、マスター・・・?」


 寝起きでボンヤリしていた。



 そして、なぜこのようなことが起こったか、俺は思い出したのだった。

 すっかり忘れていたことを・・・。


 俺とヴァニラは、呪いによって離れることができない。

 離れたとしても、見えない壁に押されて運ばれる。

 さっきのヴァニラのように・・・。



「す、すまねえヴァニラ・・・。 すっかり忘れてたぜ・・・。」


 俺は謝罪の意味も込めて、ヴァニラの頭を撫でた。

 ヴァニラは状況が()み込めていなさそうな雰囲気だったが、頭を撫でられると大人しくなった。

 まるでペットだな。






 俺は今、『シーアン』の街を歩いている。

 ヴァニラは、仕方ないから着替えをさせて同行させた。

 もちろん置手紙(おきてがみ)もしてきた。


「マスターも真面目ですね。 魔剣をうまく扱えば楽に強くなれると思いますよ?」

「そんな「力」は(まが)い物だ。 本当の「力」というモノは自分で努力して手に入れるモノなのさ。」

「そんなもんなんですか?」


 思わず偉そうに説明してしまった。

 だが、気付いたところでもう遅い。

 おそらくこの言葉は、ヴァニラの記憶に残ってしまうだろうな。



「それにしても、いい天気ですね。」


 ヴァニラは突然そんなことを言い出した。

 言葉に釣られるように、俺も空を見上げた。


 空は青く、雲も少々浮かんでおり、太陽が輝いている。

 まさに「いい天気」であった。


「今日は(はかど)りそうだ。 悪夢も見なかったし。」


 そう独り言を言うと、ヴァニラが言葉に反応した。


「悪夢?」

「ああ、昨日悪夢を見たんだ。」


 そういえば、その悪夢を見た後にヴァニラと出会ったな。

 なんとも不思議なことだ。


「あー、おそらく魔剣の呪いによるものですね・・・。」

「・・・なんだって?」


 え?

 今なんか変なことを聞いたような・・・。


「前の持ち主も、魔剣を拾ってから最初に見た夢が「悪夢」だったそうです。 ですから、おそらく魔剣の呪いか、使い魔との契約儀式のようなものだと思いますね・・・。」


 ・・・ほう。

 そうだったのか・・・。


 そういえば魔剣を拾い、悪夢を見て、ヴァニラが現れた。

 確かに可能性は高いな・・・。

 内容は覚えてないが、汗が沢山出るほどの悪夢だったしな・・・。


「この魔剣はどこまで俺を苦しめるつもりだ?」

「まあ、魔剣ですし。」


 そうか。

 「魔剣」なら仕方ない。


 ・・・とでも言うと思ったか?






「ここならいいかもしれん。」


 周りは広い。

 そして人もいない。

 なにより自然豊かだ。


「って、ここ平原じゃないですか!!」

「だって『シーアン』じゃ人の迷惑になるだろ?」


 『メガスリトス』の時もそうだったが、やはり街の外の平原で特訓した方がいいと、俺は思う。

 なにより体を大きく動かせるからな。


「さてと。 一時間後にはギルドで合流しないといけないし、早速始めるか。」


 早速特訓を始めようとした。

 ・・・だが、少し思ったことがあった。


「あー・・・、ヴァニラも一緒にするか?」

「いえ。 私はここで座って待ってます。」


 そう言って、草が生えた地面に腰を下ろした。


「あー、そうかい。」


 俺は気にせず特訓を開始した。

 魔剣は邪魔になるからヴァニラの近くに置いておいた。




 まずは、腹筋・背筋・腕立て伏せ・スクワット。

 そしてその後は、木を敵に見立てて戦闘シミュレーションをする。


 一見何の役にも立たなそうだが、今はそれでいい。

 後々になって役に立つ・・・と俺は思っている。

 まあ、何もしないよりはマシだろう。






「ふぅ・・・。」


 さすがに久々だと疲れが出やすいな・・・。

 こんなんじゃリースや皆を守ることができねえじゃねえか。




「なにをしてる?」


 !?

 後ろから声をかけられた。


 慌てて振り返ると、そこには一人の男が立っていた。

 背が高く筋肉質で、頭はグリフォスさんのように毛が見えないほど剃られた坊主頭だった。

 ジェラルドと同等かそれ以上の筋肉だった。

 上半身がほぼ裸だが、ズボンは穿()いており、腰に布を巻いている。

 また、太ももに緑色のバンダナを巻いている。

 つまり、「Bランク」の冒険者だな。

 服装から判断するに『武闘家』だと思われる。


「戦いのための特訓です。」


 俺は正直に話した。

 あと、初対面なので敬語は使っておく。


「なるほど。 それは感心だな。」


 男は笑顔を見せながら、俺を褒めてくれた。


「おっさん誰?」

「こら、ヴァニラ!!」


 俺が(しか)るとヴァニラは「ひっ!」という声をあげて驚いていた。

 だが武闘家は全く気にせず、ヴァニラの質問に答えた。


「俺は数週間前に『シーアン』にやってきた冒険者の"バルザック"だ。」

「自分はタカヤ。 こっちはヴァニラです。」


 バルザックは手を差し出してきたので、俺はそれに答えて握手をした。

 力は入っていないはずだが、かすかに強い握力を感じた。

 まあ、この体を見れば納得だが。




「ところでタカヤ。 どうやらお前は「Gランク」のようだな。」

「はい。」


 俺の腕に巻いているバンダナを見たのだろう。

 俺のバンダナは最下位の「Gランク」を表す白いバンダナだ。


「昇格審査は?」

「8日後に初めて受ける予定です。」

「そうか。」


 すると、バルザックは考え込んだと思ったらすぐに口を開いた。


「なあ、ちょっと手合わせをさせてくれないか?」

「え!?」


 そう言ってきた。


「もしかしたら、有望(ゆうぼう)かもしれんからな。 成長前に戦っておくのは貴重だからな。」

「は、はぁ・・・。」


 もしかして、冒険者全員にやってるのか?

 ・・・そうなると、いつかリースやライラにも言ってくるかもな。


「いいですよ。」


 それはともかく、俺は了承(りょうしょう)した。

 特訓にもなりそうだしな。


「それはよかった。」


 バルザックは嬉しそうだった。






「よし、かかって来い!」


 バルザックはまるでゴールキーパーのようなポーズを取って構えている。

 まずは俺の力を試すつもりか。


「あー、本気でですか?」

「ああ、そうだ。 俺は頑丈だから大丈夫さ。」


 うむ・・・、不安だな。

 何の恨みもない人を殴るのは気が引けるな・・・。

 ・・・まあ、ボクシングだと思えばいいか。


「んじゃ、行きます。」

「来い!」


 その言葉と同時に、俺は地面を蹴った。

 そして前方のバルザックに向かって一直線に()けた。


 距離を詰めたところで本気でパンチを放った。

 だが、予想通りバルザックは腕を胸の前で交差させてガードした。

 腕に拳をぶつけた瞬間、バルザックの口から「う・・・!」という言葉がこぼれた。

 そして一歩後退った。


「悪くない力だ。 これは思った以上の逸材(いつざい)かもしれん・・・。」


 ・・・まあ、パルフェから貰った「力」の補正もあるしな。

 そう思うと、なんか済まなく思うが・・・。


「さあ、続けてかかってこい!!」

「はいっ!」


 俺が連続で殴り()かった。

 しかしバルザックにガードをされ、また避けられることもあった。

 ・・・だがそれより、俺は気になることがあった。


「なぜ、攻撃をしてこないんですか?」


 そう、さっきからバルザックは攻撃をせずに防御や回避ばかりをしていた。

 何かの作戦なのだろうか?

 ・・・だが、バルザックは答えは違った。


「え、攻撃していいのか?」


 ・・・これである。

 なんか舐められてる?


「当たり前ですよ! 手合わせなのですから!!」


 俺は腕を広げながら、そう(うった)えた。

 するとバルザックはニヤリと笑い、首を鳴らした。


「そうか・・・。 じゃあ遠慮なくいくぞ!」


 そういうとバルザックは俺に一直線で走ってきて、パンチを放ってきた。

 俺は透かさず腕でガードをした。

 だが、衝撃が半端なかった。

 俺のガードは崩された。


 そしてバルザックは攻撃を止めなかった。

 目の前でしゃがみ、俺のアゴ目掛けてアッパーを放ってきた。

 ・・・だが、寸止めをされた。


「俺の勝ちだ。」


 そう一言、バルザックは言った。

 アゴを狙っていた腕を引っ込めた。

 俺は思わず腰が抜け、地面に尻餅(しりもち)をついた


「だが、中々の腕だ。 将来が楽しみだ。」


 そう言って、バルザックは腕を差し出してきた。

 俺はバルザックは手を掴み、立ち上がった。



 ・・・今回学んだことは、防御力も必要だということだな。

 いくら「力」のおかげで頑丈だからと言って、それで安心してはいけねえな。

 次の特訓からは意識しねえとな。

 そしていつかは、俺もこんな体になりたいぜ・・・。


 俺はバルザックを体を見ながら、そう思った。






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