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イセカイテンセイ・・・? なんじゃそりゃ!!? ~予測不能な異世界生活~  作者: サムライドラゴン
海上の大都市「シーアン」
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マックの決断


 バレルボア。

 体が(たる)のように太いからそう呼ばれているのだろうな。


 しかし、あのジェラルドを吹っ飛ばしたほどの力の持ち主・・・。

 油断はできないな。



 俺らはそれぞれ、戦闘態勢をとった。

 俺は腕を鳴らし、リースは剣を構え、マックは魔導書を開き、ライラは剣と盾を構える。

 ただ一人、ヴァニラは何をすればいいか分からず、戸惑(とまど)っていた。

 だが、俺は構わずバレルボアに(そな)えた。


「俺が攻撃を仕掛けて、ライラがトドメを刺す。 場合によっては三人が援護をする。 そんな感じでいいか?」


 俺が勝手に作戦を立てた。

 ・・・作戦と呼べるほど立派なものではないが。


 それに対し、マックとリースが無言で(うなず)いた。

 ライラはおそらく、少し自信が無いのだろう。

 ヴァニラは・・・、相変わらず戸惑っている。




 俺は正面からバレルボアに突っ込んでいった。

 当然バレルボアも突撃してきた。

 だが、ジェラルドを吹っ飛ばした威力の突進を、俺が受け止められるわけがない。


 俺はすぐに横へ回転しながら跳んだ。

 そして地面に足をついた瞬間に、バレルボアの横っ腹目掛けて飛び蹴りを放った。

 その衝撃でバレルボアは横へ倒れ、ズザザーっと地面を側面で滑っていた。



「今だ、ライラ!!」


 マックがそう言った瞬間、ライラは走り出した。

 そして倒れたバレルボア目掛けて剣を振り下ろした。

 剣でバレルボアを切り裂いた時のみに『聖剣技』を使い、バレルボアを真っ二つに切り裂いた。

 二つに分かれたバレルボアは血を流しながら、そのまま木々の中へと消えていった。


「や・・・、やりました・・・!!」


 ライラは自分のしたことに対して驚いていた。

 それと同時に、やや嬉しそうな声色(こわいろ)だった。


「・・・やるじゃないか。」


 既に魔導書をしまっていたマックは、腕を組みながらニヤニヤとした表情で、ライラを称賛(しょうさん)した。

 まるで、子供の成長を喜ぶ親のように。


 ライラはホッとしたのか、『聖剣技』の影響なのか、膝から崩れ落ちた。

 そして「ハァハァ」と息を吐いていた。



「・・・ん? もう終わったのか?」


 後ろで倒れていたジェラルドが意識を取り戻した。

 まるで寝起きのように。






 俺らは依頼達成の証明書を貰い、帰路(きろ)を歩いていた。


 「依頼者さん喜んでましたね。」


 リースが話しかけてきた。

 兜でわからないが、声色からして笑顔だろうな。


 バレルボアが危険なモンスターだということは、今回の一件でよく理解した。

 確かにヤツを野放しにしておくと、危険だろうな。

 実際、家を壊された人がいたらしいしな。




「今日の特訓で、お前は『聖剣技』の正しい使い方をほぼマスターした。 あとは「体力」さえ身に着ければ、お前は一人前となるはずだ。」

「はい! がんばります!!」


 本当にこの二人は師弟(してい)のようだな。

 『メガスリトス』にいた頃も、仲が良かったしな。


「・・・問題は今後どうするかだな。」


 マックが腕を組みながら考えていた。

 歩きながら、目をつぶってしばらく考え込んでいた。

 そして数秒後、目を開いて口を開いた。


「なあ、頼みがあるんだが。」


 マックに話しかけられたのは俺たち三人だった。

 俺と、リースと、ジェラルドだ。



 そして、次の言葉を言った。


「一時的にパーティを離れていいか?」


 予想外の頼みだった。

 リースが思わず「え!?」と言って、足を止めた。

 俺らも同様に足を止めて、マックを見た。


「しばらくライラの特訓に付き合おうかと思うんだ。 だから一時的にパーティを離れようと思うんだ。」

「マック様・・・。」


 そういうことか。

 確かにライラのためにはなるな。


 ・・・だが、これを決めるのはリースだ。

 彼女を中心にパーティは大体動いている。

 彼女が「NO」と言えばダメだ。


 ジェラルドも、俺と同じことを思ったのだろう。

 俺と同様にリースの顔・・・、というより兜を見ている。



 しばらくリースは黙っていた。

 しかし、予想外にも早く答えを出した。


「いいですよ。 ライラをよろしくお願いします!」


 リースはそう言いながら、礼をした。


 そういえばライラはリースの友達だったな。

 友達のためなら当然か・・・。


「ありがとう。 必ず戻るから、しばらくは三人で頑張っててくれ。」


 マックは俺らを順番に見ながら、そう言った。

 すると、俺の後ろからヴァニラが顔を出してマックに向かって指をさした。


「三人じゃなくて、四人だよ!」

「ハハッ、そうだったな。」


 マックは「すまない」と言いながら、ヴァニラの頭を撫でた。




「すみません。 ご迷惑をおかけして・・・。」


 ライラが頭を下げて謝罪してきた。

 ・・・だが、俺らの答えは決まっていた。


「いや、大丈夫だ。 それより、特訓頑張れよ。」


 俺らは、ライラを応援した。

 これから先、彼女は少しずつ変わっていくのだろう。


「ありがとうございます!」


 ライラは再び頭を下げた。

 律儀(りちぎ)な人だ。






 『シーアン』の街は、すっかり暗くなっていた。

 人通りも少なくなっている。


「じゃあ、ここで別れるとしよう。 報酬はお前達で分けてくれ。」

「では、ごきげんよう。」


 そう言うと、マックとライラはさっさと何処(どこ)かへ行ってしまった。

 喋る暇もなかった。


「報酬ぐらい貰っていけばいいのに・・・。」


 まあ、付き合わせてしまったという彼らなりの謝礼(しゃれい)なのだろう。



「そういえば、宿の部屋割りはどうなるんだ?」

「あっ!!」


 大切なことを忘れていた。

 マックがいなくなったら、二つの部屋を使えなくなってしまうじゃないか。

 あ、でも待てよ・・・。


「俺とヴァニラは離すことができないから、リースとジェラルドが同じ部屋で寝るのはどうだ?」

「な、なんだと!!?」


 ジェラルドがすげえ焦っている。

 まあ俺はともかく、ジェラルドはリースの寝間着(ねまき)姿は慣れていないだろうな・・・。


 ・・・待てよ。

 それが災いしてリースの純真さが失われたらヤバいかも・・・。

 ジェラルドを信用していないわけではないが、もしもの時があるしなぁ・・・。


 そんな感じで一人で考えていたら、ヴァニラが口を開いた。


「私、マスターと一緒のベッドで寝たいです。」

「・・・なんだって?」


 ヴァニラが突然わけのわからんことを言ってきた。


「マスターの隣にいないと、落ち着かないのですよ。」


 ・・・そういえばコイツ。

 初めて会った時も俺の隣で寝ていたな・・・。


「そうか、じゃあ決まりだな! 俺が一つのベッドで寝て、タカヤとリースとヴァニラがもう一つのベッドで寝るという事に決定だ!!」

「へあっ!!? ちょ、ちょっと待てぇ!!」


 勝手にジェラルドが決めようとした。

 これは何としても阻止せねば・・・!!


「私もそれでいいと思います。」

「・・・ええっ!?」


 リースまでが賛同した。

 何故だ!!


「一つのベッドを空けるのは勿体(もったい)ないですし。」

「いや、でも・・・。」


 何とか反論せねば・・・。

 そう思った矢先、ジェラルドが肩を叩いて俺に(ささや)いてきた。


「リースの判断は絶対なんだろ?」


 ニヤけながらジェラルドが言ってきた。

 初めてジェラルドにムカついてしまった。

 しかし、何も反論が思いつかなかった・・・。


「んじゃ、ギルドで報酬を貰ったら宿屋に泊まろうぜ!」


 ジェラルドはそう言って、ギルドがある方向に歩み出した。



 ・・・マジで、どうなっちまうんだ俺。






 そして、問題の宿屋のターン。


 本当に一室しか取らなかった・・・。

 最悪だ・・・。



 リースは現在、洗面所で体を洗っている。

 俺、ジェラルド、ついでにヴァニラは既に洗い終えて、部屋で集まっていた。


「んじゃ、俺はもう寝るぞ。」


 そう言ってジェラルドは二つあるベッドの内の一つを独占した。

 装備を外してベッドに横になっている姿は、完全にただのおっさんだった。


「はぁ・・・。」

「どうしましたマスター?」

「どうもこうもねえよ・・・。」


 またリースと一緒のベッドで寝るとなると、考えただけで疲れが出る・・・。

 しかも今回からはヴァニラもいる。

 俺がロリコンじゃなくて本当に幸運だった・・・。


 ・・・ん?

 待てよ・・・。


「なあヴァニラ。 頼みたいことがあるんだが・・・。」

「なんです?」


 ・・・そうか。

 この手があったか・・・。






「では、おやすみなさい。」

「ああ、また明日。」


 俺ら三人は一つのベッドで眠っている。


 前までは色々と苦労していた俺だが、今回は違った。

 今回は"ヴァニラ"がいるからな。


「サンキューな、ヴァニラ。」

「よく分かりませんが、お役に立てて光栄です。」


 俺の策はこうだ。

 俺とリースの間にヴァニラを(はさ)む作戦だ。

 結果・・・、見事成功した。


 大人のリースはともかく、子供のヴァニラには一切意識など俺はしない。

 俺はロリコンではないからな。

 例えるなら、妹と寝る感覚だ。


 間にヴァニラがいるため、リースとの距離もできた。

 ・・・少々いい香りが漂ってくるが、まあたぶん問題ないだろう。



 そんなことを考えているうちに、ヴァニラはすっかり眠りについていた。

 ・・・俺も寝るか。




 今日も色々なことがあった。

 ライラが特訓で強くなり、マックが一時的に抜けることになった。


 明日はどんなことがあるか楽しみだ。




 ・・・ところで、また悪夢を見たりしねえよな?


 俺は別のことで、また寝付くのに苦労するハメになった。






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