使い魔ちゃん、普通の女の子になる(?)
「それにしても、結構汚れていますね。」
使い魔・ヴァニラが、しゃがんで魔剣を見ながらそう言った。
「そういえば、魔剣というにはかなり色が綺麗じゃねえか?」
魔剣の色は明るめだった。
握り部分は青く、刃は綺麗な銀色をしていた。
・・・あくまで綺麗なところだけだが。
「前の持ち主が「趣味じゃない」と言って上から塗り直していましたからね。 持つところは灰色、刃は紫だったんです。」
へぇー・・・。
・・・ん?
それって・・・。
「ということは、この灰色部分と紫部分は汚れているわけじゃなく、こっちが本来の色だったんか・・・!」
そう言われてみたら、確かに青部分と銀部分の方がどことなく違和感があるな・・・。
というか明らかに剥がれているな・・・。
・・・なぜ気付かなかったんだろう。
「とりあえず、この事をジェラルドたちにも伝えておこう。」
俺がそういうと同時に、ドアが開いた。
「よう、タカヤ、リース、起きてるか?」
ジェラルドが勝手に入ってきた。
少し遅れて後ろからマックも入ってきた。
なんともタイミングがいい・・・。
「あー、二人共、話があるんだが・・・。」
俺が説明をしようとする前に、二人がヴァニラの存在に気が付いた。
しばらく目をぱちくりさせ、固まっていた。
そして口を開いた。
「タカヤ、どこで拾ってきたんだ?」
「はぁ!?」
思わず叫んじまった。
ジェラルドが変なことを言ってきたから当然だろ?
「自首するなら今のうちだぞ?」
マックまで冗談を言ってきた。
なんとも愉快な方たちだ。
「違う違う。 俺の話を聞け!」
俺はすぐに説明を始めた。
二人のボケに付き合っている暇はないからな。
数分後、無事に説明を終えた。
「これが呪われた魔剣・・・。」
「なんとも信じられねえ話だな。」
なんとか二人は理解してくれたようだ。
「だが、コイツが証拠だ。 見たところツノや羽や尻尾は本物だしな。」
俺はヴァニラの方を見ながら言った。
すると、ヴァニラは証明するように羽や尻尾を動かしてみせた。
「コスプレイヤーってわけでは無さそうだな。」
「さっきの剣の動きもマジックでは無さそうだったしな。」
二人が納得してくれた。
"コスプレイヤー"や"マジック"とかの用語を知っていることはこの際気にしなかった。
まあ、マジックに関しては「魔法」があるし、普通にあるか。
「じゃあ、俺らが依頼に行っている間は宿屋で留守番でもさせるか?」
ジェラルドが話を変えてきた。
まあ、悪魔を連れて街は歩けないだろうし、普通はそうなるだろうな。
・・・だが、ここで新たな情報が入った。
「それは無理です。 私は魔剣同様、マスターから離れることはできません。」
「・・・え?」
「当然でしょう。」
・・・まあ、なんとなくそんな感じではないかと思ったが。
というか、思いたくなくて避けていたと言った方が正しいな・・・。
はははは・・・。
「だ、だが・・・。 コイツを表に出すには、ちと格好が・・・。」
「そ、そうだな・・・。」
二人はヴァニラの格好を見て、困った顔をしている。
まあ、理由は分かっていた。
・・・おそらくリースは分かってなさそうだったが。
「・・・服を買うか。」
「それだ。」
マックが提案をし、ジェラルドが指をさして賛成した。
「だけど誰が買うんだ? 子供の服を買う理由を店の人に問われたらどうする?」
提案に対して、俺は否定するわけではないが質問をした。
俺やジェラルド、マックが女の子用の服を買うわけにはいかない。
となると、一人しかいないな。
「リース。 よろしく頼んだ。」
「任せてください!」
甲冑を身に着けたリースが、胸を叩いた。
鉄と鉄がぶつかる音がした。
そしてキビキビとした動きで部屋を後にしていった。
・・・服を買う理由を聞かずに行ってくれたのは幸いだった。
説明によっては彼女の純真さに影響を与えてしまうかもしれねえからな。
「あとはリースの帰りを待つだけだな。」
ジェラルドが置いてあった椅子に腰を掛けて寛ぎながら、そう発言した。
マックも地面に座って、頷いていた。
・・・しかし、本当に大丈夫だろうか。
いや、リースを信用しよう!
それが仲間という奴だ!!
数十分後、リースが戻ってきた。
「買ってきました!」
「待ってました。」
俺はリースから服を受け取った。
・・・ん?
この服は・・・。
「どうした?」
後ろからジェラルドが声をかけてきた。
「いや、この服・・・。」
俺はリースが買ってきた服を広げて、三人に見せた。
すると、三人の表情がみるみる変わっていった。
「こ、これは・・・、な、なんというか・・・。」
「なんで中央にオオカミの顔がデカデカとあるんだ・・・?」
「・・・。」
マックの説明通り、サイズは子供の服なのだが、中央にオオカミの顔がプリントされた服だった。
・・・なぜこれを選んだんだ?
「オオカミ、カッコいいでしょ?」
・・・なるほど。
リースの趣味だったわけか・・・。
・・・とりあえず俺はヴァニラの近くへ行った。
「・・・!! ま、まさかマスター・・・。」
「バンザイをしろ。」
俺はヴァニラに服を着せるために構えた。
「き、着るのですか・・・?」
「俺の使い魔なら命令を聞け。」
試しにそう言ってみた。
すると次の瞬間、ヴァニラはバンザイをした。
・・・本当に従ってくれるんだな。
「私、あんまり好みじゃないんですが・・・。」
「せっかくリースが買ってきてくれたんだ。 ワガママ言うな。」
そうだ。
リースが買ってくれたのだから、着なきゃ失礼だろう。
ヴァニラには悪いが犠牲になってもらおう。
俺は子供の着替えをさせるように、ヴァニラに服を着せた。
・・・しかし、ここである問題が起きた。
「羽が邪魔だな・・・。」
「あ、本当だ。」
今更気付いた俺たちだった。
なんで今まで気づかなかったんだろうか。
「少し体に巻き付けることはできないか?」
「まあ、できますが・・・。」
幸い、ヴァニラの羽は大きくはなかった。
巻き付けると言っても、先の部分だけだ。
そして、今度こそ俺はヴァニラに服を着せた。
羽をたたんでくれたおかげで、今度は無事に服を着ることができた。
・・・だが、ヴァニラは明らかに微妙な表情だった。
まあ、このデザインだしな・・・。
センス以前に、女の子が着る服ではねえからな・・・。
「まあ、でもカワイイじゃねえか。」
「そうだな。」
ジェラルドとマックが後ろからコメントをした。
まあ、子供は大体何着てもカワイイだろうな。
ファッションなんか気にしなくていいんだよ。
「あの、タカヤさん。 これをどうぞ。」
俺がリースの方を振り返ると、リースがミニスカートを持っていた。
どうやらボトムも忘れずに買ってきてくれたようだ。
俺はミニスカートを受け取り、ヴァニラの方を向いた。
すると、ヴァニラはホッとしていた。
「それは普通のようですね・・・。」
「よかったな・・・。」
そう言いながら、俺はヴァニラにミニスカートを穿かせた。
だが、俺はあることに気付いた。
「尻尾はどうするか・・・。」
「・・・片足に巻き付けます。」
ヴァニラが自分から案を出してくれた。
おかげで考える手間が省けた。
サンキュー。
片足に尻尾を巻き付けたのを見届け、俺はヴァニラにミニスカートを穿かせた。
そして、さっきまでビキニ姿だった少女は、普通の格好に変わっていた。
「これでオーケーかな。」
その姿を見て、俺はそう言葉を漏らした。
「・・・大丈夫ですか?」
リースがヴァニラを心配した。
おそらく羽や尻尾を半ば無理やり隠したからだろうな。
「若干窮屈だけど、全然大丈夫。」
ヴァニラが笑顔で答えた。
・・・まあ、街中だけだし頑張ってもらおう。
「ツノはどうする?」
「あっ・・・。」
忘れてた・・・。
その後、俺らはギルドへ向かっていた。
朝の騒動のせいで、おそらく今までで一番遅い出勤だろう。
「あの、マスター。 ありがとうございました。」
「いいってことよ。」
あの後、俺はヴァニラのツノを隠すために帽子を買った。
いわゆるキャスケットタイプの帽子を選んだ。
これで十分ツノは隠せるだろう。
今のヴァニラは、ただの女の子だ。
・・・肌の色が目立つが。
ちなみに、当然ヴァニラも依頼に連れていく。
俺から離れられないならそうするしかない。
あと、魔剣は背中に背負っている。
鞘にゴムを付けたので、肩にかけることができた。
「今日の依頼はどうする? また街中の依頼か?」
「とりあえず、ギルドに行ってから決めましょう。」
ジェラルドとリースはいつも通りの依頼の会話をしている。
まあ、気持ちは切り替えねえとな。
子守を頼まれたと思えばいいんだ。
「マスターとの初仕事、楽しみです!」
ヴァニラはまるで、「父親と遊園地に行くのを楽しみにしている子供」の用に笑顔を見せていた。
・・・なんか調子狂うな。
「まあ、その内慣れるさ。」
マックが背中を叩いてきて、そう言ってくれた。
「あ、ありがとう・・・。」
俺は未だに「呪われた」という事実に慣れてない。
というか、慣れてはダメなような気がした。
ヴァニラには悪いが、「いつか呪いを解きたい」と心の中で思っていたのだった・・・。
そんなことを思いながら、俺は仲間たちと共にギルドへ向かって行った。




