ゴミ処理の依頼
「うわ、くっせぇ!!」
俺らは≪廃棄物処理≫の依頼を受けている。
いわゆる路地裏に溜まっている廃棄物をゴミ袋に入れ、運ぶ仕事だ。
・・・果たして冒険者がやることなのか疑問に思ったが、これしか街中での依頼が無かったので仕方なかった。
「まあ、こんなに広い街だからゴミぐらいは簡単に溜まるでしょう。」
「ひでえ話だ・・・。」
文句を言いながらも、ジェラルドはゴミを袋に詰めている。
俺とマックも同様だ。
「これは、帰ったら服を洗わねえとな。」
「そうだな・・・。」
せっかく買った服が汚れてしまう恐れがあるが、まあ仕方ない。
どちらにしろ、冒険者なんて服が汚れて当然の仕事だ。
「大丈夫ですかー?」
路地裏の入口からリースが声をかけてきた。
さすがに女性をゴミたちの中に入れるわけにいかないので、彼女にはゴミ袋を運んでもらう役割をしてもらっている。
「大丈夫だ。 そっちも頑張れよ!」
「はい!」
リースは元気よく返事をして、壁に置いていたゴミでいっぱいのゴミ袋を運んで行った。
ゴミ袋は街の外に集められており、最終的に燃やして灰にするようだ。
元いた世界とあんまり変わらないようだ。
もちろん路地裏のゴミをすべて処理し終わったら、俺たちも運ぶのを手伝うつもりだ。
ここから街の入口まで距離があるしな。
「おっと、これは・・・。」
ジェラルドがゴミの中から何かを拾い上げた。
それは「剣」だった。
「この剣、汚れてはいるがまだまだ使えるぜ・・・?」
ジェラルドが試しに近くのゴミに向かって剣を振った。
するとゴミが切り裂かれた。
「遊ぶ暇があったらさっさと働け。」
マックは目を向けずにジェラルドを注意をした。
次々と順調に袋にゴミを入れている。
「いや、だってさ・・・、勿体なくね? いらないなら売ればいいのによ・・・。」
「なにか事情があるんだろ。」
マックはテキトーに答えた。
だが、正直俺はジェラルドの意見に同意しよう。
「なら貰っちまえば?」
マックは早く話題を終わらせようとしているのだろう。
明らかに「相手をしてるのが面倒くさい」って感じの話し方だ。
「う~ん・・・。 とりあえずどうするかは後にするぜ。」
そういうとジェラルドはゴミの中をズンズン進み、入口の壁に立てかけた。
ほとんど汚れているが、刃に太陽の光が当たり反射している。
「というか・・・。 ゴミの中から出てきた武器を拾うのは、聖職者としてどうなんだ?」
「細かいことは気にすんな。」
俺の質問に対して、ジェラルドの返答はとても簡単なものだった。
「なあ、全然終わんねえぞ。」
あれから一時間は経っただろうな。
ゴミの数は確実に減ってきたが、まだ結構な量だ。
「俺が昔いた『サンテン』や、『メガスリトス』でもこんなにゴミは溜まんなかったぞ!」
「・・・おそらく、大都市だからだろうな。」
「なるほど・・・。」
マックの推理はたぶん当たっているだろうな。
俺の元いた世界でも、都会はゴミで溢れていたな・・・。
「ところで、『サンテン』って?」
俺は聞き逃さなかった。
ジェラルドが言った『サンテン』という町の名を。
「あー。 俺が『メガスリトス』へ来る前に居た、山の上にある町だ。」
「じゃあ、あのオークの時にはそこから来たのか?」
「ああ、そうだ。」
ジェラルドは元いたギルドから移動してきてくれたんだよな。
まさか山の上からだとは思わなかったが・・・。
「俺の聞いた話では、『サンテン』には人外の異種族もいると聞いたが?」
マックがゴミ掃除をしながら話してきた。
「ああ、いたぜ。 エルフにリザードマンなどがな。」
「リザードマン!?」
思わず声に出して驚いてしまった。
「リザードマンって、あの二足歩行のトカゲだよな?」
「ああ、そうだが?」
俺の脳裏には、あの時の記憶が蘇った。
あの3体の大型モンスターの時のことを・・・。
「リ、リザードマンって、モンスターじゃ?」
あの大事の時に、俺はリザードマンとタイマンを張って、奴の息の根を止めた。
そのリザードマンが人間と共に暮らしているとは、どういうことだ・・・?
「ああ、なるほどそういうことか。」
なにかに気付いたようで、ジェラルドが作業の手を止めて、話し始めた。
「モンスターの中でも、良いモンスターと悪いモンスターがいる。
人間と同じだ。
リースのような良い人間もいれば、山賊のような悪い人間もいる。」
なんか中々に深いことを聞いたような?
「だが、悪い人間は殺さないんだな。」
マックがからかってきた。
するとジェラルドは即答した。
「それは冒険者の仕事じゃねえからな。」
「そうだな。」
そう言うと、二人はゲラゲラと笑い出した。
この状況を見て、俺は二人が大人であることを改めて理解した。
普段はおちゃらけているジェラルドだが、根はしっかりした人なんだ。
山賊のボスの時に見た真剣な彼を見て、俺はそう確信してた。
マックに関しては言わなくてもわかるだろう。
「ああ、ちなみに言っておくけどな。 良いモンスターのことは「モンスター」とは呼ばずに、ちゃんと名前か種族名で呼べよ?」
「『モンスター』っていうのは、平和を乱す害獣に対しての呼称だからな。」
「なるほど。」
また一つ、この世界に関する知識を付けた。
「よし、あとこれだけだな。」
作業を始めてから数時間後。
残すところついにあと僅かだ。
時刻は夕方となっている。
同じことの繰り返しは、ある意味モンスター退治より疲れるなぁ・・・。
「お疲れ様ですぅ!」
リースが数十回目のゴミ捨てから帰ってきていた。
俺たちほどではないが、彼女の鎧も結構汚れている。
「すまねえな。 結局ゴミ運びを手伝えなくて。」
「いえ、全然大丈夫です。」
リースは「いえいえ」という感じで掌を揺らしながら言った。
ゴミ集めかゴミ運び、果たしてどちらが苦労しただろうか。
・・・というか、リースは一人だから比べる以前の問題だな。
「よし、これでオーケー。」
ジェラルドが最後のゴミを袋に入れ、サンタクロースの如く肩に背負った。
俺とマックも手に持っているゴミ袋を持ち運び、入口へ移動した。
「さてと、あとはコレをどうするかだな。」
ジェラルドは右足を使って、壁に立てかけてある剣を指した。
ゴミの中から発掘した、あの「剣」だ。
「コレは何の剣ですか?」
「ゴミの中に混じってたんだ。 なんか捨てるの勿体なくてな。」
リースの質問に、ジェラルドは即答した。
それを聞くと「ほほお」とリースが呟き、再び剣のほうに顔を向けた。
「このチームで剣を扱うのはリースだけだから、リースが貰えば?」
マックが提案をした。
「いえ、私が扱うにはこの剣は大きいですね・・・。」
確かにリースの剣と比べると数センチ大きいな。
彼女にも合う合わないとかあるんだな。
「よし、ならタカヤにあげよう。」
「なぜそうなった?」
ジェラルドの発言に、思わずツッコんだ。
「トドメ用の武器として持っておけばどうだ? チーム内で武器を持ってないのはタカヤだけだし。」
マックも意見を述べてきた。
そういえば、全員一応武器は持っているのか。
マックの魔導書は武器と呼んでいいのか微妙だが・・・。
「でも確かにタカヤさん、簡単にトドメを刺せなくて苦戦したりしてますよね?」
「そうだったっけ・・・?」
俺はとぼけた。
だが、そんなのは無意味だった。
「よし、決定。」
「はい・・・?」
ジェラルドに肩をポンと叩かれた。
・・・なんか勝手に決まっちゃったんですけど。
「ああ、そうだ! おそらくこの剣の鞘だと思われるモノも拾ったんだ。」
そう言われて、ジェラルドから鞘を渡された。
しばらく戸惑っていたが、周りから視線を向けられていることに気が付いた。
・・・鞘に入れるか試せということか?
不本意だが、俺は剣を鞘に入れてみた。
すると、ピッタリと入った。
「おお、ピッタリだ!!」
他三人は盛り上がっていた。
「・・・まぁ、せっかくなので貰っておきますが。」
俺は折れた。
欲しかったわけではないが、「汚れた剣」を手に入れた。
「はぁ・・・。」
「どうしました?」
「いえ、なんでも・・・。」
依頼を終えた俺らは宿屋の個室にいる。
いつもの光景だ。
体を洗った後、俺は組んだ手を後頭部に移動させてベッドに横になっている。
俺の隣のベッドには無防備な赤髪の美女が座っている。
いつも通りだ。
・・・だが、今回は少し違う。
宿屋の壁には、先程貰った「剣」を立てかけてある。
とりあえず水で軽く洗って、完全ではないが綺麗になっている。
「トドメ用にしちゃ、武器が大きすぎるような・・・。」
俺は立てかけてある「剣」を見ながら、そう独り言を言った。
「でも、カッコイイじゃないですか!」
「そうっすか。」
・・・そう言えばこの人、そう言う人だったな。
確か全身甲冑なのも「カッコイイ」というのが理由の一つだったな。
忘れてた。
「いつか剣術を教えましょうか?」
「・・・まあ、その時は頼む。」
リースって剣術とか習ってるのか?
だが、今までずっと剣士を続けていたら自然と身に付くものかもな。
そういえば、トドメ用だが「剣」が武器ってことはリースとお揃いか。
・・・なんか照れるな。
俺はベッドに潜り込み、さっさと眠ろうとした。
それを見たリースは「お休みなさい」と声をかけてくれた。
そして彼女もベッドに入っていった。
今日はゴミ掃除だけだが、タメになる話を聞くことができた。
ふと今頭に浮かんだことが、この世界には人間以外にも種族がいるという事だ。
エルフもリザードマンも、ファンタジーRPGでは王道だな。
いつか会ってみたいぜ。
やっぱりエルフは美人なのかな?
そしてリザードマンはやっぱりカッコイイのかな?
そんなことを考えながら、俺は眠りについた。
「うっ!」
俺は慌てて起きた。
全身汗びっしょりだった。
「大丈夫ですか、タカヤさん!?」
ふと横を見ると、パジャマ姿のリースがいた。
俺が起きたと同時に、俺の左手を両手で握りしめた。
「うなされていたようですが、大丈夫ですか?」
俺、そんな感じだったのか。
リースの言う通り、俺は悪夢を見ていた。
とてつもなく恐ろしくて、説明できないほどの・・・。
「た、ただの悪夢だ・・・。 平気・・・。」
俺は額の汗を右手で拭った。
・・・だが、本当に恐ろしかった。
例えるなら、子供の頃に観てトラウマになった「不思議な映像」を見た時のような・・・、そんな感じの夢だった。
詳しい説明はできないが・・・。
「ふぅ・・・。」
俺はなんとか落ち付けた。
・・・ん?
右手をベッド着けた途端、違和感を感じた。
俺は右側を見た。
・・・なんか、掛け布団が盛り上がってる。
俺は掛け布団を勢いよく引っ剥がした。
・・・そこには、少女が横になっていた。
姿は小学生ぐらいかな。
だがその少女は、ツノや羽や尻尾が生えており、肌の色もやや桃色に近かった。
・・・これは一体。




