『シーアン』の少年少女、初の依頼
俺らは道具屋を後にし、ギルドで依頼を受けた。
『シーアン』での初の依頼は≪アサルトジャガー討伐≫である。
アサルトジャガーとは、話を聞く感じ「少し危険なジャガー」って印象だった。
俺の知っているジャガーと同様に夜行性のため、明るい昼間は寝てるか休んでいるらしい。
そこを討伐しようという話になった。
今現在、森林の中を歩いている。
隊列は初心者である二人を中央に配置し、それを囲うように俺ら四人がいる。
前方はジェラルド。
後方はマック。
左右には俺とリース。
そんな感じだ。
「そういえば、お前ら金持ってるんだな。」
ジェラルドが歩きながらコウタたちに話しかけてきた。
そういえば、冒険者になったばかりだというのに結構装備を整えているな。
金貨を使うぐらいはあるな。
「親からの仕送りです。」
ああ、なるほど。
そういうことか。
「装備に頼り過ぎるなよ。」
マックがボソッと言った。
コウタはともかく、ユウカは無言でお辞儀をした。
ユウカはちゃんとわかっているようだ。
早速モンスターが出てきた。
皮膚にトゲが付いているような猿、クチバシが長い鳥の二体だった。
「どれ、早速腕前を見せてもらおうか?」
そういうとマックは後ろへさがった。
どうやらコウタたちの腕前を見るつもりのようだ。
「リースとタカヤは念のために、二人の後ろ辺りで構えててくれ。」
そう言いながらジェラルドも後ろへさがった。
そして勝手に推薦された俺たちは、二人の邪魔にならない距離で待機した。
まず動いたのはコウタだった。
コウタは猿がいる方向に全速力で走った。
そして猿に向かって剣を振り下ろした。
しかし猿は木に飛び移り、軽やかに攻撃を回避した。
慌ててコウタは立ち止まり、猿の方向を向き剣を構える。
だが、その隙を見て今度は鳥が動き出した。
クチバシを前に出し、コウタにツッコもうとした。
「<火>」
ユウカがそう叫び、杖から火が飛び出て、鳥目掛けて飛んで行った。
鳥は火を食らい、体を焼かれながら地面へ落ちた。
もうほっといていても、その内動かなくなるだろう。
コウタは猿と睨み合っている。
猿は勢いよくコウタに体当たりをしてきた。
若干トゲトゲした皮膚を活用してきたようだ。
幸い、その体当たりをコウタは胸で受けた。
コウタは胸当てを身に着けているためダメージは無く、尻もちをついただけで済んだ。
胸当てに当たり地面に弾かれた猿を見て、慌ててコウタは立ち上がった。
すぐさま剣を手にし、猿目掛けて振り下ろした。
だが猿も体を転がし、攻撃を回避した。
そして木に登り、再びコウタを見下ろしている。
身軽な奴だなぁ・・・。
結局、さっきと同じ状況となった。
「くそっ・・・。」
コウタの口からボソッとそう言葉が出た。
それは焦っているようにも聞こえた。
ユウカの方は既に戦いが終わっているため、俺たちと同じくコウタを見守っている。
ゲームなどでもそうだが、魔法は強力だし仕方ないだろうな。
コウタはイライラしている様子だった。
猿が木の上から見下ろしている光景は、確かに腹立たしいな。
ましてや、敵だったとしたら尚更だ。
「ユウカ、援護してやれ。」
マックがユウカに指示を出した。
ユウカは「はい!」と答え、杖の先を猿に向けた。
「<火>」
火の玉が杖の先から飛んで行き、猿の方へ向かっている。
当然猿は簡単に火の玉をかわした。
猿が乗っていた枝に火が付き、木が燃えそうになっていた。
だが、そんなことは気にせずコウタは降りてきた猿目掛けて剣を振り下ろした。
猿も、突然の援護攻撃を避けるので精一杯だったので、その直後のことに集中できなかったようだ。
猿はマトモに剣の攻撃を食らった。
額から股まで切り傷が入り、血が流れ出る。
そして、そのまま地面へ静かに倒れた。
「ふぅ・・・。」
コウタの口から息が出た。
猿一匹に必死で剣を振ったからであろう。
そんな彼にマックが近付いて、彼の肩に手を置いて話し出した。
「お前には仲間がいる。 一人だと辛いと判断したら、遠慮なく仲間を頼れ。 そうしないとこの先苦労するハメになるぞ。」
「くっ・・・。」
コウタはあまり納得してないようだ。
まあ、本当はあの猿を一人で倒したかったからだろうな。
「<水柱>」
マックは木に付いた火を魔法で消火した。
ちゃんと覚えていてくれたか。
二体のモンスターとの戦いが終わり、俺たちは再び森林を歩き続けている。
「さっきのは、「接続魔法」ですね。」
「おう。」
ユウカはマックに話しかけていた。
「接続魔法」・・・?
「「接続魔法」とは・・・?」
リースが代わりに聞いてくれた。
もはや何回シンクロしたかは数えられない。
「さっきユウカが唱えた<火>とかの単体呪文が基本的な普通の魔法だ。
だが、俺が持っている魔導書などには「接続魔法」が載っている。
「接続魔法」とは、その名の通り「何か」と「何か」を繋げることによって魔法の強さや動きを変えることができる魔法のことだ。」
「そんなモノがあったのか・・・。」
ジェラルドも知らなかったようだ。
「例として、<突風>は<風>を強化させた「接続魔法」だ。
さらに言うと、最初にお前らを助けたときに<火炎放射>という魔法を唱えただろ?
あれは<火>を強化した<火炎>に動きを付けた「接続魔法」だ。」
「・・・な、なるほど。」
あの様子じゃ、ジェラルドは完全にはわかっていないようだな・・・。
「ん? ということは俺も接続魔法を使えるんじゃねえの?」
ジェラルドはふと思った。
そういえば、ジェラルドも補助魔法を使えたな。
「そうかもしれないが、「接続魔法」は普通の魔法の倍は体力を奪われるぞ?」
「う・・・、それは困るな・・・。」
ジェラルドは早々に諦めた。
・・・というか、この世界の魔法は体力を消費して使っているのか。
初めて知った・・・。
森林を歩き続けていたら、洞穴を発見した。
そこには一匹の動物が寝ていた。
・・・もしかして。
「あっ、あれがアサルトジャガーだな。」
もう発見しちまったよ。
今回は早いな。
「よし、早速狩ってやる。」
そう言うとコウタはアサルトジャガーに向かって走っていった。
さっきの汚名を返上しようとしてるんだろうな。
・・・だが。
「コウタ、そんなに音を立てると・・・!」
マックの忠告が出たときには、時すでに遅し。
アサルトジャガーが音に気付いて起き上がってしまった。
「ちっ・・・!」
しかしコウタは足を止めなかった。
このまま一気にアサルトジャガーを狩るつもりなのだろう。
だが、俺でもその行動が無謀であることはわかっていた。
俺が止めようとしたときには既に、コウタはアサルトジャガーに腕を噛まれていた。
その痛みによって、剣を地面に落としてしまったのだ。
「まずい・・・!!」
ジェラルドがコウタを助けるためにアサルトジャガーの元へ行こうとした。
だが、アサルトジャガーはコウタの腕を噛むのをやめて、ジェラルドを避け、ユウカがいる方向へ駆け出した。
「こ、こっちに来る!!」
ユウカは魔法を唱えようとしたが、慌てていたために上手く唱えられずにいた。
このままではまずい・・・!
俺はユウカのいる方向へ走り出した。
そしてユウカを守るように、アサルトジャガーとの間に入った。
アサルトジャガーは丁度、飛び掛かろうとしていた最中だった。
俺は構えた。
アサルトジャガーが飛び掛かってきたタイミングで、右ストレートを放った。
俺の拳はアサルトジャガーの眉間にクリティカルヒットした。
アサルトジャガーは悲鳴を上げ、ぶっ飛ばされた。
飛ばされたアサルトジャガーは地面にぶっ倒れ、痙攣している。
「俺がトドメを・・・!」
コウタが左手で剣を持ち、アサルトジャガーに近づく。
そしてアサルトジャガーの首に剣を刺した。
・・・だが、片腕を負傷しているため力が出なく、剣を深く刺せないでいた。
「・・・くっ。」
コウタは右腕の代わりに右足を使って剣をぶっ刺した。
アサルトジャガーの首に深く剣が刺さり、首から血が大量に流れ出ている。
アサルトジャガーの討伐を完了した。
「<治癒>」
ジェラルドがコウタの右腕に治癒魔法を使った。
コウタの右腕は、噛まれた後で痛そうだった。
「怪我が回復するまで時間がかかる。 触んなよ。」
「・・・。」
コウタはただ黙っていた。
よほどショックだったのだろうか?
「いい加減にして、コウタ!! お礼ぐらいはちゃんと言いなよ!!」
さすがにユウカは怒ったようだ。
まるでお母さんだ。
「・・・あ、ありがとう。」
コウタはぶっきらぼうにお礼を言った。
・・・まぁ、いいだろう。
「これで一つ学んだだろ? 無闇に突撃をすると酷い目に遭うこともあるんだぞ。」
マックは人差し指を出しながら、コウタに向かって言った。
相変わらずコウタは黙っているが。
「そうしょげるなって! 誰でも最初は失敗するもんだ。」
ジェラルドなりに、コウタを気遣っていた。
「あの、先程はありがとうございました。」
「ん? ああ。」
ユウカが俺にお礼を言ってきた。
アサルトジャガーから守った時のか。
「あの、怪我とかはしませんでした?」
「大丈夫だ。」
説明しよう!
この俺、小板橋鷹哉は「一部の能力の強化」という転生の恩恵を受けているのだ!!
・・・なに一人でやっているんだ俺は。
「あなたも、私たちと同じランクなんですね・・・。」
俺の腕に巻いている白いバンダナを見ながら言ってきた。
そういえば、まだ俺はGランクだったな。
「まぁ、もう初心者とは言われないぐらい依頼をこなしてきたつもりだけどな。」
俺は自信満々に言ったが、正直周りはどう思っているのか気になった。
俺が冒険者になってから何日経っただろうか・・・。
Fランクへ昇格するのはいつになることか。
とりあえず、近くの村にいた依頼者さんから依頼達成の証明書を貰った。
そして、みんなで『シーアン』に帰って行った。
『シーアン』に着いた頃には、空は暗くなろうとしていた。
コウタは別れるまで一切言葉を発しなかった。
相当ショックだったようだ。
彼には、これから頑張っていってほしいものだ。
ユウカは最後まで俺たちに礼儀正しく接してくれた。
ちゃんとした子だ。
彼女がいれば、コウタは大丈夫だろう。
彼らを見送ると、俺らは宿に行こうとしていた。
場所は事前にコウタたちから聞いていたので大丈夫。
俺たちは宿へ向かった。




