山賊の突撃
俺はしっかりと足を地に着け、拳を握っている。
ジェラルドさんも同様の構えをしている。
マックさんは魔道書を開き、いつでも呪文を唱えられる態勢となっている。
あれから数分・・・。
まだボスは上がってこない。
一体どうしたのだろうか・・・?
俺は仕方なく、恐る恐る崖の下を覗いてみた。
すると、ボスの姿が見当たらない・・・。
「奴がいませんよ!?」
「なんだって!!?」
ジェラルドさんとマックさんも近づいてきた。
「一体どこに・・・?」
「もしかして、落ちたか?」
「いや、確かに地面に激突する音がすぐしたはずだ・・・。」
「となると・・・。」
会話が途切れると、ジェラルドさんは頭を右に向けた。
その方向には元々ボスがいた洞窟がある。
・・・そうか、洞窟に入ったのか!!
ジェラルドさんはすぐに一段下の道に降り、洞窟へ向かった。
そして洞窟の入口の前で立ち止まった。
「誰もいねえぞ?」
その言葉を聞いて、俺らも下に降りる。
そしてジェラルドさんのもとへ行き、俺らは洞窟に入った。
洞窟の中にいたはずの倒れた山賊たちの姿は無くなっていた。
回収をしたのだろうか・・・?
またあの分かれ道に来た。
そういえば、あの女性たちは無事なのだろうか・・・?
ジェラルドさんが左の道、すなわち女性がいた部屋の方向に歩いた。
そして扉に手を伸ばした。
扉を開けると、5人の山賊がいた。
山賊たちが俺たちに気付くと、すぐに襲いかかってきた。
しかしすぐさまジェラルドさんが無双し始めた。
山賊たちを左方向に吹っ飛ばした。
「あとは任せろ。」
マックさんが後ろから言ってきた。
ゆっくりと部屋に入り、山賊たちの方向を向いた。
ボロボロになった山賊たちは、それでも俺たちに向かってきた。
「<突風>」
容赦なくマックさんは風の魔法を山賊たちに放ち、5人全員壁に打ち付けられ気絶した。
すると、捕まっている女性たちが意識を取り戻していた。
彼女たちは何が何だか分からず、不思議そうにしていた。
「あ、えっと、俺たちは冒険者です。 山賊を退治しに来ました。」
とりあえず俺は彼女たちに説明した。
その言葉を聞いて、彼女たちの表情が喜びに変わっていった。
「あとで助けてやるから、そこで待っててくれ。」
ジェラルドさんはそう言って、部屋から出た。
すると、瞬時に彼が言葉を発した。
「おおっ!!? もう来たのか!?」
その言葉を聞いて、俺とマックさんも扉の外を見た。
すると、扉の外には金色の甲冑を身に着けた人物が立っていた。
リースさんだ。
・・・確かに、かなり早く戻ってきたな。
後ろからスレイダーさんとリースさんと名前の知らない冒険者2名が来た。
そして、リースさんが話し始めた。
「森の中で彼らにお会いしました。 今現在クリスが実力派の冒険者達に伝言を届けています。 それまでは私たちでなんとか時間を稼ぎましょう!」
と、リースさんは腕を振り上げながら言った。
確かにクリスの方が足が速いか。
リースさんにしては良い考えだ。
「丁度良かった。 彼女たちを安全な場所に運んでくれないか?」
「え?」
「ここにいると戦いに巻き込んじまうかもしれねえからさ。」
ジェラルドさんの言葉にリースさんがなぜか困惑していた。
すると後ろから、マーガレットさんが話してきた。
「私たちだけでやるから、リースもそっちで戦いなよ。」
「え!?」
「仕事仲間と共に戦いたいんだろ?」
「・・・ありがとうございます!!」
なるほど。
リースさんも俺らと戦いたかったのか。
だから困っていたのか。
マーガレットさん達は女性たちの縄を解いた。
そして肩を貸してあげて、部屋を出て行った。
俺たちは彼女たちを見送ると、先程ボスが座っていた部屋の方へ歩んだ。
「・・・ボスは今、この洞窟に逃げている可能性があるんです。 それで・・・」
俺はリースさんにこれまでのことを話していた。
だが、角に着くまでには終わりそうにない。
「・・・とまあ、とりあえず一旦話はここまでにします。」
「わかりました。」
リースさんは理解してくれて、腰にある剣のグリップを握り、戦闘に備える。
ジェラルドさんが角から部屋の方向を覗いた。
「・・・あれ、いない。」
その言葉と共に、ジェラルドさんは角から離れ、道の真ん中に出る。
そして部屋の方へ歩いて行った。
俺たちもジェラルドさんについて行った。
「一体どこへ・・・?」
すると、ジェラルドさんが歩みを止めた。
そして上を見た。
その瞬間、大声で叫んだ。
「上に張り付いてやがる! 逃げろ!!」
その言葉を聞き、俺らは来た道を戻るように走った。
山賊たちが上から部屋の床に降ってきて、追いかけてくる。
これが奴の策か!!
途中、ジェラルドさんが追いついてリースさんを脇に抱えた。
そして俺らを追い抜いて行った。
相変わらず足が速い。
後ろから奴らが追いかけている。
しかしその中にはボスがいない・・・。
果たして上にいたのだろうか・・・?
「今度は俺が最後に上がる。 だから先に上がれ!」
洞窟を脱出すると、マックさんがそう言葉を発した。
そして魔道書を開き、呪文を唱え始めた。
「<水柱>」
マックさんの手の前に出た小さな魔方陣から、大量の水柱が勢いよく洞窟の中へ向けて発射された。
俺の角度からは見えないが、おそらく山賊たちは水力によって吹っ飛ばされているだろう。
「手を伸ばせ!」
気付けばジェラルドさんが上がっており、既にリースさんは引き上げられていた。
俺はすぐに手を伸ばし、ジェラルドさんに引っ張り上げられた。
その後、マックさんはすぐに引き上げられた。
「ボスは?」
「天井に張り付いていたのは見たぜ。」
やはり天井にいたか・・・。
すると、あの洞窟の中にまだいることは確かだな。
「もうこうなれば、こちらも本気で行くしかない。」
そう言って、ジェラルドさんは立ち上がった。
そして、今まで使っていなかった背中の槍を取った。
「なにをするのですか・・・?」
リースさんが不安そうに聞いた。
するとジェラルドさんは真面目な感じで答えた。
「コイツを奴の足にブッ刺す。 そして痛みで隙を見せたところを俺ら全員で叩き、奴を崖に着き落とす。」
ジェラルドさんの目は本気だった。
「・・・殺すのですか?」
リースさんが恐る恐る聞く。
すると、ジェラルドさんがリースさんの目線に合わせてしゃがんだ。
「いや、重傷を負わせるだけだ。 だが、殺す勢いで行ってもいい。」
いつにも増して真面目なジェラルドさん。
それほど強い相手だと悟ったのか?
「"殺す"とは・・・。 その発言は聖職者としてどうなんだ?」
マックさんが冗談交じりに言ってきた。
「ははっ、そうだな・・・。」
ジェラルドさんが笑いながら答えた。
しかしすぐに真剣な表情に戻り、槍を地面に突き刺す。
「まずは雑魚の掃除からだ。」
その言葉通り、手下の山賊たちが上がってきた。
剣を持って、俺らに向かってくる。
俺は振り下ろされる剣を避け、すぐさま相手の顔面に拳を飛ばす。
山賊は横に半回転してぶっ倒れる。
リースさんは相手の剣を自分の剣で弾き飛ばし、丸腰になった山賊に頭突きを放つ。
甲冑の頭突きはさぞ痛かっただろうな。
そのまま山賊は背中から倒れた。
ジェラルドさんに関してはもう説明不要だろう。
予想通り無双をしている。
俺らが一人を倒した頃には、ジェラルドさんは既に2、3人も倒していた。
さすがだぁ・・・。
マックさんは風や水の魔法を使って、どちらかと言えば守る感じで戦っている。
火や氷の魔法を使わないのは、彼の優しさだろうな。
数分の戦いも終わりを告げた。
山賊たちは地面とキスをしている。
当然、死亡者0人だ。
だが、メインディッシュはこれからだ。
大きな影が崖下から現れて、俺たちの前に立ち塞がった。
そう、山賊のボスだ。
「ふん、役立たず共が・・・。」
ボスは地面に唾を吐きながらそう言い放った。
そして目線を床から真正面に向き直した。
「ここまで俺をコケにしたんだ。 生きて帰れると思うなよ?」
そう言って腕を鳴らした。
武器は持っていないが、奴の腕は下手な武器よりも恐ろしいのだろうな・・・。
リースさん達は無言で武器を構えている。
俺も視線を目の前の「敵」にのみ集中させた。
ボスは正面から突っ込んできた。
当然ながら俺ら4人は余裕でかわした。
ボスは後ろの洞窟の入口の縁に激突した。
石でできた縁は凹み、ボロボロと石が崩れ落ちた。
ボスが頭を抱えている隙をついて、ジェラルドさんが槍を構えながら飛び掛かった。
しかしボスはジェラルドさんの槍を片腕だけで余裕で掴んだ。
そしてもう片方の腕でしっかり槍を持ち、なんとジェラルドさんごと持ち上げた。
あの大柄なジェラルドさんをだ・・・。
ボスは片腕を離し、持ち上げたジェラルドさんに力強い腹パンをかました。
ジェラルドさんは予想外の出来事に呆気にとられ、ボスの攻撃に備えることができなかった。
ジェラルドさんは胸当てを着けているが、その胸当てが凹むほどの衝撃を腹に受けてしまった。
その衝撃にはさすがに耐え切れず、ジェラルドさんは槍から手を放してしまい、そのまま軽く宙を飛んだ。
そして背中から地面に落ちてきた。
最悪だ・・・。
「ジェラルドさん!!」
リースさんが駆け寄って安否を確認した。
するとジェラルドさんは咳き込み、瞼を開けた。
どうやら気絶まではいかなかったようだ。
「ち・・・、ちっくしょー・・・。」
ジェラルドさんは辛そうな顔で空を見上げながら、そう言葉を漏らした。




