三人の漢 VS 山賊団ボス
俺はアイデアを二人に話した。
「そうか! その手があったか!!」
「なんで気付かなかったんだ・・・!!」
二人は先程と明らかにテンションが違う。
良かった・・・。
「まあ、でもあくまで予想なので、成功するかは・・・。」
だが、心配なので一応言っておいた。
慢心だけは絶対にダメだからな。
「だが、この方法は試してみる価値はあるぞ。」
マックさんはそう言って、部屋の入口の横で身構える
松葉杖を外に置いて来てしまったため、やや苦労をしていたが。
「サンキューな、タカヤ。」
「その言葉は成功してからにしてください。」
ジェラルドさんが先にお礼を言ってきた。
これで失敗したら、すごく気まずくなるな・・・。
俺のアイデアは全く完全ではない。
あくまで予想だ。
つまり 運 である・・・。
正直不安だ・・・。
そんなことを考えていると、ボスが穴に入ってきた。
片手には拳銃を持っている。
恐ろしい・・・。
マックさんは魔道書を開いてスタンバイしている。
正直俺とジェラルドさんは祈ることしかできない・・・。
「そこにいるのはわかっている・・・。 出てきやがれ・・・。 出なくても迎えに行ってやる・・・。」
ボスはゆっくりと歩いている。
余裕のようだ・・・。
そしてもうかなり近めのところに来ている。
そろそろ良いだろう・・・。
俺はマックさんに合図を送った。
マックさんは頷き、呪文を唱える。
そして言葉を発した。
「<水柱>」
マックさんの手の前に出た小さな魔方陣から、大量の水柱が勢いよく出て、ボスに直撃した。
ボスは全身ずぶ濡れになった。
「これは、なんだ・・・?」
ボスは自分が何をされたか分からないようだ。
無理もない。
次に俺が、ボスの前に出た。
ボスはそれを逃さなかった。
「獲物が自分から出てきてくれたか・・・。」
そう言って、拳銃を向けた。
そして俺に向けて放った。
俺は横に跳んで回避した。
しかし、明らかに状況が変わっていた。
爆音が聞こえない。
それに、弾丸が飛んでこない。
「・・・成功だ!」
マックさんは嬉しそうな声で言った。
ジェラルドさんもニヤリと笑っている。
地面に伏せている俺はホッとした・・・。
「な、なぜだ・・・。」
ボスは何度も引き金を引くが、爆音は出ず、弾も出ない。
その内、怒ったボスは地面に拳銃を捨ててしまった。
俺のアイデアは、拳銃を水で濡らすことだった。
ただ、普通の拳銃なら水で濡らした程度では壊れないことは知っている。
そう、普通の拳銃なら・・・。
奴が使っているのは、異世界初の拳銃。
言わば不完全の試作品だ。
火薬を水などから防ぐ設計にはしてないのだろう。
まあ、あくまでこれは俺の予想で、本当にそうなのかは知らねえがな・・・。
だが、俺は一か八かこれに賭けた。
結果は大当たりだった。
「チッ、改良を加えるしかねえな・・・。」
山賊は落とした拳銃を踏みつぶしながらそう言った。
「悪いが、それは叶うことは無いだろう!!」
そう言ってジェラルドさんはボスに向かって行った。
これで安全に戦うことができる。
ジェラルドさんは勢いよく走り、ボスの顔面目掛けてドロップキックを放った。
入った・・・と思ったが、驚くことにボスはドロップキックを腕でガードしていた。
「山賊舐めるんじゃねえぞ・・・。」
そう言って、今度はボスがジェラルドさんに「ケンカ・キック」を放った。
ジェラルドさんはガードが遅れ、顔面を蹴り飛ばされた。
・・・あのジェラルドさんが吹っ飛ばされた!?
前にも吹っ飛ばされたことがあったが、あれは大型モンスターだったから仕方なく思った。
しかし、今度は人間だ。
「こいつ、かなり強いですよ・・・。」
俺はマックさんに何気なく言った。
マックさんも「ああ・・・。」と返事をしてくれた。
目の前にいるのは、今までの山賊とは格が違う。
強敵なんだ・・・。
マックさんが即座に呪文を唱えていた。
「<氷塊>」
氷の塊がボスに飛んで行った。
ボスに氷の塊が激突し、ボスは後ろに吹き飛んだ。
そして俺はすぐさまボスのもとに向かって、「ニー・ドロップ(ジャンプをし、片膝を突き出すように折り曲げて、相手の体に片膝を落とすプロレス技)」を放った。
しかし、俺の脚は硬い何かに当たった。
「・・・!」
直に触れたことで分かった。
ボスは服の下に鉄装備を着けている。
俺は着地と共に、急いで二人のもとに戻った。
叩き込んだ右膝が若干痛いが、歩ける程度には大丈夫だ。
戻ると、ジェラルドさんが起き上がっていた。
「奴は鉄装備を下に着けてます!」
俺はまずそう言った。
ジェラルドさんは「なんだと?」と言い驚き、それを聞いてマックさんは真剣にボスを睨む。
ボスはゆっくりと立ち上がった。
「ああ・・・。 酷い目にあったわぁ・・・。」
ボスは腕を回しながら言った。
そして軽い運動を終えると、一直線に走ってきた。
猫背で突進する姿は、怪物そのものだった。
部屋の中央にいた俺とジェラルドさんは回避をし、そのままボスは奥の壁に激突した。
身体が半分壁にめり込んだ。
俺らは壁にめり込んで動かなくなったボスを警戒した。
さすがにこれぐらいで気絶なんてしないだろうしな・・・。
予想通りボスは壁から抜け出し、俺らの方を向く。
顔を怪我しており、軽く血が出ている。
だが、そんなことは気にしていないようだ。
再びマックさんが呪文を唱えた。
「<氷塊>」
氷の塊が再びボスを襲った。
しかし今度は、ボスは氷の塊を受け止めた。
そして、その氷の塊をマックさん目掛けて投げてきた。
脚を怪我しているマックさんは回避できず、氷の塊が直撃した。
壁を背にしていたため衝撃を逃がすことができず、潰されてしまった。
「マックさん!!」
氷が砕け、マックさんは地面に倒れる。
幸いマックさんは肥満体型。
つまり腹が出ていたため、顔は潰されなかった。
しかしマックさんはかなりのダメージを受けてしまったようだ・・・。
「待ってろ!」
ジェラルドさんがマックさんのもとへ走って行った。
そしてマックさんに向けて掌を向けて、叫んだ。
「<治癒>」
すると、ジェラルドさんの掌から光が発し、そして消えた。
ヒーリング・・・、「治癒」か・・・。
そういえば、ジェラルドさんは「僧侶」だったな。
すっかり忘れていた。
そしてジェラルドさんは俺の隣に来て、小声で話しかけてきた。
「マックが回復するまで、俺たちがヤツを引き付けるぞ。」
そう言って、ジェラルドさんはボスに立ち向かって行った。
どうやら治癒が効くまで時間がかかるようだな・・・。
そう理解して、俺もボスに立ち向かって行った。
ジェラルドさんがドロップキックを放つ。
ボスの腹に直撃するが、腹から金属音が響いて、ボスはただ後退するだけだった。
ボスは前進と同時にジェラルドさんに殴りかかる。
しかし今度はちゃんとジェラルドさんはガードをした。
殴り抜けたボスを見て、俺もボスに攻撃を仕掛ける。
ボスの脇腹に体当たりをした。
ボスはバランスを崩し、横に倒れる。
ジェラルドさんがチャンスだと思い、顔面に強烈な蹴りを放つ。
顔は何も着けていないため、ジェラルドさんの足が顔にめり込み、ボスは痛さで顔を押さえ暴れている。
危険なので、俺らはすぐに離れた。
「グオォォォー!!!」
ボスは唸り声を上げてバタバタ暴れている。
近寄ったら吹っ飛ばされそうだ。
少しだけだが、天井の石が落下してきた。
マックさんが起き上がった。
どうやら回復したようだ・・・。
「すまん、助かった・・・。」
マックさんは謝罪とお礼をまず言った。
そして魔道書を拾って、俺たちの近くに来た。
・・・ん?
「マックさん、足大丈夫なんですか?」
マックさん・・・。
明らかに普通に歩いている。
「・・・あ、本当だ。」
どうやらマックさんも今気付いたようだ。
足踏みやジャンプをして、確認していた。
「やや痛いが、歩けるようになっている・・・。」
すると、マックさんはジェラルドさんを見上げた。
俺も同様にジェラルドさんを見上げた。
両方から視線を向けられていることに気付いたジェラルドさんは、手を頭の後ろに回した。
「ああー・・・。 捻挫を「治癒」で治せばよかったのか・・・。」
ジェラルドさんは苦笑いをした。
俺とマックさんは呆れて、思わず溜息をついた。
一体今までの苦労は・・・。
そんなことをしていたら、ボスが立ち上がった。
どうやらブチギレているらしいな・・・。
「お前らぁ!! 生きて帰れると思うなよ!!!」
するとボスは、一輪車のペダルのように腕をブンブン振り回しながら、突撃してきた。
無論、簡単に回避することができたが。
しかしボスは即座に方向転換をして、俺たちに迫る。
俺たち三人は後ろから追いかけてくるボスから逃げた。
そして、隙を見て部屋から出て、洞窟の入口に急いだ。
当然ボスも俺たちを追っていたため、部屋から出てきた。
その時には俺たちは、入口まであと半分の距離まで走っていた。
しかし体格のせいかボスの足は速く、どんどん俺たちに迫ってきている。
間に合うか・・・!?
結果、なんとか入口から外へ出ることに成功した。
俺たちは即座に横に散らばった。
そして勢いよく洞窟から出てきたボスは急に止まることができず、崖から落ちてしまった。
落ちたと言っても、一段下のあそこの道に落ちただけだが。
俺たちはボスが上がってくるのに備えて、身構えた。




