山賊のボス
男は大きな椅子に座っている。
大柄で、筋肉質。
頭には他の山賊と同じくターバンを巻いており、その隙間から鋭い瞳を覗かせる。
黒く大きい髭が鼻の下から胸辺りまで伸び散らかっている。
大きな腕には腕輪が何個も通っており、人差し指や薬指などに指輪を多数ハメている
見るからにあの男が、山賊団のボスであろう!!
「強そうですね・・・。」
リースさんが小声で、何気ないことを言った。
まあ、あれで弱かったら逆に面白いな。
「さて、どうするか・・・。」
「一度町に戻って、他の奴らと一緒に乗り込むか?」
「それしかないな。」
そう言って俺たちは来た道を戻ろうとした。
しかし、俺らの後ろには一人の山賊がいた。
「なんだぁ、お前ら!!!」
まずい!!
誰もがそう思った。
ジェラルドさんがすぐさま山賊を持ち上げて、地面に叩きつけ気絶させた。
「まずい、こっちに来るぞ!」
角から部屋を見張っていたマックさんが言ってきた。
俺たちはすぐさま逃げた。
しかし松葉杖を使っているマックさんは走ることができない。
「俺はいい。 お前らだけでも逃げろ!」
マックさんはそう言ったが、俺らはすぐに踵を返した。
そしてマックさんの背を守るように前に出た。
「何してる!」
「しばらく時間を稼ぎます。 マックさんはなんとか入口まで行ってください!」
俺はすぐに返答をした。
マックさんは何かを言おうとしたが、言うのをやめてそのまま黙って入口へ向かって移動を開始した。
俺らはいずれやってくる山賊たちを迎え撃つために、構えている。
そして角から剣を持った山賊たちが出てきた。
ジェラルドさんがやってくる山賊たちをちぎっては投げちぎっては投げ、次々と山賊たちを退治している。
正直、もう全部彼だけでいいんじゃないかなと思ったりもした。
しかしそうではない。
俺らにも戦う義務がある。
俺とリースさんはジェラルドさんの邪魔にならないように、山賊退治の援護をした。
今までの山賊の数の比ではなかった。
しかしジェラルドさんの無双のおかげで全く苦ではない。
「そろそろマックさんは入口に着いたでしょうか?」
「さすがにこれぐらい時間を稼いだから、そろそろ大丈夫だろう。」
ジェラルドさんは無双をしながら話している。
すごい光景だ・・・。
ジェラルドさんが一人の山賊を吹っ飛ばした途端、リースさんを脇に抱えた。
俺もそれを見て、すぐに踵を返した。
そして俺らは入口に向かって走って行った。
道の途中に倒れた山賊がいたので、注意して避けた。
そして入口を出た。
「よう、ありがとな。」
マックさんが入口の横で寄りかかっていた。
「困ったことになった。 どうやって上に登るのか?」
マックさんが上を指しながら言った。
そういえば、上までやや高いんだよな・・・。
どうしよう・・・。
「俺が登って、上から引っ張り上げる。」
ジェラルドさんはそう言って、崖を登った。
そして上から手を伸ばしてきた。
「誰から上がります?」
「レディーファーストで。」
マックさんがそう言って、リースさんを指名した。
リースさんは申し訳なさそうにキョロキョロしていたが、ジェラルドさんがリースさんに向けて手を伸ばしてきたので、彼女は手に掴まった。
ジェラルドさんはリースさんの片手を両手で掴み、一気に持ち上げた。
リースさんは上がることができた。
「次は・・・。」
「脚を怪我してますし、マックさんからどうぞ。 俺も下から押しますので!」
「そ、そうか、すまない。」
マックさんはすまなそうにジェラルドさんの腕を握った。
ジェラルドさんが両手で引っ張り上げ、俺も下からマックさんの体を持ち上げた。
そしてなんとか上げることに成功した。
置いていた松葉杖も俺はジェラルドさんに渡した。
「よし、あとはタカヤだけだ。」
その時、洞窟の中から山賊が出てきた。
まずい!!
「早く掴まれ!」
ジェラルドさんが急いで手を伸ばしてきた。
俺は慌てて手に掴まり、地面を強く蹴って跳び上がった。
同時にジェラルドさんは両手で引っ張り上げた。
俺は軽々と上に登ることができた。
「くそう!」
山賊は上に登るのに苦戦している。
奴らには団結力が無いようだ。
全員一人で登ろうとしている。
しかし登り切った奴らが、俺らに襲いかかってくる。
だが洞窟の中と違って広く、さらに少数で来るので楽勝だった。
「急いで町に戻りましょう!」
「いや、ダメだ。 ここから離れたら、また別のところに逃げられちまう。」
「なら誰か一人が戻りますか?」
「正直三人じゃ、少しきついかもな・・・。」
最悪だ・・・。
どうすれば・・・。
「・・・この際仕方ない。」
そう言うと、ジェラルドさんはマックさんに指示を出した。
「マック! 風の魔法で山賊を崖に落としちまえ!!」
「ええ!!?」
ジェラルドさんの予想外の発言に、マックさんは驚愕している。
というか俺もリースさんも驚いた。
「ちょっとジェラルドさん! ダメですよそんなこと!!」
やはりリースさんがジェラルドさんに訴えている。
「大丈夫だって。 崖の下は森になってるし。」
ジェラルドさんは軽々と言った。
確かに崖の下には森があり、崖からの距離もそんなに遠くは無い。
落としても死ぬことは無さそうだが果たして・・・。
「悩んでいる暇は無いな・・・。」
そう言うと、マックさんは魔道書を開いた。
そして呪文を読み始めた。
「<突風>」
マックさんがその言葉を発した途端、山賊たちは飛ばされ、崖の下に落ちて行った。
なんという地獄絵図だ。
さすがに言いだしっぺのジェラルドさんも、やや不安な表情をしている。
リースさんはこの光景を見たくないため、俺の後ろに隠れている。
マックさんは表情を変えなかったが、おそらく内心はあまり良くないだろうな。
無事ならいいが・・・。
入口から出てきた山賊が、この光景に恐怖し洞窟の中へ戻って行く。
さすがに恐れたのだろうな・・・。
「よし、リース。 町へ行って他の冒険者を呼んでくれ。」
「わかりました。」
そう言って、リースさんは岩山を下って行った。
落ちた山賊が目覚めていなければいいが・・・。
俺たち三人は、リースさんが戻るまで山賊を見張ることにした。
「そういえば、山賊のボスはどうしたんでしょう?」
「奴がどれほどの実力者か気になるな・・・。」
俺たちは身構えながら、会話をした。
山賊の下っ端はともかく、ボスが来た時のための構えだ。
しかし、数分経っても動きが無い。
なにをやっているのだろうか・・・?
何分が経過しただろう・・・。
山賊は一向に姿を現さない。
完全に怖気づいたのだろうか?
その時だった!
バァン!!
何かが爆発する音が前から聞こえたかと思えば、俺らの横を高速で何かが移動した。
移動先の後ろの岩壁を見ると、小さな穴が開いていた。
「・・・え?」
俺たちは何が起きたのか理解できず、困惑していた。
すると、目の前に大きな影が下から現れた。
・・・そう、山賊のボスだ。
「お前らか・・・。 侵入者というのは・・・。」
ボスは威圧的な声で話しかけてきた。
背はジェラルドさんよりやや大きい。
いや、猫背でその身長なんだ・・・。
しかも横にもデカい。
「てめえら冒険者に子分を捕まえられてな・・・。 そのせいで、人手が足りねえんだわ・・・。」
するとボスは背中に手を伸ばして、おそらく何かを掴んだ。
「まあそれはいい・・・。 お前らはここで死んでもらう。」
そう言うと、隠した手を正面に出してきた。
手には黒い物体を持っていた。
俺はソレを知っている・・・。
少なくとも生では見たことないが・・・。
ボスは俺たちにソレを向けて、そして放ってきた。
危険を察知した俺たちは、それぞれ横に跳んだ。
まさか避けれるとは思わなかった・・・。
なぜならアレは・・・、そうアレは「拳銃」だ!!
「チッ、外したか。」
俺たちは焦っていた。
すると、ジェラルドさんがマックさんを近くの洞窟目掛けて投げた。
下の洞窟に入る前の、あの洞窟だ。
足を負傷しているマックさんは、体を転がして洞窟の中に入って行った。
ジェラルドさんが俺に合図を送ってきた。
どうやら、俺も洞窟に入れと命令されている。
ボスがジェラルドさんに銃を向けるが、ジェラルドさんの回し蹴りが脚に命中し、ボスは再び崖の出っ張りに落ちた。
「今だ!!」
その叫びと共に、俺たちは洞窟の中へと入って行った。
直進に進み、最深部へと避難した。
もちろんそこにはマックさんが横になっていた。
「二人とも無事だったか。」
俺はマックさんを起こしながら「はい。」と答えた。
「それにしても・・・、あの黒い奴は何なんだ?」
「見た感じ小型の砲台って感じだったな。」
「・・・え、知らないんですか!?」
俺は思ったことを声に出してしまった。
「ああ。 初めて見たぜあんなの・・・。」
「小型の砲台ってことは、くらったらおしまいだな・・・。」
・・・もしかして、この世界には「拳銃」が無いのか!!?
ということは、あれは "異世界初の拳銃" ということか・・・!?
だが、大砲はあるみたいだな。
いずれにしても驚きだ・・・。
「仕方なく洞窟の奥に逃げてきたが、これからどうするべきか・・・。」
「このままだと、追い詰められるな・・・。」
「こうなれば、もう人間とか関係なくヤツを燃やしちまうか?」
「・・・最悪の場合はそうするしかないな。」
砲台を知っているためか、二人共なんだか恐怖を感じているようだ。
正直、拳銃を知っている俺も恐怖を感じている。
というか、誰だって銃や大砲を恐れるだろうな・・・。
そういえば、ここの洞窟に置いてあった「紙」・・・。
鉄と火薬ってそういうことか・・・。
・・・ん?
いや、待てよ・・・?
この世界で初めての銃="未完全"
一か八かやってみる価値はあるか・・・。
「俺に考えがあります!」
「タカヤ・・・?」
「マックさん、頼みがあります。」
「なんだ・・・?」




