ギルド崩壊
「うおりゃあああー!!!」
ジェラルドさんが一人の山賊を吹っ飛ばした。
山賊は壁にぶつかった。
すると、ギルドの天井が壊れてきた。
「あ、まずい! ギルドが崩れるぞ!!」
俺らは急いで入口に走って行った。
しかし間に合わなかった。
俺たちは崩壊したギルドの下敷きになった・・・。
「・・・き・・・さ・・・。」
ん・・・?
なんだろうか・・・?
「・・・てくださ・・・。」
どこかで聞いたことがある声だ・・・。
この美しい声は・・・。
「・・・起きてください!!」
・・・はっ!!
気付いたら、俺の目の前には金色の兜があった。
リースさんの兜だ。
どうやら俺は気を失っていたようだ・・・。
俺はリースさんに膝枕をされている状況だった。
「リースさん・・・。」
俺は上半身を起こし、身体をリースさんの方に向けた。
リースさんは甲冑姿で正座をしていた。
よく見ると、脚の装備を外している。
だから脚の感触があったのか・・・。
「よかった、目覚めたんですね!」
「おおぅ!!?」
リースさんは飛びつくように、俺に抱きついてきた。
正直上半身はまだ甲冑だったため、その衝撃と重さに耐えきれず、俺は後ろに倒れた。
しかしリースさんはそんなことは気にせず、ずっと抱きついている。
「よかったです・・・。」
どうやら心配をかけてしまったようだ。
そういえばリースさんはそういう人だったな・・・。
地面に倒れたことで、空が赤くなっていることが分かった。
もう夕方か・・・。
俺は何時間くらい気を失ったんだ・・・?
リースさんが離れ、俺は立ち上がり、辺りを見回した。
人だかりは無くなっている。
だが、しかしまだ気を失っている冒険者や怪我をしている冒険者を介抱している人はいた。
しかし一番目立っているのは、やはり完全に崩れてしまったギルドだろう・・・。
「冒険者全員、無事でした。 山賊も助け出して、縄で縛っております。」
リースさんが再び脚の装備を着けながら、説明してくれた。
とりあえず死者は出なかったようだな。
奇跡だな・・・。
「よう、目覚めたか!」
ジェラルドさんが駆け寄ってきた。
よく見ると絆創膏を顔や腕に貼っており、少し怪我をしているようだ。
そういえば今気付いたが、俺の腕や顔にも絆創膏が貼られている・・・。
「冒険者もギルドの人も市民も、おまけに山賊も全員無事だ。」
「そのようですね・・・。」
どうやらギルドの周りは通行止めになっているようだ。
俺たちが邪魔になっていないか少し心配したが、正直今はそれどころではなかった。
「ところでマックさんは? それに老夫婦は?」
「マックはあそこにいる。」
ジェラルドさんが指差した方向に、確かにマックさんがいた。
座りながら、気を失っているライラさんを抱き抱えている。
見たところ、ライラさんには怪我は無いようだ。
よかった・・・。
「老夫婦はとりあえず宿屋に泊っているそうだ。 さすがに山賊の基地がある近くでは、もう暮らすことができねえからな・・・。」
そうか・・・。
そうだよな・・・。
周りのこの光景を見れば、その気持ちが一発で分かるぜ・・・。
「これからどうするのでしょう・・・。」
何気なくリースさんが呟いた。
すると、後ろから受付嬢さんが歩いてきた。
「ギルドが使えないため、当分は『メガスリトス』で依頼はできなくなりますね・・・。」
「そ、そんなぁ・・・。」
リースさんは凄く残念そうだ。
だが、その気持ちは俺も同じだし、おそらくこの町の冒険者全員の気持ちと同じであろう・・・。
すると、受付嬢さんは優しい声で言ってきた。
「『メガスリトス』以外にも、ギルドがある町がありますから、一応そちらに行けば依頼は受けられますよ。」
「そ、そうですけど・・・。」
リースさんにとっては、この町で依頼が受けられなくなることの方が残念なのだろうな・・・。
その気持ちは痛いほど分かる。
「ギルドの復興には数ヶ月ぐらい経ってしまいますので、待っていてしまうと数ヶ月も依頼ができなくなってしまいます。 お気持ちはありがたいのですが、そうしていただいた方があなた達のためです。」
受付嬢さんは優しく言ってくれた。
確かに数ヶ月間も依頼を受けれないのはとても痛い。
そうするしかないな・・・。
「わかりました。 だが他の町に行く前に、山賊たちをぶっ潰してやる。」
ジェラルドさんは怒っていた。
山賊はおそらくこれで全員ではないだろう。
なぜならボスの姿が無いからだ。
どこかにボスが絶対にいるはずだ。
ボスを倒せば、山賊団は壊滅するだろう。
俺も山賊団を潰す気でいた。
老夫婦を攫ったこと、ギルドを襲ったこと、そして何よりもリースさんを困らせたことが許せない・・・!!
俺は拳を掌に二度打った。
夜になって、俺たちは宿屋の一室に集まっていた。
あの後、グリフォスさんやルークさんもやってきて、二人共驚いてきた。
そして怒りを露にしていた。
そりゃグリフォスさんは受付嬢さんと仲が良いし、なによりあのギルドを一番気に入っていたように思えたしな・・・。
「今現在、グリフォスや他の一部の実力派冒険者たちで山賊を捜索している。」
「夜中に歩いて大丈夫なのでしょうか・・・?」
「彼らは強いし、それに明日まで待っていたら逃げられるかもしれないしね。」
山賊の居場所を冒険者たちが一丸となって捜索している。
どれほど皆が、あのギルドを愛していたことがわかるな・・・。
ちなみに捕まえた山賊たちは全く情報を吐こうとはせず、結局そのまま連行されて行った。
「俺たちは明日の朝に捜索をする。 だから今日はちゃんと寝るように!」
マックさんはまるで先生のようにそう言った。
俺らは何も言わず、ただ「うん。」と頷いた。
「だけどよマック。 お前のベッドはライラが使っているじゃないか。」
そうなのである。
ギルドが壊れてしまったため、ライラさんはとりあえず宿屋で寝かせることになったのだ。
マックさんが使うはずだったベッドで。
「俺は昔からよく座りながら寝ることも多かったから平気だ。」
マックさんはキッパリと言った。
正直俺らはベッドを使いたかったため、何も言えなかった。
「じゃあ、また明日。」
そう言って、マックさんはドアに向かう。
ジェラルドさんが立ち上がり、松葉つえを使うマックさんの代わりにドアを開けた。
そして二人共、部屋から出て行った。
「山賊・・・、見つかるといいですね。」
俺の隣にいたリースさんが話しかけてきた。
既に甲冑を脱ぎ、寝間着姿のリースさんだ。
相変わらず刺激が強い姿だ・・・。
だが、そんな彼女の姿に慣れてしまった俺も俺だが・・・。
とりあえず、既に身体を洗った俺らはベッドに寝転がり、そのまま落ち着いて寝た。
明日はトレーニングをしてる暇は無いな。
万全な状態で向かうとしよう。
そう思いながら、眠りについた。
そして次の朝・・・。
俺はいつも通り起床する。
しかしトレーニングには行かない。
「リースさん、リースさん。」
俺はリースさんをゆすりながら、名前を呼んだ。
するとリースさんはゆっくりと目を開いて、横になって寝ていた身体を仰向けにした。
そしてあくびをしながらゆっくりと身体を起こした。
「お・・・、ほふぁほふほふぁひふぁふ・・・。」
あくびをしていたのでハ行だったが、おそらく「おはようございます。」と言ったのだろうな。
そういえば初めてだな。
リースさんと一緒に起きるのは。
「おはようございます。」
俺は挨拶を返した。
リースさんは結構だらしない恰好をしていた。
赤い髪はややボサボサになっており、キャミソールワンピースの肩のヒモが片方ずり落ちている。
だが、これはこれでカワイイな。
・・・って、そんなことを言っている場合ではないな。
「早く支度をしましょう。」
そう言って俺は、洗面所に行って顔を洗った。
「では、俺は廊下にいますので、準備ができたら部屋から出てきてください。」
「わ、わかりました・・・。」
リースさんは眠そうな声で、返事をした。
そして俺は部屋を出て、廊下に出た。
さすがに女性の着替え中に部屋にいるのは男として失礼だからな。
たとえリースさんが純真無垢でもな。
「おう、タカヤ!」
ジェラルドさんとマックさんが部屋から出てきた。
そういえば、朝に宿屋で会うのは初めてだな。
「リースはまだ準備をしているようだな。」
「いつもこうなのですか?」
「ああ、タカヤは先に出ていくから知らないだろうが、ここで数十分リースを待つのさ。」
そうだったのか。
今日は初めて知ったことばかりだな。
「最初は焦ったぜ。 ドアを開けたらリースがまさに着替えている途中だったからな・・・。」
「ああ・・・。」
ジェラルドさん・・・。
見たのか・・・、裸を・・・。
そういや俺も、前に一度だけ見てしまったな・・・。
「ライラさんの様子はどうですか?」
俺はマックさんに聞いた。
「残念だが、まだ起きない。 しばらくは宿屋で寝かせることにした。」
大丈夫かな・・・。
一体どれほどの負担がかかっていたのだろう・・・。
「聖騎士って、実は不便だったりするのか?」
「いや、ライラに才能が無いだけだろう。」
ジェラルドさんの疑問に、マックさんが無慈悲に答えた。
いくらなんでもその言い方は酷過ぎるだろう・・・。
しかしマックさんは続けて言った。
「だが、聖魔法が使えるということは、ライラは将来大物になれる素質があるのだろうな。」
マックさんのフォローが入った。
聖魔法が使えるということは、やはり凄いことなのか・・・。
まあ、聖魔法自体は目の前で見たから、その凄さはわかるがな。
数十分後・・・。
リースさんが部屋から出てきた。
「お待たせさせて、申し訳ございません!」
リースさんはまず初めに謝罪をした。
実にリースさんらしい。
「よし、では行こうか!」
マックさんの言葉と共に、俺たちは歩き出した。
そして宿屋を出て、俺らは山賊団捜索の任務へと出向いた!




