老夫婦の行方
「ここの経営者である夫婦は、誰かに攫われたんだ・・・。」
マックさんは冷静にそう言った。
「攫われた!? どうして・・・?」
「それは分からないよ。」
花畑の経営者が攫われるとは・・・。
なぜなんだ?
「ともかく、早く助けないと・・・!!」
リースさんは森の中へ入ろうと走った。
俺は慌ててリースさんを止めた。
「ちょっと待ってください! 当てはあるのですか?」
「それはありませんが、とにかく探さないと!!」
リースさんはかなり慌てている。
そこにジェラルドさんが立ち塞がり、リースさんの両肩を掴んだ。
「落ち着けって。 まだ攫われたとは完全に決まった訳じゃない。 それに、足跡は少なからず残っているんだ。 方向だけでも分かるだろう。」
ジェラルドさんの言葉で、リースさんは落ち着きを取り戻した。
奥の方を見ると、確かに足跡が森の中へ続いている。
「ごめんなさい・・・。」
落ち着いたリースさんはしっかりと謝罪をした。
そして、俺たちは足跡をたどって森の中へ進んだ。
しばらく進むと、足跡が無くなってしまった。
「この辺からは草木が茂っているから、足跡がないなぁ・・・。」
ジェラルドさんは周りを見回しながら言った。
すると・・・。
「ん? なんだ・・・?」
マックさんが何かに気付いた。
彼が森の奥へ移動し始めた。
俺たちは後を追った。
「マックさん、どうしたんですか?」
俺は追いながらマックさんに話しかけた。
「いや、なんか話し声が聞こえてな。」
マックさんは前を向いたまま答えてくれた。
・・・森の中で話し声?
一体なんだろう?
すると、マックさんが立ち止まった。
「おい、見てみろよ。」
マックさんは俺らに小声でそう言ってきた。
言葉に従い、俺らはマックさんの隣に行き、その方向を見た。
「・・・え、あれって!?」
リースさんが小声で驚いた。
・・・まあ無理もないだろうな。
俺も驚いたからな。
おそらくジェラルドさんも驚いているだろうな。
「知ってるのか?」
マックさんが聞いてきた。
そういえば、マックさんはまだいなかったっけ。
「ああ。 前に戦ってブタ箱送りにしたからな。」
もうおわかりだろう。
俺らの目には、あの山賊たちが映っている。
洞窟の前で二人の山賊が見張りをしている。
前に俺らがこらしめたはずだが・・・。
「どうやらあの時の奴らは一部に過ぎなかったってわけか。」
「そうみたいですね。」
やれやれ・・・。
めんどくさいことだな。
「・・・ちょっと待ってください! ということは、彼らに攫われたということですか!?」
「そうらしいな・・・。」
最悪だ・・・。
果たして無事なのだろうか・・・?
「で、どうします?」
リースさんが聞いてきた。
山賊に突っ込まないところを見ると、俺との約束を守ってくれているようだな。
「決まってるだろ。」
ジェラルドさんは腕を鳴らしながら言った。
そして次の瞬間、茂みから飛び出し山賊のもとに走って行った。
手前の一人にストレートを放ち、吹っ飛ばす。
奥の奴がそれに気づき、腰にぶら下げている剣を抜こうとするが、抜く前にジェラルドさんの拳が頬にめり込んだ。
そして同じように吹っ飛ばされた。
「よし、いいぞ。」
ジェラルドさんがサムズアップをして、俺たちを呼んだ。
俺らも茂みから出て、洞窟の入口前まで移動した。
そして俺らは洞窟の入口から中を覗くように見た。
「奥に進まないといけないようですね。」
恐る恐る洞窟を進む。
すると、1分も経たないうちに行き止まりに着いた。
洞窟はどうやら一本道だったようだ。
「この洞窟はなんだ!?」
周りを見回しても、特に変わったものはない。
ただの洞窟だ。
「一体これはどういうことだ・・・!?」
仕方なく俺らは来た道を戻ることにした。
・・・しかし。
「おい、なんじゃこりゃ!!?」
洞窟の入り口に柵のようなものが立てられて、まるで牢屋に入れられたような状態になっている。
柵の外を覗くと、一人の影が森の中に入って行くのが見えた。
「・・・どうやら、もう一人いたみたいだな。」
マックさんが冷静に分析した。
・・・そうか。
俺らはハメられたわけか・・・。
「オラァ!!」
ジェラルドさんは柵を殴った。
一部の木が折れ、もう一度殴れば壊せそうだ。
「折れろぉ!!」
続けてジェラルドさんの攻撃。
柵は完全に壊れた。
俺らは足元に気をつけながら、壊れた先を乗り越えて、出ることに成功した。
「早く追いましょう!」
リースさんはそう言うと、人影がいた方向の森の中に走って行った。
俺らも瞬時に続いて、森の中へ入って行った。
しばらく森の中を走っていると、出口が見えてきた。
しかし、そこにあったのは驚くべきものだった。
「なんですか、アレ・・・!?」
「おそらく、見つけちまったようだ。 奴らの本拠地を・・・。」
俺らの眼前には、どでかい基地があった。
ジェラルドさんが言った通り、ここが山賊たちの本拠地なのだろうか・・・?
もし、そうだというなら大発見だ。
奴らの根っこを叩くことができるんだから。
「どうします・・・?」
リースさんは冷静に聞いた。
やはり俺との約束をちゃんと守っているようだ。
「もし本拠地だとすれば、俺たちだけじゃ無理じゃねえか?」
「そうかもしれないな。」
さすがにジェラルドさんもマックさんも微妙なようだ。
「どうするかなぁ・・・。」
ジェラルドさんは頭をかきながら困っている。
そこでマックさんが喋った。
「とりあえず二人組に分かれよう。 見張り組とギルド報告組にだ。」
「よし、ならば俺とマックで見張ろう。 タカヤとリースはギルドに報告してくれ。」
マックさんが作戦を立て、ジェラルドさんが即座に二人組を作った。
「わかりました!」
リースさんが即返事をした。
すぐさまリースさんは帰り道の方向に向かって行った。
俺も急いで後に続いた。
さっきの所まで道はほぼ一本道だったため、迷うことなく抜けた。
そして『メガスリトス』に向けて走った。
街へ着き、ギルドに直行した。
ギルドのドアを開けて、受付に急いだ。
「ど、どうしました・・・!?」
受付嬢さんが走ってきた俺たちに驚いている。
無理もない。
「あ、あの・・・じ、じつは・・・。」
リースさんは息を切らしながらも、必死に喋ろうとしている。
「俺が代わりに話しますので無理しないでください。」
とりあえず俺はそう言って、リースさんを落ち着かせた。
俺はつい先程の出来事を大体話した。
もちろん、夫婦が攫われたかもしれないという可能性の話もした。
「そんなことが・・・。」
受付嬢さんは心配そうな反応だった。
それもそうだろう。
いつもお世話になっていた老夫婦が行方不明なのだから。
俺たちが話していると、後ろにいたスレイダーさんが話しかけてきた。
「なあ、その山賊って黒緑色の布を頭に巻いている奴か?」
「ええ、そうです。」
山賊は確かに、黒緑色のターバンを被っていた。
間違いないだろう。
「そいつらなら、前に依頼中で見かけたことがあるな。」
スレイダーさんは腕を組みながら言った。
スレイダーさんも山賊を見たのか。
「それなら私も2、3回ぐらい見たことがあるわね。」
マーガレットさんが来た。
彼女も目撃者なのか。
「こんなにも見るなんて、なにか企んでいるのかしら?」
その可能性はあるな。
「ここ最近、山賊の依頼はありませんでしたが・・・。 なんだか怪しいですね。」
受付嬢さんが持っていた書類を見ながら言った。
つまり、山賊は昨日今日でなにかを始めようとしているのか?
「タカヤさん、とりあえずジェラルドさん達のところへ戻りましょう。」
「そうですね。」
そう言うと俺らはすぐにギルドを出て、ジェラルドさん達が待っている場所に向かおうとした。
すると、後ろから二名がついてきた。
スレイダーさんとマーガレットさんだ。
「俺も行くぜ。 おそらく激しい戦いになるんだろ? 数は多い方が良いぜ。」
「遠くからの援護なら任せてね。」
歩いている俺らの後ろから話しかけてきた。
よく見るとクリスとイブもついて来ている。
「お前は別に来なくてもいいんだぞ?」
「あ~ら、あなたこそ帰ってもいいのよ?」
安定の喧嘩が始まった。
仲が良いのか、悪いのか・・・。
俺らはジェラルドさん達がいた位置に着いた。
しかし、そこには二人の姿は無かった。
「一体どこに・・・?」
「あ、あそこです!」
リースさんは本拠地の方向を指差した。
すると、本拠地の入口で山賊たちと戦っている二人の姿があった。
「なにやっているんだ、あの二人!?」
俺は思わず声に出して言った。
状況は、二人が無双をしている状況だった。
ジェラルドさんは相変わらず筋力を使ったパワー技で山賊を次々となぎ倒している。
マックさんは片足を負傷しているのに、全く苦戦をしていない。
魔法で次々と山賊を倒している。
ただ、魔法は直接当ててはいない。
「もう全部あいつらだけでいいんじゃないか?」
スレイダーさんは呆れていた。
「いえ、彼らだけに任せるわけにはいきません!」
そう言うとリースさんは、二人のもとへ走って行った。
俺も彼女に続いて走った。
「手伝います!!」
「おお、戻ってきたか!」
ジェラルドさんは山賊を殴り飛ばしながら、こっちに話しかけてくれた。
「一体どうしたんですか・・・?」
「いやぁ・・・。 見張ってたんだけど、後ろから新たに山賊が現れてな。 このザマだ・・・。」
なんてこったい。
最悪だ・・・。




