終わり と 始まり
「んじゃ、乾杯だ!!」
グリフォスさんがそういうと、ギルドの冒険者たちは木のジョッキまたはコップを持って乾杯をした。
とても賑やかだ・・・。
あの後、俺ら冒険者たちは残りの雑魚たちを片付けて、ギルドへ依頼達成の報告をした。
まあ雑魚と言っても、個人的に簡単にはいかないモンスターもいたがな。
それと、哀しいお知らせもあった。
全員は生き残らなかったらしい。
冒険者の中には戦死した者もいたらしい。
だが、これが冒険者なのだろう。
これが現実なのだろう。
俺はまた、この世界のことを一つ理解した。
「食べないのですか?」
隣で座っているリースさんが話してきた。
さすがに兜を取っている。
「いえ、少し考え事をしていただけです。」
「そうですか。」
まあ、今は食事の事だけ考えるか。
目の前にマックさんの奢りで、美味そうな食事が置いてあるし。
おそらくこの食事は、報酬の代わりなのだろう。
「・・・実は私も考えていたことがあるのです。」
「へ?」
一体なんだ?
依頼を終えたばっかりなのに、なにか気になるのかな?
「マックさんに話したいことがあるのです。 あとで一緒に来てください。」
「は、はい・・・。」
マックさんに?
一体なんだろう・・・?
宴は盛り上がっていた。
ジェラルドさんはマーガレットさんと一緒に酒をグビグビ飲んでいる。
あの二人は本当に酒好きだな・・・。
マックさんは食事をバクバク食べている。
ライラさんは聖魔法を使ったため、また気を失い、ギルドの二階にあるベッドで寝ている。
一応報酬は既に渡されていたため、無事ギルドの冒険者たちに金貨3枚が渡った。
スレイダーさんはクリスにイモなどを与えている。
こうして見ると、ただの犬と飼い主にしか見えないな。
グリフォスさんは受付嬢さんと話しながら食事をしている。
前の時もそうだったが、あの二人やっぱり仲が良いんだな。
もしかして・・・。
ルークさんはゆっくりと食事をしている。
ベテランでも老人だしな。
仕方ない。
少し気になったのが、やはりマッケンジーさんがいないことだ。
あの時アルラルネを従えていたことが頭から離れない。
「モンスターを仲間にできる時代が来る」と言っていたが・・・。
・・・やはり謎が多い人だな。
ふー、食った食った。
久しぶりに満足な食事ができたな。
マックさんに感謝だ。
・・・そういえばリースさんがマックさんに話があると言っていたな。
リースさんがまだ食事をしていたため、待っている間に俺はマックさんのところに行った。
凄い食べっぷりだ。
「お疲れ様です。」
俺はマックさんの向かいの席に座った。
マックさんは一旦食べるのをやめてくれた。
「今回は本当にありがとうな。 お前らみたいな良い奴らに出会えて良かった。」
マックさんは笑顔を向けてくれた。
そういえば笑っているところを初めて見たな。
「・・・足は大丈夫ですか?」
「まあ、しばらくは杖が必要かもな。」
捻挫した足で無理矢理戦ったしな・・・。
むしろそれで済んだのが凄いや。
「後でリースさんがマックさんに話したいことがあるみたいです。」
「おおそうか。 わかった。」
俺は再びリースさんの隣の席に戻った。
マックさんも再び食べ始めた。
リースさんは食べ終わると、マックさんの席へ向かった。
向かいの席の前で立ち止まった。
「マックさん。」
「リースさんだっけ? 話ってなんだい?」
マックさんは食べるのを一旦やめて、リースさんの方を向いた。
リースさんはしばらくして口を開いた。
「ここでは声が届きにくいので、一度ギルドの外へ来ていただけますか?」
「え? ま、まあいいけど。」
そういうとマックさんは松葉杖を扱いながら席を立ち上がり、リースさんと共にギルドの外へと出て行った。
俺も後に続いてギルドの外へ出た。
時刻は夜の時間帯となっている。
空は黒く、周りは暗い。
街灯や、ギルドや家などの光で辺りが確認できる。
ギルドの窓の前で二人が向き合っている。
幅は数メートルだが。
そして俺は、リースさんの右斜め後ろの位置で見守っている。
何が起きるか全くわからないから当然だろう。
「さてと改めて、話ってなんだい?」
マックさんは首がわからない頭を傾けた。
不気味な顔だが、表情にはどことなく優しさが溢れ出ていた。
リースさんはしばらく黙っていたが、覚悟を決めたように「うん!」と言葉を発して、喋り始めた。
「あの、マックさん。 私たちの仕事仲間になってください!!」
「・・・え!?」
リースさんの発言に、マックさんは驚いた。
・・・そして俺も驚いた。
「仕事仲間・・・? な、なぜなんだ?」
マックさんは戸惑っている。
リースさんはすぐさま返答をした。
「マックさんは死に急ぎ過ぎです! 今後は危険なことをしないように私たちが見張ろうと思うのです!!」
リースさんはやや怒りながら話した。
確かにマックさんは無茶なことをしようとしてたし、ほっとけないな・・・。
・・・って、リースさんがそれを言うか!
「仕事仲間・・・か。」
「そうです!」
マックさんは悩んでいる。
おそらく予想外の言葉に戸惑っているのだろう。
「あっ、嫌でしたら断っても全然いいですよ。」
俺は念のため横からそう言っておいた。
しばらくの沈黙の末、ついにマックさんは口を開いた。
「断る・・・と言いたいところだが、あんた達には恩がある。 それに今回の件で、あんた達には背中を預けても良いと思ったし、まあ良いだろう。」
マックさんは目をつぶって、そう話した。
「え! と、いうことは・・・!!」
「・・・ああ。 これからよろしく頼む!」
そう言って、マックさんは頭を下げた。
リースさんも「こちらこそ、よろしくお願いします!」と言って、礼をした。
俺もそれに続いて、黙って頭を下げた。
ギルドの中から声が聞こえる。
まだまだ宴は続きそうだ。
俺たちは再びギルドの中へと入って行った。
≪モンスターの大群退治≫の依頼は無事に終わった。
そして、新たな仲間 "マック"さん が加わった冒険者生活が始まった。




