戦場
時は来た。
ギルドには冒険者たちが金に釣られ、集っている。
しかし正義のために集っている冒険者も当然いる。
リースさんがその一人だ。
グリフォスさんが演説をしている。
ただ、真面目な感じの話ではない。
俺はその演説を席に座って、机に肘をついて聞いていた。
正直言って、あまり重要な話ではないな。
俺はそう思って、ただ演説しているグリフォスさんを見ていた。
リースさんは俺の隣の席に座っている。
今後起きることが心配なのだろう。
俯いて、微動だにしない。
兜で分からないが、おそらく目を瞑っているのだろうな。
ジェラルドさんは、床で腕立て伏せをしている。
グリフォスさんの演説に夢中で、彼を気にする者はいない。
二人共、どうやら本気のようだ。
「すまない、遅くなった。」
マックさんがギルドにやってきた。
もう俺らは彼の顔に慣れてしまい、一切驚かなくなった。
「モンスターの奴らは山を越えたようだ。」
「そうですか・・・。」
「ギガデビルの奴が空を飛んで移動しなかったのは幸いだった。」
そういえば、3体の巨大モンスターの内一体は翼が生えていたな。
アイツが『ギガデビル』か・・・。
「今はどんな状況だ?」
マックさんは周りを見渡しながら聞いてきた。
「冒険者を収集中です。 夕方頃に出発です。」
「そうか、わかった。」
昨日より冒険者が増えている。
金の力はスゲーな。
同じ人間として恥ずかしくも思うが、普通なら誰だって金は欲しいよな。
「あの・・・、3体のモンスターはどのくらいの強さなのですか?」
俺はマックさんに質問した。
Aランク冒険者が相手をするようなモンスターだから、相当強いのだろう。
「大体、普通の冒険者が30人いて倒せるかどうかってところだな。」
「そうなんですか・・・。」
聞かなければよかった・・・。
・・・だが、このギルドには強い冒険者が沢山いる。
心配は無いだろう・・・、たぶん・・・。
「まあ、あの3体もそうだが、その他の雑魚モンスター達の相手もしなくてはいけないし、正確には分からないな。」
そういえばそうだった。
3体の大型モンスターの他にも、普通のモンスター達もいるんだった・・・。
「それは私たちに任せて、マック様たちは大型のモンスターの相手に集中してください。」
後ろからライラさんが言いながら歩いてきた。
めちゃくちゃまっすぐな瞳をしていた。
「ああ、頼もう。」
そうマックさんは言うと、近くの席に座った。
おそらく彼も本当は不安なのだろう。
そして夕方になり、冒険者たちは退治に出掛けていた。
グリフォスさんとマックさんが先導している。
マックさんが方向を指定し、グリフォスさんが冒険者たちに指示を出している。
俺とリースさんとジェラルドさんの周りには数多の冒険者たちで囲まれている。
知り合いから見知らぬ冒険者まで沢山いる。
真剣な者もいれば、金貨が欲しくてワクワクしている者もいる。
今頃ギルドにいるのは受付嬢さん達だけだろうな。
知り合いと言えば、他にはルークさんやスレイダーさんも来てくれた。
金貨目当てかどうかは知らないが、頼もしいことだ。
だがマッケンジーさんとキーラちゃんは来なかった。
というか、ギルドに現れなかった。
仕方ない。
「見えた。」
山を登り、前と同じあの場所にやってきた。
山の向こうにいたモンスターの大群は、山の近くまで来ていた。
「よし、山を下りたら自由行動だ。 気を付けろよ!」
そう言ってグリフォスさんは山を下り始めた。
それに続くように次々と冒険者たちが山を下り始めた。
俺らもそれに続き山を下りる。
山を下りると、他の冒険者たちが既にモンスターと戦っていた。
その光景は正に "戦場" と呼ぶに相応しい。
「よし。 ここは任せて奥の方にいるモンスターたちを倒そう。」
ジェラルドさんはそう言って、奥の方に走って行った。
俺とリースさんも後に続いた。
前方から向かってくるモンスターを、ジェラルドさんは次々にブッ飛ばしていく。
俺とリースさんも、攻撃が届くところにいるモンスターに攻撃を与えながら走っている。
たとえ倒せなかったとしても、後ろで走っている他の冒険者がトドメを刺してくれる。
これも一種の「団結」だ。
少し奥に進むと、俺らはモンスターに囲まれた。
全員見知らぬモンスターだった。
人型のモンスターがジェラルドさんに襲いかかるが、ジェラルドさんはモンスターの攻撃を避け、人型のモンスターの足を掴んで振り回した。
近くにいたモンスターにぶつけ、二体ほどが吹っ飛んだ。
最後は掴んでいたモンスターを投げ飛ばし、もう一体吹き飛ばした。
リースさんもモンスターに斬りかかり、小型モンスター一体を両断した。
剣士系のモンスターがリースさんに斬りかかったが、リースさんの甲冑で跳ね返され、その隙にリースさんが剣士系モンスターの腕を斬り落とした。
腕から血が噴き出してモンスターは苦しんでおり、そのモンスターの胸目掛けてリースさんは剣を突き刺した。
そして斬り上げるように剣を抜いた。
剣士系のモンスターはそのまま背中から倒れ、動かなくなった。
俺も一頭身のモンスターの顔面を力一杯ぶん殴った。
モンスターは吹っ飛び、木にぶつかって地面に倒れた。
その隙に後ろから別のモンスターが襲いかかってきていた。
俺はすぐに振り返り、腕をクロスにして防御の姿勢をとった。
「力」の影響でおそらく頑丈になっていたため、少し痛い程度で済んだ。
そして右ストレートで反撃し、モンスターをぶん殴り、吹っ飛ばした。
そして後から来た他の冒険者の方々が残りのモンスターを殲滅してくれた。
ありがとうございました。
さらに奥に進むとスレイダーさんとマーガレットさんとライラさんが大量のモンスターと戦っていた。
スレイダーさんは両剣を軽々と回しながらモンスターを次々と両断している。
また、クリスが小型のモンスターに噛みつき、スレイダーさんの方に投げ飛ばし、スレイダーさんが斬るというコンビネーションも見せていた。
ライラさんは盾をうまく使いながらモンスターを剣で斬り、攻撃をしている。
スレイダーさんに比べると地味だが、あちらの方が安全であろう。
それとやはり装備が先程と違い、やや安そうな装備をしている。
マーガレットさんは二人の援護をしている。
やや遠くにいるモンスターに矢を撃って攻撃している。
外して地面に落ちた矢を、イブちゃんが回収して、マーガレットさんの矢入れに戻している。
俺らも戦いに加わり、モンスターを次々に殲滅していった。
そして他の冒険者もやってきて、大量に動いていたモンスターは全員動かなくなった。
「ありがとうございました。」
ライラさんが頭を下げてお礼を言ってきた。
俺ら以外の他の冒険者は、他のモンスターを狩るために動いていたため、既にこの場にはいなくなっていた。
「グリフォスとマックは既に3体の大型モンスターと戦っているだろう。」
スレイダーさんが横から話してきた。
「行きましょう。」
リースさんはそういうと走り出した。
俺らと他3人と2匹も、後を追うように走り出した。
空はすっかり暗くなっていた。
リースさんは鞄からランタンを取り出していた。
そのおかげで、周りが見やすくなっていた。
森を抜けると平原に出た。
そこには2体の巨大な影が見えた。
一体は、筋肉質な身体の巨人。
一体は、角を生やした怪物。
・・・そう、あの3体の内の2体だ。
グリフォスさんが巨人と、マックさんが怪物と戦っていた。
グリフォスさんは巨人に巨大な斧で斬りつける。
巨人の腹に斧が刺さるが、巨人は衝撃で後退するだけで、あまりダメージは無さそうだった。
グリフォスさんはすぐに斧を抜き、後ろへ跳んで距離を作る。
マックさんは持っている本に書かれている呪文をスラスラ読み、怪物に炎の柱を放つ。
しかしこちらもあまりダメージは無さそうだった。
やはりA級レベルのモンスターは強いな・・・。
「加勢しましょう!」
「いや、邪魔をしない方が良いかもしれない。」
「だが、二人だけではキツいんじゃないかしら?」
彼らに聞く暇もないだろう。
だが、このまま見ているだけなのもダメだ。
どうすれば・・・。
そう考えていた直後、上空からコチラに接近している影を発見した。
「空からなにか来ます!!」
俺がそう叫び、周りも空を見上げた。
上空からデカい影がコチラに向かっている。
俺らはすぐにその場を離れた。
影は地面に勢いよく着地した。
その着地の風圧に、俺たちはやや吹き飛ばされた。
俺はすぐに立ち上がり、その影の正体を確かめた。
・・・予想通りだった。
3体のモンスターの最後の一体。
翼が生えた悪魔が、そこにいた。




