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知らない世界4

「ルーおにいちゃん!」


「こんにちはレン」


「こんにちは!きょうはね、おねえちゃんもいっしょ」


「こんにちは」


「こんにちは…ニナがここに来るなんてどうかしたの?」



私達のそばまで歩み寄り目を合わせるために膝をついてくれた。おにいちゃんが近くに来るとその手にある花の香りがふわりと漂った。とてもいい香りがする。心が落ち着くようなそんな香り。そしてその花束を持っている柔らかな笑を浮かべたおにいちゃん。まだ幼さが残る顔つきだけど将来有望なのが伺える。これは確実にイケメンコースですね。わかります。濁りのない鮮紅色がこちらを見て不思議そうに私を見つめている。



「レンドールとおさんぽしてるんです」


「そうなんだ…今日は仲良しなんだね」


「きょうからおねえちゃんはやさしいおねえちゃんなんだって!」


「……アリス、ユリヤ」



私たちの、というかレンドールの話の要領を得なかったのだろう。後ろでずっと静かに見守ってついてくてくれていた二人に声をかけた。



「ルシフェル様此方へ少し宜しいでしょうか」


「わかった。レン、ニナちょっと待っててね?」


「「はーい」」



アリスさんとルー、ルシフェルさんは私たちから少し離れていった。……何か…よくよく考えるとおにいちゃんと言えども私より年下、いや、今の私から見ると年上何だけど…おにいちゃんっていう単語を口にするのがちょっとだけ恥ずかしい、というかうーん。でも流石に実の兄に『ルシフェルさん』何て言った日にはどうなるか……考えたくない



「ユリヤ、おにいちゃんとアリスは何してるの?」


「お話しですよレンドール様」


「ユリヤさんはいいんですか?」


「私はもう済んでおります。私の事はユリヤとお呼びくださいニナ様」


「ユリヤさん!」


「…ニナ様のお好きにしていただければ良いです」



執事服を身に纏いインディゴの長髪を後ろで1つに結んでいる長身の男性。私が小さくなっているからというのもあるだろうけれどとにかく大きい。縦に長い。話をする時しゃがんでもらわなければ無理だ。私の首が持っていかれる


さっきユリヤさんは話はもう済んでいると言っていた。いつの間に話していたのかは分からないけれどアリスさんが私のことを伝えてくれたようだ。本当に有難い。記憶喪失(仮)になっている私には周りのフォローが必要不可欠だ。


初対面の人の名前を教えてもらったり、気をつけるけれど思いがけない失言もあるだろう。此処は私がいた世界と別物だ。服が違う。家の造りが違う。人の立場が違う。そうなれば礼儀作法も当然変わってくるだろう。幸いこの体は4、5歳といったところだからまだ難しい事は分からない年頃、だと信じて今から巻き返すしかない。元の世界へ帰れるのがベストだけれど目星はたっていない。あまり期待しない方がいいよね



「お待たせ」


「なんのおはなしをしてたの?」


「レンとニナがとっても仲良しでいい子だったってアリスが教えてくれたんだよ。今日もいい子だったんだね。偉い偉い。」


「えへへ、だってぼく大きくなったらルーおにいちゃんみたいになりたいもん。だからいっぱいいいこになるよ」


「そんなに頑張らなくてもレンドールはとってもいい子だけどね。さあもうすぐ花の開花時間だよ。」


「やったあ!おはなさくの、みにきたんだよ!はやくはやく!」


「お、にいちゃん。はなのかいかじかんってなあに?」


「嗚呼、ニナは初めて見るんだったね。


そうだな…普通のお花は自分の力で咲くことが出来るだろう?でも一部のお花は魔力を注いであげないと蕾のまま咲くことが出来ずに枯れてしまうんだ。そこでその花に魔力をあげるっていう日が今日、この時間なんだ。


これは魔力を注ぐタイミングが重要で遅すぎても早すぎてもいけない。間違った時に魔力をあげてしまうと遅くても早くても枯れてしまうからその見極めが大事になってくる。その時間が今。開花時間なんだよ」


「ルーおにいちゃんのまほうでおはながいっきにぶわっ!てさくんだよ、たのしみ!」


「ぶわっと…」



いきなりファンタジー要素の王道『魔法』という単語が出てきた。私が元いた場所では魔法なんてなかったから新鮮だ。ゲームやマンガででてきた魔法と呼ばれるものはどれもこれも便利で華やかで何と言ってもカッコイイものばかりだった。ここの魔法がどんなものかは知らないけれどレンドールが言うにはルシフェルさんの魔法はすごいらしい。すごい、何て言われると期待してしまうのは仕方がないよね!



「ニナもたのしみです」


「こんなに可愛い期待があると少し緊張するね」


「はやくルーおにいちゃん!」


「分かった行こうか。レンそっちじゃなくてこっちだよ。アリスこの花を」


「畏まりました」



1人で行ってしまいそうになるレンドールを捕まえて手を繋ぐルシフェルさん。余程楽しみなんだろう、そわそわと落ち着かない様子だ。食堂で最初見た姿が嘘みたいに子供らしく兄の手を掴みながらはしゃいでいる。私も2人の後をついて行かないと迷子になってしまう。



「ほらニナおいで」



前にいたルシフェルさんは私の方を振り向き、レンドールと繋いでいない逆の手を伸ばしてきた。



「迷子になってしまうから3人で手を繋ごう」


「あ、ありがとう、ございます」


「ルーおにいちゃん、きょうのおはなはどんなおはな?」


「ハニーレディっていうお花だよ。色は暖色系のものが数種類あってチューリップと形は似ているかな。ハニーレディは花弁の部分が食べられてとても甘いんだ。ちゃんと咲いたら3人で食べようね」



庭の奥へと進めば進むほどいろんな種類の花が私達を迎えてくれる。見たことがある花もあれば全く見たことない花もある。どの花にも共通して言えることは手入れが行き届き元気のない花が1本も見当たらないことだ。



「このおにわのおはなはぜんぶおにいちゃんがそだてているのですか?」


「そうだよ。どうしても外せない用事がある時は使用人に任せたりもするけれど…趣味としてやっていたはずなのにここまで手間暇かけて育ててしまったから自分以外がこのお花達の世話すると思うと少し、不安になるから結局自分で全部やってしまうんだよね」


「おにいちゃんすごいですね……」


「そうでもないよ。好きなことならどれだけやっても苦痛にならない。それどころかもっと、って追求したくなるんだ。ニナも分かる日が来るよ」

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